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『人気アイドル雀士』  作者: AQUARIUM【RIKUYA】
『人気アイドル雀士2 ―ふたりで追いかける夢の続きを―』
19/35

第6話「覚醒のセンター、勝負の準決勝」



――2025年春。日本武道館。


ステージ袖に立つ安川理恵。

5万人を超える観客が客席を埋め尽くし、開演前のざわめきが天井を震わせていた。


理恵は深呼吸を繰り返しながら、衣装の裾を握りしめた。

過去にセンターを辞退し、涙を流した場所――

今日は、堂々とその“真ん中”に立つために来た。


■Scene1:一方その頃――準決勝の対局卓上


同時刻。都内・麻雀スタジオ。


全国タイトル戦準決勝。

安川知恵の対局相手は、昨年の王者・広瀬俊真ひろせ・しゅんま


「元アイドル雀士が、ここまで来るとはね」


「プロになって5年です。アイドルは、5年前に辞めました」


そう言い放った知恵の目に、迷いはなかった。


■Scene2:武道館ライブ、開演


「それでは――GRT48、武道館スペシャルライブ! 開演です!」


爆音とともに幕が上がり、スポットライトがセンターに射す。

その中央に立つのは、理恵。

白と青を基調にした衣装が、揺れる。


1曲目『鼓動のフラッシュライト』。

力強いビートに合わせ、センターが一歩前へ出る。


(逃げない。怖くても、歌う。

だって、“私を見てる人”がいるから)


客席のペンライトが、理恵の動きに呼応して揺れた。


■Scene3:準決勝、知恵の一打


南二局、広瀬がリーチ。


河には目立った危険牌がないが――


(これは、ダマテンで誘ってきてる。しかも、私の打点読みを逆手に取ってる)


知恵は“逆読み”をかけた。


――通ってない中張牌。

読みを信じて、切る。


瞬間、広瀬が言った。


「……チー」


(引っかけてきたな)


が、そこから広瀬の手は崩れ、知恵が鳴きを挟んでテンパイへ持ち込む。


「ロン。8000点」


実況席の女流雀士・坂上瑠衣が言う。


「これは凄い。“相手の信頼感”を崩す読み打ち。

安川知恵、間違いなく“今年の主役”候補ですね」


■Scene4:武道館、理恵の覚醒


アンコール曲前。

理恵の目には涙が浮かんでいた。


(今なら言える。私、センターになってよかったって)


最終曲『未来へ、走れ』。

サビでマイクを手放し、生歌で叫んだ。


「ありがとう!!」


その声に、観客が総立ちになる。


■Scene5:勝利と、誓い


準決勝終了。

知恵、トップ通過。決勝進出決定。


控室のスマホに、事務所マネージャーから連絡。


「理恵ちゃん、ライブ大成功。

アーカイブ配信で泣いてるファン、続出だって!」


知恵は笑いながら、返信を打った。


「私も、対局で泣かせたわ。多分、広瀬さんをね」



■ラストシーン:帰宅後、ふたり


夜のマンション。

ライブ後で声が枯れた理恵と、静かな余韻に浸る知恵が並んで座る。


「ねぇ、お姉ちゃん」


「ん?」


「私ね、もう“あんたの妹”って呼ばれても平気。

だって今は、自分の足で立ててるから」


知恵はゆっくりと頷いた。


「そして私も、“理恵の姉”って言われても嬉しい。

……あんたのこと、誇らしいよ」


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