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第2章 氷砂糖の街

 オレンジ色の街灯が、舗道にいる少年をくっきりと照らし出していた。

 コウタは目を見張った。あれは、確かに亮平だ。こんな寒い季節のま夜中に、亮平がパジャマ一枚で、舗道に突っ立っている。コウタはまたしても、寝ぼけて幻を見ているのではないかと、自分の目を疑った。

しかし、舗道にいる亮平は、余裕たっぷりの笑顔をコウタに向けて、しきりに手を振っている。

「コウタ、早く降りて来いよ。ぐずぐずしていると、置いていくぞ」

 オレンジ色の光に染まった亮平が、じれったそうに叫んだ。

あの声、あの言い方、あの仕草は、間違いなく亮平だ。パジャマ姿なのは変だけど、幻なんかじゃない。確かに、亮平が、大通りとけやき通りの交差点に立っている。

眠気がいっぺんに吹き飛んだコウタは、慌てて窓を開けた。そのとたん、南国みたいに暖かい風が、一気に、部屋の中へなだれ込んできた。熱い空気の塊がコウタと、コウタのいる部屋を包み込む。さっきまで、冷え切っていた部屋は、今は熱気で満タンだ。

コウタは、突然、はしゃぎたい気持ちにかられた。今は、ま夜中なのもすっかり忘れて、舗道に向かって大声で叫び返した。

「亮平、こんな夜中にどうしたんだ?」

 すると亮平は、意気揚々と両手をあげて、大きく広げてみせた。

「まだ、夜中なんかじゃないよ。夜は始まったばかりさ。それにほら、ちっとも寒くないだろう?いいから、早く外に出て来いよ」

 亮平の言うとおりだ。外は妙に明るいし、寒くもない。おまけに眠くもない。おかしいと疑いつつも、気持ちはすっかり舗道へ駆け出している。

(何かが変わろうとしているんだ…)

暖かい風が、コウタの奥に隠れていた熱い宝物を見つけ、表へ引っ張り出そうとしている。そして、体中の血を呼び覚まし、どこか別の世界へと、自分を強く誘っている。

外へ向かう気持ちが、体の内側からこんこんと湧き出し、コウタは、居ても立っても居られない気分になった。心は、急速に膨らんだ熱気球だ。しまいには疑いも不安も、いつもの慎重さも、すべて吹き飛ばしていた。

次の瞬間、コウタは部屋を飛び出し、サンダルを引っかけると、玄関のドアを開けた。暗いマンションの廊下に走り出し、その勢いのまま、階段を駆け下りて行った。

 マンションの薄暗い出入り口には、外の通りから鈍い光が差し込んでいた。その頼りなげな光を信じて、マンションから大通りの舗道に出ると、そこはまるで、別世界だった。

目の前の大通りには、車一台走っていない。この埃っぽい大道路は、夜でも車がひっきりなしに行き交うほど、往来が激しい。それなのに、今はしいんとした、ただの細長い広場のようだ。おまけに、誰一人いない。

通りに面したビルの窓やドアは、閉じられ、ネズミ一匹入り込めないほど、隙間がすべて塞がれている。色鮮やかだったドアやビルの壁は、すっかり色あせ、ほとんど灰色一色に染められていた。

どういうわけか、厚い鋼でできた壁や石垣が、通り沿いに力強くそそり立ち、道路や舗道以外は、近づき難い雰囲気になっている。いつの間に、通り沿いがこんな風に変わったのだろう。

右手に数十歩も歩くと、大通りとけやき通りの交差点だ。コウタは、大通りが気になっていたが、立ち止まらず、交差点へと急いだ。

 広いけやき通りの両側の舗道や、道路の真ん中には、大きなケヤキの木が一列に並んでいる。とっくに、葉が全部落ちたはずなのに、枝には肉厚な青い葉がおい茂っている。風もないのに大きくゆっくりと揺れて、まるで、新参者のコウタに挨拶しているようだった。

 しかし、コウタが何より驚いたのは、けやき通りの道路だった。

しいんとした道路には、氷状のものが路面を覆い、ピカピカに輝いている。オレンジ色を放つ街灯の下は、そのままオレンジ色に、丸く大きく染められ、その光が照り返し、周囲はうっとりするほど美しい光景になっている。

どう考えても、氷が張っているとしか思えないのに、道路からは冷気がまったく伝わってこない。ガラスか、甘い氷砂糖でも敷き詰められているのだろうか。コウタは、この驚くべき光景に、すっかり目を奪われた。

「遅いぞ、コウタ。みんな、とっくに行っちゃったよ」

大通りとけやき通りの角には、亮平がじれったそうに立っていた。亮平は、驚いているコウタを尻目に、少々不満顔で言った。

「どうやらおれたちが、一番最後らしい」

 亮平は、色あせた黄色いパジャマの裾を、むやみに引っぱっては、落ち着かない素振りだ。コウタはまだ、ぼう然としながらも、舗道の端にいる亮平の元へ駆け寄った。

「ねえ、何が起こっているの?けやき通りは、どうなっているんだい?それに、みんなって?みんな、どこへ行ったんだって?」

 いつもは冷静沈着なコウタが、慌てふためいている。その姿が、余程おかしかったのか、亮平は急に、ニヤニヤし出した。今回だけは自分の方が、一足早くわかっている先輩なのだと、言わんばかりだ。

「どうもこうもないよ。目が覚めたら、こうなっていたのさ。訳なんて知らないよ。いや、訳なんて、この際どうでもいいんだよ」

亮平は意外にも冷静だった。あるいは、単に無頓着なだけなのかもしれない。

「けやき通りだけじゃないさ。ほら、大通りだってこのとおり」

 コウタが振り返って見ると、驚いたことに、先ほどまでは物寂しかった大通りが、けやき通りと同様に、ピカピカに輝いている。

 亮平は得意顔で言った。

「さっきそこで誠と真一、それに一郎と健吾に会ったんだ。あいつらは大慌てで、けやき通りを市役所の方にすっ飛んで行った。急がないと間に合わないぞ、って言い残してね。本人たちも、どこに行くのかは、よくわかってない様子だったけど、とにかく、あっちの方角らしい」

 亮平は、舗道の角からその方向を指さした。まっすぐなけやき通りは、ずい分先まで見通せるが、今はもう誰の姿も見つけられない。

コウタはますます、わからなくなった。こんな時間に、子どもだけでどこかへ行くなんて、とても考えられない。特別な催し物があったのだろうか。いや、そんな連絡は、学校で聞いていないし、地区の行事があるとも聞いていない。だいたい、父や母からそれらしい話もなく、知っている素振りすらなかった。

本当に、わけがわからない。コウタは眉をぎゅっと寄せた。

すると、亮平が急に先輩風を吹かせて言った。

「おまえの気持ちは、よくわかるさ。実は、おれも、さっぱり事情がわからない。だけどこれは、学校の行事なんかじゃないんだ。学校も、地区も、子ども会も関係ない。そんなものより、もっと、大切なんだよ。ひょっとしたら、これは夢かもしれない。けれど、夢なら夢でいいんじゃないかな?夢の中で楽しめば」

 日頃は少々頼りない亮平だが、こんな異常な状況なのに、えらく落ち着いている。そばにいる親友が、これほどしっかりしているので、コウタも少しずつ落ち着きを取り戻してきた。

むしろ、あれこれ心配し過ぎている自分の方が、妙にバカバカしい。これが夢かどうかなんて、この際どうでもいい話だ。亮平にならって、よけいなことは考えず、この不思議な状況を楽しめばいいのだ。コウタの口もとが、ようやく緩んだ。

「うん、そうだね。夜中にパジャマのまま、街を自由にうろうろできるなんて、こんなチャンスは滅多にないし。ところで亮平、どうして女物のパジャマなんて着ているんだ?」

 コウタが亮平のパジャマに目を向けると、とたんに、亮平の顔がまっ赤に染まった。パジャマの黄色い布地には、派手なピンク色をした桃が、前面にでかでかと描かれている。しかも、巨大な桃には、それに見合う大きなピンクのリボンが添えられていた。

「うわっ、そうだ、おれ、すっかり忘れていた。自分のパジャマが洗濯中だったので、姉貴のを失敬したんだ。うわあ、今更ながら恥ずかしいな」

 亮平は照れながら、パジャマの裾を不器用に引っぱったが、大柄で、派手な桃は、どうやっても隠し切れない。

「そう悪くもないさ。そもそも、通りには誰もいないんだから、気にする必要もないだろう?」

 コウタは亮平の肩を軽く叩いた。亮平の肩に触れたコウタは、いつもどおりの暖かい手ごたえに、なおさら安心した。ここにいる亮平は、確かに生きているし、いつもの亮平だ。決して幻ではない。

「それも、そうだな」亮平は周囲をさっと見廻すと、早くも落ち着いた。

「健吾たちは、慌ててすっ飛んで行ったから、気づかなかったみたいだな。ああ、助かった。一刻も早く着替えたいけど、家の中には戻れないんだよ。一度外に出ると、玄関のドアも窓も、あんな風に、隙間なくびっしり閉じられるからね。おれたちは、家から閉め出されたんだよ。子どもは、みんな、外に出て、夜遊びしろって言われているのかな」

 亮平はがっかりした口調でそう言ったものの、次の瞬間、元気よく顔を上げた。その大きな、いたずらっぽい目がきらりと光った。

「…だけど、こっちは上等さ!」

 亮平はいきなりコウタの腕をつかむと、舗道から外れて、ピカピカ輝く道路へとコウタを引っぱっていった。

 コウタは少し戸惑ったが、自信たっぷりの亮平に抵抗する気はなかった。

「もう、うちの玄関なんて一生開かなくても、構わないさ。こんなことができるんだから!」

 亮平はコウタの腕をつかんだまま、透明で光輝く道路へと降りて行った。道路の表面に足が触れた瞬間、コウタの体はふわりと持ち上げられ、信じられないほど軽くなった。

「浮かんでいる!」

「そうだろう?そうだろう?」

やたら嬉しそうな亮平に引っぱられながら、コウタは道路の上を滑り出した。二人ともサンダル履きなのに、軽く、すいすいと滑っている。透明な羽のスケート靴でも履いているのだろうか。しかも、すごい安定感だ。足もとはまったくふらつかず、思ったとおりに、どんな風にだって滑れるのだ。

亮平の手が離れると、コウタは、一人で爽快に滑りだした。舗道の街灯が作り出すオレンジの輪は、自分を照らすスポットライトだ。その輪を中心に、巨大な星型や菱形、もっと複雑な形を描いて滑ってみた。あまりの心地良さに、コウタはすぐに酔いしれた。

亮平は、思いっきりスピードを上げて滑っている。普段は運動が苦手で、逆上がりすら満足にできないのに、今はまるで、プロのスケート選手並みだ。去年のアイススケート教室では、滑るより、転んでいた時間の方が多かったほど、スケートは苦手だったはずだ。

その亮平が、通りの一区域をすごいスピードで滑り切り、満足気な顔で、コウタに手を振っているではないか。

呆れながらも、コウタは、軽く手を振り返した。

コウタは、もしかしたら、自分も普段なら到底出来ないことができるかもしれないと思った。そこで、試しに空中に高く飛び上がってみた。微塵の不安もなかった。この時ばかりは、できる気がしたのだ。

すると、コウタの体はゆっくりと宙高く舞い上がり、ふわりと着地した。自分でも信じ難いが、本当に成功できたのだ。コウタは、そんな自分に、心底驚いた。

遠くからその様子を見ていた亮平は、コーチや監督のような目つきで、満足げな微笑みを浮かべている。

コウタは、もう一度ジャンプすると、思い切って、空中で一回転してみた。体はしなやかに回転し、ゆっくりと確実に着地ができた。

亮平が、盛大な拍手を送っている。

「僕らは、今なら何だってできるんだね!」コウタが叫んだ。

すると亮平も、コウタの方へ滑りながら、拳を宙に突き上げて叫んだ。

「そうさ、おれたちは、最強だ。今なら何でもアリなんだよ。これが、本当の自由ってやつさ!」

 パジャマ姿の二人は、奇声を上げながら、けやき通りから大通り、青葉通りを抜けて、若葉通りを滑走した。どの通りも、車はおろか、人影さえ見当たらない。路面はどこもかしこも、磨き込まれたガラスのように、ピカピカだ。何も遠慮はいらない。街は完全に、二人だけのものだった。

 いいかげん滑り疲れた二人は、けやき通りの角に戻ると、息を切らせながら舗道に上がった。とたんに体がずっしりと重くなった。

舗道もまた、物音一つせず、静か過ぎるほど静かだ。ケヤキの木たちですら、今は揺れておらず、静かに立ち尽くしている。

「それにしても、この氷は、どうして冷たくないんだろう。しかも、いつまでたっても溶けないな」

 コウタが不思議そうに道路に目をやった。すると亮平が、にやりとした。

「大切なのは、考えるより、実際にやってみることだよ。舐めてみればわかるさ」

 コウタは、からかわれているのだろうと、怪しみながらも、道路に膝をついて、キラキラに光る路面に顔を近づけてみた。すると、微かに甘い香りがするではないか。コウタは、思い切って、路面をそっと舐めてみた。

「本当に甘い」

 コウタは立ち上がって、亮平の方を振り返った。

 ほら見たことかと、亮平が満足そうに笑った。路面は、間違いなく氷砂糖でできている。しかも、ほんのり、イチゴの味がする。

「おれなんか、とっくの昔に、あちこち舐めて確かめたよ。このけやき通りはイチゴ味、南北通りはバニラ味だった。けやき通りの裏にある路地は、酢こんぶみたいな味がしたな」

 亮平の好奇心には、本当に感心させられる。コウタは、路面をあちらこちら舐めて歩く、亮平の姿を想像し、独り苦笑した。

 その時、南北通りの北の方角から、誰かが颯爽と滑っている姿が、チラリと見えた。それは、翔だった。青い縦縞のパジャマを着て、機嫌よく軽快に滑っている。しかし、翔はコウタたちに気づかず、二つ先の角を曲がり、あっという間に見えなくなった。

「あいつ、いつになく、ご機嫌だな」

 亮平のひねた言い方に、今度はコウタがにやりとした。

「そうだね、いつもクールな翔にしては、珍しいな。だけど、ヴァイオリン弾きのお坊ちゃんも、やっぱりパジャマにサンダルだったね」

 二人は顔を見合わせて笑った。

 翔の姿が見えなくなると、再び通りは恐ろしいほど静まり返った。気のせいか、前より空気がピリッとする。冷えてきたのだろうか。それに、周囲の風景も、さっきよりずっと、色あせて見える。古くなった写真のごとく、時間が経てば経つほど、どんどん色が抜けボロボロになっていく。

「なんか、こう、さっきとは感じが違っているな」

亮平の顔から、余裕のある笑いが消えていた。亮平もこの変化に、気づいたのだろう。

「うん、道路の氷砂糖も、さっきより暗くなった気がする」

コウタは、外に出始めの頃ほど、楽しいと思えない自分にも気がついた。あたりの静寂も、今ではむしろ、少しばかり不気味にすら思える。

その静けさを打ち破るように、今度は、けやき通りの先から、少女たちのにぎやかな笑い声が響いてきた。とても楽しげで、弾んだ声だ。

その声に続き、すぐさま声の主たちが姿を現した。コウタたちに気づいているかどうかはわからないが、こちらの方へ向かって来ている。少女たちは何故か、ぼんやりとした緑色の塊に見える。目がおかしくなったのだろうか。

コウタが口にするより早く、亮平が騒ぎ出した。

「うえっ、変な緑の霧がかかっているけど、あれは綾香たちだよ。行ってみよう」

 二人はけやき通りの先の方へ滑っていった。少女たちもこちらへ向かって来たので、通りの途中で対面した。が、そこにたどり着く前に、コウタたちは、あ然として、思わず足が止まってしまった。亮平は驚き過ぎて、桃柄のパジャマを隠すのすら、すっかり忘れている。

 緑の塊と思えたのは、やはり同じクラスの綾香たち四人の少女だった。

それにしても、信じがたい光景だ。四人の少女は、エメラルド色の炎に包まれ、四人が一体となって、メラメラと燃えているのだ。エメラルドの炎は美しい微光を周囲に放ち、舗道の木々をさえ、緑色に染めている。

それなのに、自分たちの身に起きている事態に気づかないのか、四人は、楽しそうに話をしながら足早に歩いている。とても非常事態には見えない。

 コウタたちは、どう判断していいのかわからず、戸惑った。

 すると、綾香が、舗道に突っ立っているコウタたちに気がついた。

 綾香がコウタたちに向かって、緑の炎の中で手を軽く挙げ、しゃべっている。ところが、声は聞き取れず、口がパクパク開閉するのが、見えただけだった。他の三人の少女もコウタたちに気がつき、それぞれが声をかけた様子だが、やはり声は聞こえない。

その時、それは起こった。

氷砂糖の通りの下から、突然、強い光の帯がせり上がり、あたり一面が、瞬時に黄金色に染まった。あまりの眩しさに、コウタたちは顔の前に腕をかざした。

その小道ほどの幅がある光の帯は、下から道路を突き破ると、頭上高く噴き上がった。背の高いけやきの枝を難なく越え、光の長い帯は、くねくねと宙を舞った。壮大な乱舞だ。黄金の帯は何度か大きく身をよじると、くるりと向きを変え、上から覆い被さるようにして、四人の少女を包み込んだ。

黄金の光は、綾香たち四人を呑み込むと、そのまま地下へ、潜り込んでしまった。コウタと亮平はあたふたしながら、舗道の奥にある建物の壁際へと退却した。

綾香たちは、あっという間に、光の化け物に吞み込まれてしまった。大蛇を思わせる、あの光の帯は、何なのだろう。コウタの体は、激しく打ちつける心臓に伴って、大きく揺れ動いていた。

ただ、光の帯が地下へ潜り込む直前、コウタは、綾香と一瞬だけ目が合った。綾香の顔は喜びに輝いている。いったい、何が起こったのだろう。

まだ心臓がドキドキしていたが、コウタと亮平は、道路の脇から恐る恐る下を覗き込んでみた。すると地下には、上を走る道路と並行して、金色の川が流れているではないか。今さっき、地上にせり上がった、あの光の帯だ。綾香たちの笑い声が、ずっと深いところから響いている。

二人は、目を合わせたが、言葉がでなかった。どう考えていいのか、ますますわからない。

 黄金の川は、地下で上下左右、自由自在に、大きく、小さくうねり、そのたびに光が脈打って、あたりに光の粉を撒き散らしている。

黄金流の中には、赤や青、黄色や紫色をした、小さな光がたくさん動き廻っている。よく見るとそれは、魚たちの目の色だった。宝石の目を持つ魚たちが、黄金の川の中を、悠々と泳いでいるのだ。そして、その魚たちと共に、綾香たち四人も、楽しそうに泳いでいるではないか。

なんて、素晴らしい川なんだろう。コウタは先ほどの恐怖も吹き飛び、今や強烈な憧れで一杯になった。その魚たちと一緒に、自分も泳いでみたい。金色の光に包まれて、この魚たちと泳げたら、どんなに幸せだろう。

亮平もうっとりした顔で、地下に広がる素晴らしい世界を見つめている。

コウタと亮平は、地下の川に飛び込みそうな勢いで、身を乗り出し、道路に顔を張りつけていた。

しかし悲しいかな、黄金の川は少しずつ地下深くに沈んでいき、コウタたちからどんどん遠ざかっていく。二人は未練がましく、最後の最後まで光の川を見るため、路面に顔を押しつけた。光の川は、弱々しい輝きの余韻を残して、地下の暗闇に溶け込もうとしている。残った煌めきと共に、綾香の声が下から微かに響いてきた。

(…急がないと間に合わないよ。水曜亭はこの先、けやき通りの外れにあるから、四人一組で一緒に行って…)

 コウタと亮平は、互いに顔を見合わせた。亮平にも、綾香の声が届いていたようだ。

 綾香の声は更に小さくなり、最後の方はよく聞き取れないまま、地下に吞み込まれていった。

やがて、底に沈んだ黄金の川も、最後に小さくうねり、わずかに煌めくと、それきり姿が見えなくなった。

 気がつくと、静かな、いつもの通りに戻っていた。コウタたちは、冷たい道路からようやく顔を離し、舗道へと戻った。あたりはますます冷えて、吐く息が白くなってきた。

すっかり、取り残された気分のコウタたちは、しばし立ちすくんでいたが、落ち着きを取り戻した。

「まあ、つまり、この先にある水曜亭へ、四人で行けってことだな」コウタは、ここで思案に暮れた。「四人か。ふらふら滑っている翔を捕まえるにしても、あと一人はどうしよう」

 亮平が、パジャマの袖で目をこすりながら、こもった声でつぶやいた。

「翔か。あんまり気が進まないけど、この際、贅沢は言っていられないな。だけど、残りの一人は、絶望的だぞ」

「どうして?」とコウタ。

 亮平は渋い顔で言った。

「だっておれたち、あれだけ滑り廻っても、出会ったのは、翔だけだろう?もうみんな、とっくに行っちゃったんだよ。うちのクラスは全員で三十五人だから、四人組を作ると、三人だけ余る計算になる。それが、おれたちだ」

 コウタは、うなった。確かに、亮平の言う通り、この広い街で出会ったのは、地下に消えた綾香たち四人組を除いて、翔だけだ。しかも、その翔も、今はどこにいるのかわからない。

コウタは気を取り直して、道路へ降りていった。

「ここで待っていても仕方がない。翔と、四人目を探しに行こう」

二人は、注意深くあたりを見廻し、けやき通りの角へと滑りながら、戻っていった。

 その時、けやき通りと交差する、大通りの北の方向から、誰かが滑って来るのが見えた。見覚えのある、背の高い少年は、翔だった。そして、翔のま後ろには、背の低い少年が、翔にピッタリくっついて滑っている。

二人は、大通りの広い道路をゆっくり滑りながら、コウタたちの方へとやって来た。

「おおい」

 翔はコウタたちを見つけると、遠くから大きく手を振った。

一緒に連れている少年は、コウタたちと同い年ぐらいだ。しかし、その顔に、見覚えはない。少なくともコウタは、その少年を知らなかった。

少年は、灰色の古くさい、だぶだぶのパジャマを着て、変わった形のサンダルを履いている。真面目そうだが、どう見てもスケートは得意ではなく、翔の後ろをどうにかくっついて来た様子だ。

体は妙に細く、関節は節くれだっている。そのせいか、尖った肘や膝が、だぶだぶのパジャマの上からでも、見て取れる。一番目立ったのは、その青白い顔色だ。とても健康な顔色には見えない。細く柔らかい前髪の下には、血色の悪い幼い顔が隠れている。ぶ厚いメガネの奥に引っ込んだ小さな目は、コウタが街でよく見かける、仕事や人生に疲れ切った、大人のそれだ。

 亮平が肘でコウタを突いて、耳打ちした。

「あれ、誰かな?知らない奴だ。ああ、いや、どこかで会ったかな?隣町の奴だったかな、ええと…」

 亮平の自信なげな声が、コウタを更に困惑させた。知らない少年のはずなのに、コウタもまた、どこかで見た気がしてならないのだ。

「ああ、知らない子だと思うけど…たぶん、でも…」

 そうしているうちに、翔と少年は、コウタたちの元へ到着した。コウタは間近で少年を見たが、やはり知らない少年だ。翔はあちらこちらを滑り廻ったせいか、顔にうっすらと汗をかいている。

「やあ、もう誰もいないかと焦っていたよ。と思ったら、途中でばったり、オー君に会ってね。そして、今、君たちにも出会って、ほっとしたところだ。聞いたよ。四人一組じゃないと、水曜亭に行けないんだってね。まあ、これでめでたく、四人そろったな」

 興奮して一方的にしゃべる翔に、コウタと亮平は、複雑な顔をしたまま突っ立っていた。

「オー君?」

 コウタと亮平はほぼ同時に、頼りなげな声を上げ、メガネの少年をじろじろと見つめた。翔は、そんな二人の様子を怪しみ、コウタと亮平の顔を、いぶかしげに、見比べながら言った。

「なんだい?このとおり、正真正銘のオー君だよ。本人を目の前にして、まさかオー君を知らないなんて、言わないよな?」

 それでも、曖昧な態度を取る二人に、翔は心底呆れた顔に変わった。

 だが、翔になんと言われても、本当に、このオー君なる少年を知らないのだ。いくら思い出そうとしても、オー君の顔に見覚えがない。

コウタたちの学校はそう大きくはないので、クラスメートはもちろん、学校中の生徒の顔くらいなら、全員知っている。そこに、オー君はいない。もちろん、近所の子どもや親戚の子どもでもない。

コウタは一瞬、翔がからかっているのかと思ったが、翔の呆れ返った態度は、決してそうではないことを物語っている。

オー君と呼ばれた少年は、口を開きかけたが、結局、何も言わずにいた。居心地悪さを耐え忍んでいるのか、メガネの奥から、じっと成り行きを見守っている。

四人の間に、気まずい沈黙が流れた。翔はついに苛立ち、顔つきが険しくなった。

「おいおい、二人ともいい加減にしてくれないか。二学期が始まる時に、転校生が一人、やって来ただろう?その時は、コウタはオー君と同じ班になったじゃないか。それに運動会では、亮平はオー君と一緒に組んで、障害物競走に出たのを忘れたのか?あんな派手に転んでおいて」

 コウタの頭の中で、風船がパチンと弾ける音がした。翔が声を荒げたせいかもしれない。コウタは急に、記憶がどっとあふれ出てくるのを感じた。

そうだ、二学期の始まったその日、小柄で真面目そうな転校生が、自分の斜め後ろの席に座った。彼はソロバンが得意で、いつだったか、ソロバンを教えてくれたことがあった。体は弱いので、走るのが遅く、先生によく怒られていた…次から次へと堰を切って、ものすごい勢いで記憶がよみがえってきた。

「オー君!」

 コウタが思わず口走った。

「オー君、そうだ、オー君だ、オー君だ!」

 亮平もほぼ同時に叫んだ。

すると、オー君の青白かった顔色に、さっと血の気が戻った。

「ああ、よかった。思い出してくれたんだね。忘れられたままだったら、どうしようかと、本気で悩んだよ」

 すっかり笑顔になったオー君に、コウタと亮平は照れながら謝った。翔だけがまだ、むっつりとしている。

「まったく、二人ともどうかしているよ。クラスメートを忘れるなんて」

「ごめん。僕ら、本当にどうかしていたんだ。この見慣れない風景のせいで、おかしくなったのかもしれないな。それにほら、僕ら全員、普段とは違う格好しているからさ…」

 コウタは言い訳をしながら、自分の着ているパジャマに視線を移した。すると、三人もそれぞれ、自分の着ているパジャマに見入り、自分たちが、普段とは違う状態なのを、改めて思い出した。

初冬のま夜中に、パジャマ姿でサンダル履き。しかも、その格好のまま道路を滑っているのだ。

すると翔が、亮平の着ている桃柄のパジャマに気づき、大げさに吹き出した。

「亮平、なんだい、それ。おまえ、いつも女物を着て寝ているのか?まあ、おまえにはお似合いだけどな」

 亮平の顔がみるみる、こわばった。それから全身の血が頭に昇り、たちまち顔がまっ赤に染まった。しかし亮平は言い返さず、口を固く結ぶと、ほぼ直角にきゅっと横を向いた。たいして悪気があったわけではないが、亮平の心を傷つけたことに、翔は微塵も気づいていない。

コウタが代わりに言い返そうとした時、オー君がかけているメガネを少しずらし、メガネの底から目を輝かせた。

「桃柄のパジャマって、着ると夢が叶うって話を、昔、婆ちゃんから聞いたよ。特に、黄色く大きな桃は、金運がよくて、大金持ちになれるんだってさ」

 オー君の無邪気な声で、気まずい空気がたちまち一掃された。意外な話を耳にした亮平は、見るからに嬉しそうな顔に変わった。

「へーえ、それなら、みんなに笑われてもいいや。だって、大金持ちになった方がずっと、得だもんね」

オー君につられて、コウタも笑った。すると、翔の口もとも、少しだけ緩んだ。

ややあって、四人はぶるっと身震いし、改めて周囲を見廻した。

「なんか、えらく冷えてきたな」と、翔。

オー君は、両手を合わせてさすり、暖かい息を吹きかけていた。

 確かに、あたりはますます冷え込み、パジャマ姿の四人は、その場にじっと立っているのさえ、辛くなってきた。

いつの間にか、周りの風景は、ほとんど色を失い、寂しげな街並みになっている。ケヤキの木々も、緑の葉は生い茂っているものの、どこか不自然で造花のように硬そうだ。枝や葉が揺れると、キシキシと嫌な音をたてていた。冷たく不吉な風も、どこからか吹きこんで来る。

キキョケ、キキョケ、キキョキキョキキョケ…

 四人の頭上から、奇妙な鳴き声が響いてきた。鳥の鳴き声には違いないが、見上げても、おい茂ったケヤキの葉以外は、何も見えない。

「何だろう…」

 オー君が不安そうにメガネをかけ直し、鳴き声の主を探した。

すると翔が、右上に大きくせり出しているケヤキの枝を指さしてみせた。

「あれは、夜鳴鳥(よなきどり)だよ。きっとおれたちに早く行けって、言っているんだ」

 そう言われた三人は、首が痛くなるほど顔を上げて探してみた。

「翔、何も見えないよ。それに、夜鳴鳥(よなきどり)なんて名前の鳥、聞いたこともないけど」

 コウタたちが不思議がると、翔は、よく知られた昔話のごとく、すらすらと語り出した。

「夜中じゅう、太陽を追いかけ、東へ向かっている鳥なんだ。だけど、太陽には決して追いつけない。だから、夜の世界から永遠に出られないのさ。で、彼らは、夜に溶け込んでいるから、普段、姿は見えないんだ。夜明けの女神に出会うと呪いが解かれ、結晶して、その姿が現れるんだよ」

 コウタも亮平も目を丸くしたまま、穴の開くほど、翔の顔を見つめた。なんと答えていいのか、わからなかったのだ。

「それ、翔の作った空想話なの?」亮平が思わず本音をぶつけた。

 翔はむっとして亮平をにらんだが、すぐさまオー君が間に入った。

「空想なんかじゃないよ。翔は、この不思議な世界に詳しいんだ」

 オー君だけが、尊敬のまなざしだ。そう言われた翔は、照れもせずに、急に黙り込むと、じっと考え始めた。

亮平は、ついさっき、バカにされたのも忘れ、翔に答えを求めた。

「不思議な世界?だって、ここは、おれたちの街じゃないか」

 すると、翔が、真剣な表情でぼそぼそと言った。

「おれたちの街にそっくりに見えるけど、ここはまったく別の世界だよ。道路や建物、眠っている大人たちでさえ、本物じゃないんだ。もちろん、ただの夢ではないけれど、本物じゃない」

「夢の中でもなければ、本物の世界でもない?じゃあ、ここは、どこだって言うんだい?」今度は、コウタが少し声を荒げた。

 翔は、考え込むのを放棄したのか、深いため息をついた。

「答えたいけど、おれにだってわからないよ。わからないんだ」

 翔の答えに、コウタは少し苛立った。夢でも本当でもない世界なんて、あるわけがない。そんな話は、幽霊が出たとか、UFOを見たとか、宇宙人と遭遇したとか、そんな類のものにしか、思えない。なのに、翔は、いつもにも増して、キッパリと言ってのけたのだ。

「そんなの、信じられるか」亮平が陰でこっそりささやいた。

 コウタは、自分が感じている疑問を更に投げかけた。

「じゃあ、君の空想でないなら、この不思議な世界について詳しいのは、何故なんだい?」

 翔は初めて、たじろいだ。コウタは初めて、翔の困った顔を見た。翔は、頭に手を持っていくと、自分の髪の毛をぐしゃっと、一つかみした。

「ああ、その疑問に答えるのは、もっと難しいや。どうして、知っているのか、自分だってわからないんだから。自分の空想じゃないって言える自信はあるけど、本で読んだ記憶もないし、映画で見た記憶もない。誰かに話を聞いた気もするけれど、それが誰なのか、全然思い出せない。なのに、今夜この世界に入った瞬間、おれはもう知っていたんだよ。いや、知っていたのを思い出したんだ」

 少しの沈黙の後、コウタは突き放すように言った。

「それじゃあ、答えになってないよ。君の空想じゃないって証拠が何もないじゃないか」

 いつもの翔なら、ここで、コウタに食ってかかっただろう。コウタは反撃を予想していたが、意外にも、翔は、反論もせず黙ったままでいる。そのため、ことさら気まずくなり、四人はそろって沈黙してしまった。

コウタは、翔は正直に話していると思いつつ、一方では、どこか腑に落ちなかった。もしかしたら、翔は重大な秘密を隠しているのではないか。そんな風にも感じたのだ。とはいえ、こんなわけもわからない状況で、自分たちをわざわざ騙すなんて、考えたくもない。

「あの、そろそろ…」

 キキョケ、キキョケ、キキョキキョキキョケ…

 オー君が言いかけた時、翔の言う夜鳴鳥(よなきどり)が、またうるさく鳴き始めた。今度はさっきよりも、鋭く力強い鳴き声だ。すると、どこからか、冷たくぞっとする風が、吹き込んできた。四人は、あまりの寒さに震え上がった。

「うわっ、おれたち、のんびり立ち話している場合じゃないよ。早く、その水曜亭に行かなくちゃ」

 亮平が、急に慌て出した。

 四人はそそくさと舗道を降りて、ほとんど横一列になると、けやき通りの道路を無言で滑り出した。風を切って進んで行くと、頬や耳がたちまち冷たくなった。けやき通りをどこまで行っても、ビルや家々のドアはぴったり閉じられ、灰色の壁が立ち並び、暗さと静けさに閉ざされている。

その中で動いているのは、白い息を吐く四人だけだった。その証のように、滑っているサンダルの音だけが、シャーシャーと響いてくる。聞こえるが、その音すら、冷たい静寂の中に次々と吸い込まれていく。

 すると、暗く沈んだ通りの先に、ケタ違いに明るい一角が、目に飛び込んできた。けやき通りが公園通りと交わる、交差点のまん前だ。四人は一言も交わさないまま、夢中でその光を目指した。

 四人は、進むしかなかった。背後から、横から、上から、あらゆる方向から、闇と寒さが四人に迫っている。誰も言わないが、恐ろしい気配を、四人は背中で感じ取っていた。後ろを振り向くのすら、恐ろしくてできないでいる。

だから、たとえ通りの先に見えるあれが、水曜亭でなくても、四人は明るさと温かさを求めて、そこへ吸い寄せられていっただろう。

より近づくにつれて、光の正体が明らかになっていった。明るい一角は、一軒の店だ。店の内外には、結構な数の人影がチラチラと動いている。喫茶店か、レストランだろうか。

ここまで来ると、四人はほっとした。自分たちは、背後から迫る闇の中にいるのではなく、前から差し込んでくる明るい光の中にいるのだと、強く感じたからだ。心なしか、少し暖かくなった気もする。

だが、あそこに、店なんてなかったはずだ。コウタはひとり冷静に、記憶を探っていた。あの場所には、確か、小さな交番があって、左右は公園の森だったはずだ。その交番は、どこにも見当たらない。交番がいつの間に、大繁盛の店になったんだろう。

「喫茶店か?いや、居酒屋かな?ううん、ちょっと違うな」

 興奮気味につぶやく亮平に、翔が真面目な顔で答えた。

「何ものでもないよ。あれこそ、おれたちの目ざしている水曜亭さ」


<登場人物>

コウタ: 主人公。11才の少年。冷静であまり特徴がないが、意外と情熱を内に秘めている

亮平: コウタの親友。大家族で、早とちりだが、柔軟で憎めない性格

翔: 少し尖った一匹狼風のクラスメート。亮平とは反りが合わず、コウタを若干ライバル視。

   自分でも驚いたが、何故かこの世界のことをよく知っている

オー君: 謎の少年。おとなしく地味な性格。メガネをかけている。

綾香: クラスメート。落ち着いている、裏リーダー的存在

夜鳴鳥: 姿の見えない不思議な鳥。コウタたちを導いているようだが、不明。

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