薄っぺら
私は足りてなかったらしい。
今日初めて本物の厚みを見た。
その人の厚みはこのノートよりも断然大きくて。何だか負けた気持ちもどうでも良くなってしまった。
今日はその人について書こうかな。
その人はお父様の秘密の世界に産まれて、その中で戦災孤児として育ったらしい。その後は頼れる所がなくてスラム……というより変に身分を晒せない人の受け皿の街で育ったらしい。
この後が面白かった。
その人は貴族?の産まれでこの子以外を残して全滅。その後どうせその人も死んだだろうという事で親戚による泥沼が始まった。
そこで出会ったのがその人の人生のヒロインだった。そのヒロインは跡目争いの参加者の一人で、自身の勝利の為に何とか似ている人を探し当て、舞台に上がらせて、摂政として支配しようとしていた。
しかし途中で逆立ちしても勝てない奴が出てきて負けてしまった。
しかし、そこで奇跡の出会いを果たす。
負けてしまった相手はその人の弟であり、ずっとその人の居場所であり続けようとしたらしい。
そしてその弟が兄に当主の座を譲ろうかという時に、その人は断ってしまった。
初めはヒロインとのんびりやれていたが、途中からでのんびりなど出来なくなったらしい。その人は一人で育った街に戻り、そこで情報屋としてのんびりと生きているらしい。
またさらに事件が起こり続けて……
あれ?その人の事が捻じ曲がっちゃった。
途中から存在もしていなかった人が干渉するようになった。
その人はめちゃくちゃな情報を持ち込んで彼の人生をめちゃくちゃにし始めたらしい。
ええ、ええこの人の厚みがまた増えるんだ。歴史に『既定の歴史を捻じ曲げられた人』としてのるんだ。
何と素晴らしい。私はもっと厚みを増したあなたが見たい。
あなたの好きなものは何なのかしら、嫌いなものは?あなたの憧れは?人生設計は?もっと教えてもっと晒して、それを貴方の歴史として残してあげる。
あなたの道に残るのはとっても素晴らしい記録。
もっともっと、性的嗜好を血液型を、もし変異するならそれはどんな格好をしているのか。
ヒロインの歴史は?敵の歴史は?知りたい。分かりたい。憧れを満たしたい。
教えて?見ていてあげるから。もしあなたの全部を知った時。私があなたに祝福をあげる。
そしてかなわくば、その歴史を持ってしてどんなことをしても勝てない素晴らしい人間と出会って、踏み潰されて、もっともっと美しい歴史を増やして……そして、私に会いにきて?
〜???〜
最近、お嬢様が第二世界に入り浸っている。
それ自体に問題はない。
むしろお父上の世界を知り、歴史を学ぶ事は歓迎すべきだ。
しかし最近になってかの世界に問題が発生した。
何重のセーフティに守られている観察を是とした世界だから良いものの。
エネルギーの状態と性質の変化などなかなか異質な力だった。
そんな事は今はいい。問題はお嬢様が恍惚の表情をしている事だ。彼女の父上に知られて問題が……
いや、問題なんてなかったのだったな。
あの方の歪な精神構造にはため息がつく。
何十年も前に見たアニメを思い出させる。
そして今日ついに目に余り、調べてみた結果がこれか。
『性的嗜好を血液型を、もし変異するならそれはどんな格好をしているのか。
ヒロインの歴史は?敵の歴史は?知りたい。分かりたい。憧れを満たしたい。』
これはまさに精神異常者の様だ。
何故、こんな事になってしまったのか。
その原因を探った結果こんな言葉を見つけた。
『どうやら私の事を私は、どうでもいいと思っているらしい。そして私がとても薄いんだろう。』
劣等感と誰かに見られたいという憧れが伝わってしまう。
こんなことをしたのは誰か。そんなのはどうせすぐ答えがつく。
私達が父の子供としか見ていなかったこと。
そして彼女の父親が愛を注がなかったこと。
この二つが原因だろう。
言い訳する事はできない。これをもう一人に話す事もできない。今更遅いのだ。
1ページ目の言葉の後、日付を律儀に書いていた。
そして今回の日付は今日。2ページ目
五ヶ月以上待ってそれが今日だ。
きっと、何をやってももう遅いのだろう。
ああ、しっかりと彼女を見ていれば。
私は基本的に分からない事は書けません女の子の精神描写とか特にです。なので私は女性全般を狂人として書いています。