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【オルキ国】ー神に捨てられた魔獣と孤島開拓-ようこそ、ここは魔獣の国。最後の秘境、そして最初の楽園。  作者: 桜良 壽ノ丞
オルキ国の本格始動

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Chit-Chat04 新しい言葉

 


 国民約15名となったオルキ国。

 最近は首都のあるヒーゴ島ではなく、対岸のクニガ島、そしてウグイ島の開発も始まっている。


 日頃は人口のうち女5人と魔獣1匹がヒーゴ島に残り、食事の準備や農作業、牧畜などを行う。

 男10人と1体が土木作業に従事し、クニガ島の港建設に携わる。


 港を作るのにたった10人で何が出来ると思いきや、イングスという規格外のおかげで案外進みは早い。思えばたった数か月で大型の空母が着岸できる港を完成させたのだから、冬が終わる頃には完成しているだろう。


「冬になったら流氷が流れ着いて島と島の間を歩いて渡れるんだ」


「流氷は見だごとねぐて、冬さなったらみねいんだっつってたのしみだな」


「次は不凍港が欲しい所ですね」


「ほうじゃのう、ヒーゴ島の南か、クニガ島の南西、ウグイ島の南西が現実的な場所と思うけどのう」


「波が高くて着岸が難しいんじゃないかと」


「ウグイ島の北東もいいと思います。今の桟橋の位置に築けば流氷が塞ぐ事はないですから」


「そこからどうやってヒーゴ島まで来るかだな」


 まだ地面を平らにしていくだけで、アスファルトやコンクリートで固めるには程遠い。

 側溝を掘り、配管を埋め、それなりの待合施設、修理ドックも建設しなければならない。


 当然水道や電気も通す必要があるし、大勢が一時的に滞在できる建物も必要だ。

大勢となれば集落の汲み取り式のトイレや浄化槽モドキでは追いつかない。いよいよ本格的なインフラ整備を行う事になる。


「ヒーゴ島は首都があって北部に平地も多いから、住むには最適だもんな、空港を作るのは勿体ない」


「それに空港んねきで頭の上を飛行艇が飛ぶとなりゃ、煩くてかなわんけえ」


 クニガ島に第二の立派な港を作ろうとしているのは、いずれこの島に空港を建設する予定だからだ。


 飛行艇でやって来た者達を敷設予定の線路で港まで運び、そこからヒーゴ島、ウグイ島への客船に接続。

 理想は全ての島に人が住むようになり、密入国や資源の強奪に無防備な現状を変える事。

 その為に今のうちから整備しようというのがオルキと国民の結論だった。


「オルキ国に赴くとなれば、外航船で少なくとも丸3日はかかっちまう。天候や船の性能次第では1日、2日余計にかかってもおかしくない」


「移住の時はそれでもいいけどよ、旅行やなんかの用事で来てもらう時、往復1週間かけてくれるかって話だよな」


 オルキ国単体でもそれなりの生活は出来る。時間がかかっても良いなら細々と鉄を作り、それなりの工具もそろえる事が出来る。森はなく木が少ないからといって、木工ができない程でもない。

 産出量は少ないが、島で生きていくだけの量なら石油も確保できる。資源に関しては豊かな方だ。


 けれど、空を飛び爆弾を作り、あらゆる機械装置を駆使する国々から見て、オルキ国は明らかに見劣りする。都会と変わらない暮らしの質は求めたい所。

 電化製品、機械や精密機械、重機、ありとあらゆるものがまだまだ足りない。


 また、近代化と同じくらい急ぐべきは、友好国との距離を縮める事。

 軍艦のように速度を出せない安全第一の貨物船や客船に乗り、往復だけで1週間かかる国とどんな連携が取れるだろうか。


「隔絶されていて敵が攻めるのも一苦労って地理的優位性はあります。けれど有事の時の距離と考えた時、何か間に合わない事態もあり得ます」


「出来るだけ距離を縮めたいところだよな。本音を言うと同じ島国でいざとなった時閉ざされてしまうアイザスより、レノン側を優先したい」


「大陸っていう圧倒的優位性は、どうにもなんないもんな」


「距離を縮めて、来てもらうにもこっちから赴くにしても容易になる事を願って、毎日つるはしとシャベルを振るうだけさ」


 10人がいつか来る近代化のため、頑張ろうと汗水を垂らす。気温はそろそろ10℃を下回る時期だが、皆が汗でびしょ濡れだ。


 イングスを除いて。


 イングスは世間話のように目的がなくとりとめのない話はまだ苦手だ。

 そのため、よほどおかしいと思う事がない限り、会話に割って入る事がない。


 ただし、会話が終わった時には、聞こえて来た内容と自分の知識の矛盾や相違点の答え合わせをしたがる。


「距離を縮めるって、どうするのかな」


「こうやって港を作ったり飛行場を作ったりして、出来るだけ赴き易い、みんなが簡単に来られるようにするのさ」


「アイザスとオルキ諸島の距離は変わらないでしょ」


「まあ、あー、物理的な距離の事を言ってんのか」


「他に距離があるのかい」


 イングスが心に理解を示し始めたと言っても、まだまだ理解度10段階の1段も登り切っていない。心理的距離をどう説明していいか、1人の男が唸りながら頭を抱えてしまった。


 答えを待っている間、イングスはただ思考を停止して待機しているばかりではない。自分が持っている知識や語彙力を駆使し、正解を導き出そうとする。


 ただ、その答えが毎回皆の予想すらしていないものになってしまうだけだ。


「ヒーゴ島を動かすのかな。それともアイザスが近づいてくるのかな。でも、港を作る事と関係ないと思うよ。橋の方がいいんじゃないかい」


「いやいや、島は動かない。橋を架けるって、深いとこで1000メータも2000メータもある海に支柱は建てられないだろ?」


「……はっ」


 橋を架ける事が無謀だと気付いたのか。イングスが珍しく驚いたような表情を作る。

 が、こういう時は焦らさずさっさと答えを与えなければ、もっと変な事を言い出す。それがイングスだ。


「海は自然、島も自然」


「ん? まあ、自然だな」


「港は不自然」


「……?」


「不自然は動かせると思う」


「……はい?」


「あー……イングスの自然への理解力、1年前と全然変わってねえわ」


 大自然だの、小不自然だのと言っていた昨年と、また同じような事を言っている。ケヴィンによる教育の敗北だろうか。


「戦闘艇は動く。戦闘艇は不自然だし、僕も人形だから不自然。不自然は動かそうとしたら動く事があるよね」


「丸太だって、落ちてる小枝だって石だって動かせるじゃねえか。何でそんな事を言ったんだ」


「……うーん、港を作ったら不自然になるから島を動かせるのかもって思った」


「また随分ととんでもない理論だな」


「あっ」


「今度は何だよ」


「島はまだ自然なのかな」


「自然かどうかと距離の話はまったく繋がらねえけど、まあ人工島ではないな」


「成長すると、距離が近くなるって事だね」


「……島の大きさの話をしてんのか?」


「うん」


 今度は「自然なら草木のように勝手に成長するのではないか」と考えたらしい。勿論ハズレだ。


「オルキはこの島を成長させるって言った。そろそろ大きくなってアイザスとくっつく」


「そういう意味じゃねえんだって。距離が近いって言うのは、仲良くなるとか、行き来が簡単になるっていう意味でもあるんだよ」


「そうなんだね」


 とりあえず素直な事が、イングスの救いの1つ。そうだと教えられたら、何か変な矛盾がない限り納得してくれる。が、そこからまた別の珍回答を披露するのも忘れない。


「オルキ諸島は赴き高い島だから安くしないといけないんだね」


「ん?」


「赴きやすくするって、言った」


「安い、じゃなくて、簡単って意味の易い、な。気易くとか、気軽にっていう、心と気持ちの話」


「そうなんだね」


 ようやく物理的な話ではないと納得できたようだ。


「アリヤに教えてあげなくちゃ」


「ん? まさかアリヤも島が動くと思ってたのか」


「心が動く事をおもむくって言った。おもむきは深くも浅くもなくて、易いか難しいかなんだよって教えてあげる」


「趣きの事か、ややこしい事言い出したな」


「心の距離がおもむきって言ったでしょ」


「おーい、誰か同音異義語の説明頼む! 俺はもう無理だ!」


「オルキ国からは海が深くて橋を作れない。赴くのが難しい。浅かったら橋が作れるから簡単に行ける。深いから難しい、浅いから簡単。そういう事だよね」


「おーいケヴィン先生! 出番ですよー」


「俺が教えてもこうなんだから、次誰か教えろよ! おいあんた医者だろ、頭いいんだから代わってくれよ」


「すみません僕は理系なんで」


 体を動かしながら、時には頭を働かせる必要もある。

 そんな島の忙しくも長閑に過ぎていく時間の中で、次第に連合軍側から移り住んだ者達も打ち解けて始めていた。

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