表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
  作者: りつ
1/1

1.崩壊

⚠注意⚠地震や血の表現が含まれますので苦手な方は閲覧をご遠慮ください。



『 苑子ちゃんは、何も出来ないんだからずっとママと一緒に入ればいいの。』



そう毎日、母に言われて育った。母曰く、私は『アスペルガー症候群』という頭のおかしくなる病気なんだって。

病気なら病院に行かなきゃいけないとクラスの女の子に言われたことがあるんだけど、それを母に問いかけたことがある。

なんでもこの病気は完治はしない病気だから行く必要も無いらしい。そうやって医者に言われたんだって。

なぜそんなことを問うのかと聞かれたから素直にその女の子のこと話すと今度はその子の罵倒が始まったのを鮮明に覚えている。

なんでかって?その子が罵倒されると胸が苦しくてあんなに優しい女の子なんていないのに悪く言われるのが聞きたくなかったし私と一緒にいるせいでこんなに罵倒されるなら人と距離を置こうと決めた日だから。

それからはずっと1人だった。何も楽しくなかった。

だから、高校のある時「嗚呼、こんなに辛いなら死ねばいいんだ」って気付いたから目に付いたカッターで思いっきり腕を切ってみたの。

そしたら、周りが騒いで母を呼んでしまったの。

あのいつも家で見てる鬼の形相の母が学校に来たかと思うと私の頬が突然痛みを覚えた。

そして、それからずっと「お前のせいで私が恥をかいた」「やっぱりお前は出来損ないだ」「死ぬなら見えない所で死ねばいいのに!」そう罵倒されながら叩き続けられた。

その痛みに耐えながら、「嗚呼、この人は娘が死を選んだことを嘆くのではなく、自分の世間体を気にして嘆くのだ」と思い、母に期待するのも死ぬのも馬鹿らしくなり二度としようとは思わなかった。

それから社会人になってもずっと母といた。

躁鬱だった父はあの事件のあと、数年してから自殺してしまったので本当に母と二人っきりだった。

こんな世界なら早く消えてしまえばいいのに、そう毎日願っていたのに何も起こらなかった。

あの日までは。


---------------------------------------------------------------------------------



毎朝、仕事の行く準備のために起きたくもないのに鉛のように重い体をゆったりと起こすこの作業が苦痛でたまらなかった。

どうせ、下に母は居ないだろうとそこだけは救いだなと思いながらゆったりゆったり準備をしながら降りていくと食事の匂いがした。

まさか、母がいるのかと思った瞬間に胃が内容物を吐き出そうとするのを血が滲むほどにグッと手に力を入れながら耐える。

台所に向かうとそこには思った通りそこには母がいた。

まだ何も言葉を発していないのには母は朝から私の罵倒が始まった。嗚呼、昨日の夜の仕事で嫌な客に当たったのを私で発散するために起きていたんだなと客を恨めしく思いながら、今から会社に行くのにどうしたものかと思いながら思案しようと時計を見た時だった。目の前の景色が大きくぐにゃりと歪んだ。



「え…?。」



大きく揺れる家に今、地震が起こっているのだと気づいた瞬間に咄嗟的に机の下に隠れて早く終わってくれと目をつぶり願っているがその地震は待てど待てど終わることなんかなかった。

やっと地震が終わった時には船酔いの様な症状に襲われて吐き気に耐えきれず床にぶちまけながら、チカチカする瞳を必死に凝らしながら前を見ると家具という家具は全部倒れ何故か屋根と思わしきものが目の前にあった。

頭の中で処理が出来ずに困惑していると、後ろから母の悲痛な叫びが聞こえてきたのに慌ててそちらに向き直ると食器棚や冷蔵庫や屋根と色んなものが倒れた隙間に上半身だけ出ている母がいた。



「お、おか、お母さ…!」



突然の光景に慌てて絡まる足を必死に動かして母の元に歩いていくと母がいつものギッと鬼の形相になった。



「こんの役たたず!!早く助けなさいよ!!………本当にあんたなんか…あんたなんか産まなきゃ良かった!!この疫病神!!!。」



そう罵倒する母の言葉に一気に頭が冴えて行くのを感じた。こいつ、今の状況が分かって言っているのだろうか。

私が助けなければ動けもしない。むしろこのままだと死ぬと言うのに。馬鹿ではないだろうか。



「…へぇ、疫病神なら助ける必要ないよね。だって、触れたらもっと不幸になるものね。」



自分でも驚くほど冷静な声が聞こえてきてそれが自分の声だと気付くのにかなり時間が要した。

その間に()()()は、急に泣きじゃくり謝りだした。

そんな姿を見ながら、こんな奴に私は怯えていたのかと思うと馬鹿らしくなり笑いが込み上げてきた。



「た、助けて…!そ、苑子…!!ね?わ、私達。唯一の家族じゃない。」


「家族…?だって、私は疫病神なんでしょ?産まれて欲しくなかったんならもうこんな娘がいたこと忘れてお互い自由に生きていく方が幸せだと思うの!ね!名案だと思わない?!ね、()()()()?。」



幸せそうに笑う私におばさんはなんでか絶望した顔でこっちを見てるんだけど、気持ち悪い。あ、そっか!助けて欲しいんだ!このおばさん!



「おばさん、ごめんね?私、何も出来ないの。生きてることしか出来ない人間だからさ、人を助けるなんてそんな大それた事出来ないんだ!だから、他の人に頼ってね!叫んでたらすぐに来るよ!バイバイ!」



そう言って背中を向けて瓦礫の中から外に出ると後ろから泣き叫ぶ声が聞こえて来たけど、周りは家という家が全部崩れ落ちて倒れていたからそりゃ泣き叫ぶよね。

そう考えながらその場から立ち去ろうとした時に知らない男の人の力で手を掴まれた。



「おい!あれ、お前の母親じゃねえのかよ!。」


「え、あれは()()()()()()()()だよ?。」


「は…?も、元母親?。」


「うん!私、疫病神なんだって!んで、産まなきゃ良かったって言われたから親子やめてそれぞれ離れて暮らそうってなったのよ!。」


「っ…!…なんでそうなったかは分からねえけど、そうなったんだとしても助けないのは違くないか?。」


「だって、()()()が私は生きてる以外何も出来ない役たたずだから何も出来ないって言ってたから私には何も出来ないの!だから、あなたが助けてあげて!ね?名案!。」


「お、まえ…。」



言葉を失った様な表情で見つめてくる男の人にバイバイと手を振って立ち去ろうとした時だった。その手を掴まれて抱きしめられた。

突然のことに困惑していると肩が濡れていくのを感じた。



「何があったかなんて俺にはわからねぇ…。でも、このままじゃお前が将来公開するのだけはわかる!だから、何も出来なくていい!俺と一緒に行こう!。」



「っ…、わ、わかった…わ…。」



男の人の気迫に押されるまま()()()の元に戻るとそこには何も発しないものがあった。

そんなことを気にした様子もなく男の人は必死に瓦礫を退けて()()()だったものを助け出したか全く動く気配はなかった。

それもそのはずだ下半身からは大量の出血に染められたいたのだから。

これは、素人から見たってわかる。これはもう助からない。

そんな姿を何の気持ちも抱かずに見つめていると男性はその血まみれのものを後ろに背負うと私に着いてこいと言わん気に顎をクイッとされた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ