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【オルキ国】ー神に捨てられた魔獣と孤島開拓-ようこそ、ここは魔獣の国。最後の秘境、そして最初の楽園。  作者: 桜良 壽ノ丞
オルキ諸島という国

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おもてなしと審査




* * * * * * * * *





 アイザスを出発して4日目の朝。

 オルキとアイザスの船が2隻揃ってヒーゴ島の港へ入って来た。


「おーい!」


 汽笛で気付いたフューサーとガーミッドが慌てて駆け付け、船から投げられた太いロープを係船柱にかけていく。


 予め港の整備から始めていた事が功を奏し、2隻が窮屈ながら問題なく係留された。ただ外交を始めるのなら、もう少し拡張が必要かもしれない。


「ただいまー!」


「お帰り、無事に帰って来れたようでよかったよ。予想より早かったよな? 1週間ちょっとくらいか」


「かなり順調に事が運んだのです。詳しい話は後ほど、色々と買い物も出来ました。あちらはアイザスの方々です」


「おかえりなさい、アリヤさん、皆さんも。大したおもてなしはできませんが、保存食はありますし、今朝は釣りたてのタラとサーモンも」


 アイザスからやって来た総務大臣と上院議員4名、それに海軍の10名。全員が上陸したところで、オルキ国の全員がお辞儀で歓迎する。


「ようこそお越し下さいました! 首都はここから2km程度あるのですが、集落の港まで小さなボートでお送り出来ます」


「2km程度なら大丈夫です、30分ほどでしょう? 歩きましょうよ」


 一番高齢の女性議員が歩こうと言えば、他の者は嫌とは言い出せない。

 アイザスの一行は、せっかくだからと島の説明を受けながら歩いて首都に向かう事になった。


「観光や外交を考えたら、何か移動手段を用意しないとまずいかな。首都の場所をこっち側に移してもいいんだけど」


「この港の付近は川が細い。数軒ならば良いが、大勢が住むには水の供給に不安があろう」


「確かにそうだなあ。首都の付近は大きな港を作れそうにないし、警備を考えるとわざと港から離すのは間違いじゃない、か」


 これからの事を考えながら、一方では質問を受け、それに答えていく。そうしているうち、あっという間に首都に辿り着いた。


「まあ、芝屋根の可愛いおうちがいっぱいね」


「人口5人でしたよね。家の数は随分あるようですが」


「家が多いと、人が多いように見えるでしょう? それに移民の方の家も必要ですから。あちらの一回り大きな家が集会場です。さあ、どうぞ」


 芝屋根に黒く塗った壁、赤い窓枠。島中の廃屋の割れたガラスを集め、溶かして再度板状にしたフューサー渾身のガラス窓だ。


 靴を脱いで板張りの床に上がり、10人掛けのテーブルを囲む。訪問者が15人もいる事を想定してなかったため、大臣と議員、オルキとソフィア、アリヤが席に就き、残りは床に座るしかない。


 イングスとケヴィンとガーミッドが慌てて別の建物からテーブルと椅子を運ぶ。


「全員分の席が用意できず申し訳ございません。すぐに準備いたします」


「おかまいなく、こんなに大勢で押し掛けてしまったから」


「すみません。……さて、おおよそこの島の事はお伝え出来たかと思います」


「そうですねえ。一度は完全に荒れ果て、外からの物資も期待できない環境からここまで住環境を整備出来たというのは凄い事です」


「あの暖炉は、泥炭ピートですか?」


「そうです。出来るだけ着込むようにしていますが、寒さへの対策もしっかりできています」


 オルキがアイザスに協力を請いながら、物乞いのような態度ではない事に、当初皆はただの強がりだと思っていた。物資や金が欲しくてたまらないのだろうと。


 しかし、オルキの態度は強がりでも何でもなかった。

 物資は足りていないし、生活の知恵程度の技術では発展にも限界がある。それでものんびりと生きていくなら何も困らない。

 オルキ国の本来の目的は生活水準の向上や工業の発展ではなく、国として認められる事だ。それを再度説明され、一行は認識を改めた。


 実際にどのように暮らしているのかを見て、一行はオルキ国が長閑な農村よりもやや良い生活水準であることを認識した。

 本来なら困窮していてもおかしくない環境なのに、皆が逞しく暮らす。根性論で言えばアイザス国民など到底かなわない。


「椅子とテーブル持ってきました、座れていない方、こちらに」


 ガーミッドがテーブルを2つ追加してつなげ、全員に座るよう促す。ケヴィンがイングスに手招きをして外に出てから、会議は再開された。


「極端に人口が少ないだけで、国としてお付き合いするのには何も問題なさそうですね。今後の展望などをお聞かせいただけますか」


「我が国はまだ共同生活の域を出ておらぬ。工場の煙は苦手故、工業国にしたいとまでは考えておらぬが、島の農作物や海産物、工芸品の輸出を安定させ貨幣経済を確立させたい」


「先進国並みの上下水道網も整備したいと思っています。その技術者の派遣を要請するためにも、まずはお金ですね」


「電気は風力発電ですか?」


「ええ、簡易的な変電施設しかありませんが。後は街燈と工房用に水力発電もしています」


「電気に困っていないのは強いですね」


「鉄材を始め、島のインフラ整備に必要な物資も足りていません。これから人口を増やすなら、島の廃材を再利用するだけじゃ間に合いません」


 羊毛と干し肉、そしてオルキ国の工芸品。今のところ輸出できるのはそれだけだ。それを他国に売りに行ける船は1隻のみ。

 今度こそめいっぱい積んで売りに行くとして、その収入は船の往復の燃料代を差し引けばもう1隻船を買えるのはいつになるやら。


「困ってはいないが、発展の速度を上げられない、という所でしょうか」


「まさにその通りだ。国としての承認を受けたとして、このままでは連合軍に攻め込まれる隙しかない。国力は上げるに越したことは無かろう」


 オルキ国の課題を上げ、ベテランの大臣や議員が助言をくれる。法律についても、アイザスの法律全書を1冊提供してくれた。兵士達は最新の世界情勢と、最新の兵器、連合軍の動きなどの情報を惜しみなく提供してくれる。


 ガーミッドが多少連合軍の内情を暴露したくらいでは、到底釣り合わない。


「慈悲と知識に感謝する。あいにく、この国で我々が提供できるものは、羊毛と干し肉くらいだ。牛や羊や馬でも良いが」


「家畜を乗せて帰る訳には……。それに、アイザスにとってこれは与えるばかりではないんです」


「どういう事だ」


 大臣が代表し、数枚の資料を並べた。国際会議のためのものだ。


「6か月後、国際会議が開かれます。オルキ国がその間に後5か国と国交を結ぶことが出来るなら、その時は自動承認され正式に国家となります」


「6か月……あまり、時間はありませんね」


「それは我が国の事であって、アイザスのためではなかろう」


「いいえ。その際、海洋に関する議題が幾つかあり、船舶の航行の自由についての採決があるのです」


「……領海内の通行を、許可制ではなく申請するだけで良いとするという」


「アリヤ様はよくご存じで」


「意見は真っ二つに分かれています。主に連合軍側、そして海洋に接していない、もしくは国際的に重要な海域を持たない国は、申請制を望んでいます」


「ガーデ・オースタンは反対していたはず。許可制でなければ敵国の船であろうと容易に重要な海峡や港へ侵入できる。しかも合法的に。それは避けないといけない」


「ギタンギュはどっちだったかなあ……」


「ギタンギュは中立です。会議の場で決めるとの事で」


「セイス・フランナも反対でした。ノウェイコーストは賛成だったかと」


「航路的に、ノウェイコーストから各国に船を出すと、必ず数か国の許可を得る必要がありますから、面倒というのが本音でしょう。許可にもお金がかかりますし」


「アイザスはどちらだ」


「反対派です。許可制を維持したいのです。これはアイザスの島嶼部防衛のためです」


「そして、我々オルキが反対票を投じる事を期待している、と」


「仰る通りです。次の投票で反対派が確実に上回れなかった場合、決定は総会ではなく議長の決断となります」


「今の議長国って……ゴレイじゃ」


「はい。連合国側として参戦したゴレイです。ゴレイは賛成の立場なので、もしも票数が同数の場合は申請制になってしまいます」


「どれだけ小国であろうと、1票は1票、という事か」


「はい。アイザスは永世中立国を宣言していますから、公に動く事が出来ません。ですが……」


 オルキは大臣の目をしっかりと見つめる。


「我々の島に敵対的な国の船など寄らせたくはない。アイザスからの恩に報いる事になるなら、我々は急ぎ5か国と国交を結び、力になろう」


「有難うございます。そう言っていただけてよかった。実は、今回の訪問は、それを確かめるためのものでもあったのです」


「ん? どういう事だ」


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