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『人気アイドル雀士』  作者: AQUARIUM【RIKUYA】
『人気アイドル雀士2 ―ふたりで追いかける夢の続きを―』
16/35

第3話「センターの決意、舞台袖の涙」



――GRT48 音楽番組出演当日。

テレビ局の第3スタジオ。

舞台袖、理恵は自分の胸に手を当てていた。


(大丈夫。私は……“このポジション”を受け取ったんだ)


数十人のメンバーの中心。照明の真下に立つ覚悟。

それは、夢のようで――現実でもあった。


■Scene1:リハーサルでの“つまずき”


「はい、Bメロ入ります。理恵さん、そのままセンターキープで」


ダンスのフォーメーションが変わり、センターで歌いながらターンする振り付け。


理恵の足が、わずかにもつれた。

その瞬間、左足首に“ピキッ”という痛み。


「……っ!」


(やばい、これ……)


スタッフが駆け寄る。


「大丈夫ですか? 一旦座りましょう」


理恵は笑顔で首を振った。


「大丈夫です。たぶん、緊張でバランス崩しただけなので……もう一度お願いします」


■Scene2:知恵の対局、精密な“3段構え”


同時刻、都内雀荘スタジオ――全国タイトル戦 予選ブロック2回戦。


東三局、知恵は3巡目テンパイ。


待ちは「2-5索」。

相手の捨て牌に2索が一枚、5索は山に3枚残っていると読んだ。


だが、あえて即リーチをかけない。


(ここは、“泳がせる”)


その読みは的中し、8巡目。相手の中堅雀士・山岡が不用意に5索を切る。


「ロン。2600」


この一局、知恵の真意は“リズムの支配”にあった。


■戦術解説:

知恵はこの対局で「三段構え」の戦術を採っていた。


1)第1段:速攻系テンパイで流れを掴む(3巡目テンパイ)

→ あえてリーチを避けて警戒心を逸らす。


2)第2段:相手の打ち筋を崩す“手変わり”待ち

→ 相手の焦りを誘い、狙い牌を打たせる。


3)第3段:牌譜では読めない“人間の癖”を読む

→ 足を組み替える癖、ツモ切りのタイミング、手を組む速さなどを判断材料に。


プロ雀士・坂上瑠衣が実況席で解説する。


「知恵ちゃんの麻雀は、“理論8割・感覚2割”じゃないんです。

“理論4割・相手6割”。つまり、“読み”じゃなく“対話”なんですよ」


■Scene3:SNS、舞台裏の熱狂


番組が生放送で始まる。

理恵の初センター披露曲『夜明けフラッシュ』。

スタジオの照明が落ち、イントロが流れ出す。


カメラがセンターに寄る。

“あの日、センターを辞退した少女”――今、そこに立っている。


SNSは瞬時にざわつく。


「あれ、センター理恵じゃない!?」

「え、えぐ…表情完璧。キラキラしてる」

「前回辞退した子だよね?泣きそうなんだけど」


その中に、知恵の公式アカウントからのリポストが表示される。


「全力の妹、見てください。

ステージって、誰かの未来になるって信じてるから」

―@chie_yasukawa



■Scene4:理恵の涙、でも止まらない


Cメロ、両手を広げて一歩前に出るフォーメーション。


(痛い。でも、笑って)


痛む足首をかばいながら、それでも前へ進む。

目線をカメラに合わせて、最後の決めポーズ――


その瞬間、観客席からの大きな歓声。

パフォーマンス終了と同時に、理恵の頬に一筋の涙がこぼれた。


(……私、ここに立ってよかった)


■ラスト:モニター越しの姉妹


休憩中の控室。

対局の合間にスマホで妹のパフォーマンスを観ていた知恵は、

思わず笑っていた。


「……バカね。

でも、ほんとに――綺麗だったよ、あんた」


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