永夜異変編#1
あの日の空は満天の星空で、そこにはきれいな満月が幻想郷を見下ろすように佇んでいた。
ある日の夜、崖に白髪の髪を束ねた一人の女性が立っていた。その女性は弓を引いて、月に向かって矢を放った。
一方、浜辺では二人の姿が瓜二つの男が見合っていた。
一人は、名を「ブレイズ・D・ガスター」といい、髪が赤色でフードをかぶっており、鎌を構えている。
もう一人は、名を「シャドウ・D・ガスター」といい、髪が青色で右目に傷跡があり、刀を構えている。
するとブレイズが髪を茶色に変色し、鎌をブレスレットに変形させて右腕に収めた。
「なあ、もうやめにしないか、もう日が落ちたからよ。」
「ったくまだ俺はやれるぞ。」
シャドウは少し疲れた表情をした後、ブレイズと同じように髪が茶色に変色した。
「お前、最近戦える時間短くなってきてないか?」
「そうか?」
「そうなんだよ!だってこの前は数十時間戦えてたのに今日は一時間だぞ!」とシャドウは声を荒げた。
「ストレスってやつか?」
「それもだが、しばらく休んだ方がいいぞ。」
「お前が『修行したい』っていうから休めねぇんだろうが!」
ブレイズが嫌味気味に反論する。
シャドウは呆れた表情をしながら「はぁ~とりあえず帰るぞ。」と言った。
ブレイズが「ああ。」と返事をすると、上空に一筋の閃光が走った。
ブレイズがそれに驚いていると、シャドウが振り返って「どうしたんだ?」と尋ねる。
ブレイズが「いや、何でもない。」と答えると、二人はその場を後にした。
二人は帰宅した後、各々の部屋に戻ったのだが、ブレイズは床に就いたとたん、浜辺で見た閃光のことが気になり出した。
「(さっきの光は何だったんだ...。月に向かっていたような気がするが。)」
「ああ!考えても仕方ねぇ!」
とブレイズが悩んでいたことが一気に吹っ切れたように言った。
「とりあえず明日あそこの近辺を探索してみるか。」
そうつぶやいた後、ブレイズは静かに体の向きを変えて瞼を閉じた。そして、事前にセットしておいたアラームが鳴り始めた。
「ん?もう朝か...」
何時間たったのだろうか...いいや、自分が寝てからほんの数秒しかたっていない。
「んなわけねぇだろ!寝始めてから数秒だぞ!数秒!絶対」
ブレイズが声を荒げてツッコミながら飛び起きた。
「絶対あの光が原因だ。とにかくあいつらを起こしに行くか...」
ブレイズは部屋から出て、一緒に住んでいる仲間たちを起こしに行った。
ブレイズは弟のシャドウと居候で金髪の少女、白夜・ザ・シルバーを居間に呼び、事情を説明した。
「なるほど、そんなことがあったんだ。」
「それならそうとあの時に言えばよかっただろ。」
「お前はこんな話をしてもまともに聞きやしねぇじゃねぇか。」
ブレイズが眉間にしわを寄せながらシャドウに言った。
「主たちが修行してたのってあの浜辺だよね?」
白夜が二人に問い、ブレイズが「ああ。」と答えると
「じゃあ迷いの竹林じゃないかな。」と白夜が淡々と口にした。
ブレイズとシャドウがピンと来ていない表情で「迷いの竹林?」と聞き返した。
白夜が「うん。」とうなずき、シャドウが「そんなものがあそこにあったのか。」と自分の記憶をたどりながら言うと、
「チルノちゃんたちに聞いたんだけどね、そこには「永遠亭」っていう病院があるんだって。」
ブレイズは「病院」という単語を聞いたとたん、自分のほかにも医者がいるのかと思い、口の端を釣り上げた。
「そこで俺の知らない医学を扱ってたらいいな。」
「なんか段々目的が反れて行ってないか?」
シャドウが的確にツッコミを入れる
「でも、迷いの竹林って言うんだから、結構道が入り組んでるんだろ?誰か迷いの竹林に詳しい奴はいねぇのかよ。」
「確か寺子屋の慧音先生っていう人がいるらしいよ。」
白夜が人差し指を顎にあてて言うと、ブレイズが立ち上がって
「よっしゃ!とりあえずその慧音ってやつに話を聞きに行くぞ!」
と言って部屋から出て行った。
「ったく長年あいつと一緒に生きてきたが、いまいちペースがつかめないんだよな」
とシャドウが愚痴をこぼすと、白夜が「ははは」と苦笑いをした。
時間はもう8時を過ぎているというのに、町は真夜中同然の暗さだ。
ブレイズは慧音がいる寺子屋の前に着くと
「なあ!慧音ってやつ居るかあ?」と大声で叫んだ。
すると、寺子屋の玄関から青のメッシュが入った銀髪で頭には頂に赤いリボンが付いている青い帽子をかぶっている女性、上白沢慧音が出てきた。
「こんな夜遅くに何の用ですか?」といかにも寝起きの声で慧音が言った。
「夜遅くじゃねぇ!もう朝なんだよ!」
「酔っ払いならここでぶっ飛ばしますけど。」
「だったら自分の時計を見てみろ。」
ブレイズが慧音が持っている腕時計を指さす。
慧音がふと腕時計に視線を落とすと、腕時計が示している時間に驚愕した。
「8時半?!」
「だから言っただろ?」
ブレイズが呆れ気味に言うと
「あの子たち...遅刻するなんていい度胸ね。」
と慧音が教え子たちの遅刻に対して怒り、指の骨を鳴らした。
「そんなことより迷いの竹林について教えてくれ。」
ブレイズが慧音のことなんてお構いなしに聞くと
「それならやめておきなさい。こんな真っ暗な時にあそこに行くなんて自殺行為よ。」
と慧音が警告した。
それを聞いたブレイズは笑みを浮かべて
「そんなに迷いやすい森なら、俺が初めて永遠亭に行った男になってやる。」と言い張った。
慧音は目の前の知らない男からこぼれた「永遠亭」という言葉に反応して、
「今、永遠亭に行くって言ったの?」と驚いた顔でブレイズに尋ねた。
「ああ、そうだが。」とブレイズが答えると
「なら私が迷いの竹林の入口まで案内してあげるわ。」
と慧音が堂々と言った。
「本当か?!」
「というか入口より先に案内人がいるって言った方がいいかしら。」
話が一段落着いたところで、ブレイズの後を追ってきたシャドウと白夜がようやく到着した。
「やっとついた...」
白夜が息を切らしながらボソッとつぶやいた。
「お前ら、こいつが迷いの竹林まで案内してくれるってよ。」
「よかったな。」
「とりあえずついてきなさい。」
慧音が迷いの竹林の方向に進み始めると、ブレイズたちも後に続いた。
YouTubeで同シリーズをゆっくり茶番として投稿してます。是非そちらの方もご視聴ください。
因みに、YouTubeと本作品は多少違う所がありますが、大筋は変わらないのであまり気にせずにご覧ください。