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『人気アイドル雀士』  作者: AQUARIUM【RIKUYA】
『人気アイドル雀士 ―交錯する夢と牌の道―』
12/35

第9話「理恵の涙、舞台裏の姉妹」



――同日、夜。

GRT48の定期公演ステージ裏。

控室では、アンコールを終えたばかりのメンバーたちが歓声の余韻に包まれていた。


「理恵、お疲れ〜!センター、すごく良かったよ!」


「えへへ、ありがとう。でもちょっとミスっちゃったかも…」


笑顔で返す理恵だったが、笑みはどこかぎこちない。

それを察した先輩のメンバーが、少し心配そうに見つめていた。


公演終了後、深夜0時を回った頃。

都内のマンションに帰宅した理恵は、ドアを開けた瞬間、

リビングに座っていた姉――知恵の姿を見つけた。


「……おかえり」


「……お姉ちゃん……」


その声を聞いた途端、理恵は――

膝から崩れ落ちた。


「うぇっ……ぐすっ……っぅ、やだ……もう、むり、なの……」


抑えていた感情が、一気に溢れ出す。


■Scene:姉妹の夜


「……理恵?」


「……今日、ステージで足を滑らせちゃって。

笑顔でごまかしたけど、ファンの掲示板で叩かれてる。

『なにこのドジ』『もう下がって』『姉のコネでセンターかよ』って……っ」


知恵は静かに、妹の手を取った。


「……言ってくれればよかったのに」


「……だって、お姉ちゃんは昇段戦だったでしょ?

あんなに大事な日だったのに、私なんかのことで……」


「“私なんか”って、言わないで」


その言葉が、少し強くなった。


「私が麻雀を本気でやってるのはね、

理恵がいつも笑って、“頑張ってるから”なんだよ。

妹としてじゃなくて、“一人のアイドル”として。

あなたが一生懸命やってるの、私は誰よりも知ってる」


理恵は、その言葉に、ただただ泣きながら頷いた。


「……苦しいんだよ、ほんとは。

毎日キラキラしてなきゃいけないし、

歌もダンスも、自分の魅せ方も、全部“数字”で見られる。

でも……負けたくないの。お姉ちゃんにも、ファンにも、自分にも」


知恵は、妹を優しく抱き寄せた。


「なら、泣いていいよ。

泣いたって、明日も“ステージ”はある。

……それって、“麻雀”と同じだよ」


翌朝――


理恵は目を腫らしながらも、

いつも通りの時間に起きて、アイロンをかけた制服衣装を手に取った。


そしてリビングで朝食を食べる知恵に、少しだけ照れくさそうに言った。


「……私、もうちょっと、粘ってみる。

たとえ次の選抜に落ちても、“理恵は理恵”で勝負する」


「うん。それでいい。

私も、“知恵は知恵”で戦うから」


姉妹は、小さく拳を合わせた。


■ラストシーン


その夜。

理恵のステージ写真が、公式SNSに投稿された。

センターで微笑むその表情には――

泣いた後の、確かな強さがにじんでいた。


そしてコメント欄の一角に、

こんなメッセージがひっそりと寄せられていた。


「妹さん、素敵ですね。きっと、いい家族に支えられてるんだろうな」

――坂上瑠衣



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