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『人気アイドル雀士』  作者: AQUARIUM【RIKUYA】
『人気アイドル雀士2 ―ふたりで追いかける夢の続きを―』
18/35

第5話「センターの重圧、卓上の孤独」



――深夜。都内のマンション。


理恵は、事務所から届けられたファンレターの束をソファに広げていた。

その中に、一通だけ封筒が異質なものがあった。


宛名も署名もない。

恐る恐る開いたその中には――


「センターなんか向いてない」

「お姉ちゃんの七光りだけで前に出るな」

「GRTの顔を汚すな」


打ち込まれた文字と、乱暴に書かれた落書き。

理恵の手が震える。


(……どうして?)


■Scene1:知恵、スポンサー打診の場で


その頃、知恵は都内の制作会社にいた。

全国タイトル戦の活躍を受けて、映像化・番組タイアップの企画が動き始めていた。


「実力は申し分ありません。ただ……視聴率と数字を取るには、

“かつてのアイドル”という肩書きも、積極的に押し出したい」


そう話す広告代理店の男に、知恵ははっきりと言った。


「それは過去です。今はプロ雀士として勝負しています。

“アイドルの看板”に戻る気はありません」


会議室が静まり返る。

だがプロデューサーが口を開いた。


「……いいですね。芯がある。

“打ち筋と人間味”、両方持ってる雀士は希少です」


知恵は静かに頭を下げた。


(私は、私の打ち方で認めてもらう)


■Scene2:理恵、姉に打ち明ける


帰宅後、ソファに座る知恵に、理恵がおずおずと差し出した封筒。


「……見たくないならいい。

でも、読んでほしくて。お姉ちゃんが見たら、どう思うのか」


知恵は無言で手紙を読み終えた。

数秒の沈黙の後、口を開く。


「……悔しいよね」


理恵の目が潤む。


「うん。でも一番悔しいのは、

“あたしが読んで泣いたこと”だと思った」


知恵は静かに、妹の肩に手を置く。


「私も昔、SNSで言われた。“顔だけ”とか“踊れないのに前に出るな”とか。

でも、そういう言葉って、“見てるから出てくる”んだよ」


「見てるから、出てくる……?」


「そう。目に入るから、言いたくなる。

それって、逆に言えば“届いてる証拠”。

あとは、何に届くか――“好き”に届くか、“憎しみ”に届くか、それだけ」


理恵は小さく笑って、姉に頭を預けた。


「お姉ちゃん、すごいな。全部わかってる感じ」


「違うよ。……あたしも、“泣きながら覚えた”だけ」


■Scene3:ネットの声、そして光


SNSでは、あるファンのポストが拡散されていた。


「理恵ちゃん、今日も笑顔でステージ立ってたけど……

あの子、たぶんすごくがんばってると思うんだよね。

“姉が有名だから”じゃなくて、“自分も負けないように”って」


それに対し、GRTメンバーや他のファンが続々と返信。


「あの子の真剣なダンス、私も大好き」

「誰かの光になれるなら、きっと大丈夫」

「理恵、君は君のままでいい」



■ラストシーン:夜の卓上


その夜、久々にふたりで麻雀を打つ姉妹。


「負けた方が、晩ごはん作りね!」


「え、じゃあ今日は“プロ雀士”として打つよ?」


牌を配りながら、知恵がふと呟く。


「……あの手紙のこと、もう気にしてない?」


「うん。だって、私にはお姉ちゃんがいるし。

それに、あたしも少しずつ、“自分の言葉”で返せるようになりたいから」


知恵は微笑む。


「じゃあ今日はその練習だ。“牌”で返してきな」


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