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【オルキ国】ー神に捨てられた魔獣と孤島開拓-ようこそ、ここは魔獣の国。最後の秘境、そして最初の楽園。  作者: 桜良 壽ノ丞
発展の妨げとなる者たち

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シール諸島防衛方針

 



 * * * * * * * * *





「鎖国から20年が経ち、レノンとガーデ・オースタンが和平軍の最前線を担ってくれたおかげで、シール諸島の防衛は問題なく機能しました。オルキ国の暗躍も風の噂で聞いております」


「まあ、隠してはおらぬからの。連合軍が我が国に立ち寄り、夜間に奇襲を仕掛けた時から許さぬと決めていた」


 連合軍の国内は未だに混乱の爪痕が残っている。


 動物の群れに襲われた町では外出を恐れる市民や動物を見かけるだけで泣き叫ぶ子供がおり、海水浴客は激減。多くが山や川に近づく事も恐れ、都市部でしか過ごせなくなった。


 軍人のみを狙うよう指示したが、軍人が襲われる様子を見るだけでもトラウマになるには十分だ。

 軍人と一緒にいれば動物達に襲われるとされ、最近は軍人が毛嫌いされてもいるという。


 イングスの投石で壊された軍艦や戦闘機、軍の施設は動物達に踏み荒らされ、熊や虎が建物の中にまで侵入し破壊の限りを尽くした。

 怖気づいた軍人が放つ銃弾も、あくまで対人用であって動物達の厚い皮膚に弾かれてしまう。


 体重数百キロの牛馬が仮設テントを壊し、象は停められていた軍用車を踏みつけ破壊。それでもまだ随分と装備や車両があるとして、基地が荒らされ破壊され、その残骸が残ったままの拠点はもう使えない。

 それらが視界に入るだけで士気が下がる。


 おかげでこの2か月ほどは侵攻らしい侵攻もなく、和平軍が淡々と島嶼部を取り返しつつある。


「オルキ国も侵攻を受けていたのですね」


「ああ。セイスフランナの王女、アリヤは捕虜としてたまたま連れて来られていた所を救出したのだ」


「捕虜!?」


「はい。身分は明かしていませんでしたが……乗っていた船が襲われ、海賊かと思えばまさかの連合軍で。私を含めた女子供が捕虜にされておりました」


「つい1か月ほど前にも、連合軍の艦隊を追い返したと聞いております。数隻の軍艦を沈めたとか」


「スキャパさんから聞いたのですね、その通りです。ですがその際はレノンの空母があったから追い返せただけで、普段の国防にはまだまだ不安があります。シール諸島の防衛を是非参考にさせていただきたく」


 フューサーの言葉が意外だったのか、オークニーは目を真ん丸にして驚いた。


「我々の防衛装備は、もう20年も前の旧式のものばかりなんですよ。当時は対戦車砲を戦艦に向け発射したり、巡航ミサイルを発射したり、ありとあらゆる抵抗を見せましたが」


「フューサー様。我々はある意味ハッタリで追い返していただけなんです。こんな小さな島々のくせに、膨大な武器を使ってとことん抵抗してくる。弾丸もミサイルも過剰なまでに、そりゃもう湯水のように使ってですね、空でも海でもちょっとした攻撃にも相手が塵になるまでやり返すんです。こんな島々にそこまで固執はしていなかったのでしょう、連合軍はこちらの思惑通り、割に合わないと思ったのか諦めました」


 セントが早口で説明をしつつ、銃を撃つ仕草やミサイルが着弾する様子までジェスチャーを見せる。


 攻め込む気を削ぐくらいの準備をし、攻撃を踏みとどまらせる。これはオルキも有効だと考えていた戦略だ。


「本当はね、人と人で殺し合いなんて無駄な事をしたくないんだ。でも、話し合いで片が付くのなら、もっと言えば話が通じる相手なら、戦争なんて起きてないと思わないかい」


「フェイン王国の状況を踏まえると、攻め込まれたくなかったら言う事を聞け、物を差し出せ、人を寄越せ、って運びになりますよね。戦わずとも必ず戦利品を要求されるものだと思います」


「その通り。シール諸島はフェイン王国の様子を見て、やはりありったけの武装をする方針は正解だったと確信したよ」


「連合軍に島々を全方位取り囲まれ、空から海から一斉に攻撃されたなら、まず勝ち目はなかったと思います。相手の想定の何倍もの猛反撃で怯ませて以降、年に数回、時々偵察程度の攻撃を受けるだけです」


「武装解除をしているかどうか、防衛装備が機能しているかを確認しているんでしょう。私がレノン軍に所属していた時も、連合軍はそのような動きを見せていました」


「ああ、やっぱり目的はそうだったか。兄も同じ事を言っていたから間違いないね」


 ガーミッドにこの話を伝えたなら、きっとフューサー達が想定する以上の防衛装備を準備し、島そのものが要塞かと思う程に完璧な布陣を考えるだろう。

 攻撃をしてきた相手には容赦をしない。オルキが満足そうに頷いて聞いているのだから間違いない。


「戦って割に合う見返りがあると思うから攻めるのだ。脅せば金品を差し出すと考えるから交渉を持ちかけてくるのだ。話せば分かるというのは詭弁である。今まさに攻めようとしている相手に話し合いを持ちかけるのは、攻め込まない代わりに相応の金品もしくは権利を渡す用意があると伝えるに等しい」


「まったくもってその通りです。いやあ、伝説の魔獣が国王と聞いてどういう事なのか分からなかったけれど、こんなにも聡明で頼もしい方だとは」


「魔獣と聞くと、人畜有害と思われるかもしれません。伝説の中の魔獣は人を恐怖に陥れる存在ですから。でも実際は違うんです。ただ曲がった事をする人間が大嫌いで、この世の中を良い人間で溢れる世界にしたいだけなんですよ。ね、島長」


「わざわざむず痒い事を言わなくても良い」


 アリヤがニッコリ笑うと、オルキが照れ隠しに後ろ足で首元を掻く。そこで扉がノックされ、廊下からオークニーを呼ぶ声がした。


「レノンとアイザスの皆様が到着されました。空港からはキュイの訪問団も到着したと連絡が入っております」


「分かった。オルキ国の皆さん、いったん会談はここまでとさせていただきたい」


「礼を言う、建国から日の浅いオルキ国に、今後もご助力いただきたい」


「勿論です。私も近々オルキ国をお伺いしたい。もう鎖国生活は飽きました、はっはっは」


 シール諸島は戦時中の鎖国でピリピリしているのかと思いきや、案外のんびりしている。

 20年間殆ど諸外国と交流がないため、どことなく戦前の大陸の町のような雰囲気も残っており、鎖国を解除したなら物珍しく思う観光客が押し寄せそうだ。


 シェルランドは産油国ながら蒸気機関が現役で、技術も独自の進化を遂げているという。フェアアイルが配備している武器も整備の過程で魔改造が行われ、とんでもない進化を遂げたものがチラホラ。

 20年前の旧式装備だと言っていたが、そう思って見くびっていると、とんでもない仕返しがあるのは間違いない。


「そう言えばアリヤ、アイザスに行った時に向こうの外務大臣とは会ってるんだよな」


「外務大臣ではなく、大統領に……」


 廊下に出てアイザスとレノンの首脳陣に挨拶しようと待ってると、廊下の先から良く響く声が聞こえて来た。

 フューサーにとっては初めて、オルキとアリヤにとっては久しぶりのものだ。


「あーあーまいったなや、久しぶりのハイヒールであがむぐれが出来てわがんねよ、ハァー」


「あくたれこくのは止めてけさいん、大統領。ちょびっと太ったのしゃ? いんぴん語りしでねえであーあー、糸くずさ肩付けて……」


「こりゃ! もざける! すっぺったのおっぺったのへらへら語んねえではいぐ行け?」


「はいはい、さんざぱら待だせでますから」


「ドイル大統領!」


 廊下の角を曲がって現れたのは、アイザスの大統領であるドイルだった。アリヤが呼びかけてようやく気付いたようで、ドイルはぱあっと表情が明るくなり駆け寄って来た。


「まあ! なじょしてござったのしゃ!?」


「今日は、島嶼防衛会議に出席させていただきたく参りました。改めまして、外務大臣のアリヤ・ウルティナ・セイスフランナです」


「出世したのね、ちょっとの期間で随分と頼もしい顔つきになったわ」


「この度は突然の参加希望にも協力いただき助かった。礼は必ず」


「お久しぶりです、オルキ国王。お元気そうで何よりですわ」


 ドイルはきつめのハグでアリヤ達を歓迎し、すぐ隣にいたオークニー達に深々と頭を下げる。

 その後ろからレノンの首相の姿も見え、一同は少し早いと言いながら会議室を目指した。

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