閑話 記憶
ほとんど全ての者が転移・転生した者だ。
稀に神により一から創造された者もいる。
有名なところだと『アダムとイヴ』だ。
転生者・転移者と言っても元いた時代の記憶があるモノはほとんどいない。
記憶はほとんどの場合『善行のオマケ』なのだ。
『だったら転生者に記憶がないのはおかしくないか?転生者は徳を積んだ者なのだろう?
だったら元いた時代の記憶ぐらいあっても当然だ』と考える者もいるだろう。
人間から人間に転生しないと前生の記憶が残る可能性はない。
例えば、前生で犬だった時の記憶がある者がいたとしよう。
そんな者が四つん這いで全裸でいるのを見た事があるか?
それに前生の記憶を望まない者も意外と多い。
『未来の記憶があったらつまらない。完全な違う人生をやり直したい』と。
『そんな聖人君子みたいなヤツがいるのかよ?未来の事がわかった方がお得じゃねーか!』と思う者は転生など出来ない。
転生者になるような人物は限りなく聖人君子に近い思想を持っているのだ。
そして転生者は絶対数が少ない。
転移者との比率にしたら、1:10000000000ぐらいだ。
記憶はないが養観院や光秀と同じ、令和から来た者がいる。
森可成の息子で織田信長の新しい小姓『森蘭丸』だ。
信長の元々の小姓と言えば利家や新介だった。
信長は『桶狭間の戦い』の前に自分の小姓達をクビにした。
『自分と付き合って犠牲になる事はない』と小姓達を逃がしたのだ。
それだけ『桶狭間の戦い』は絶望的だった。
しかし信長は奇跡的に『桶狭間の戦い』で勝利をおさめた。
信長は強大になり仕事も増えた。
なのに信長のサポートをする小姓が一人もいない。
信長がクビにしたのだから。
見かねた森可成が息子三人を小姓として差し出す。
『森蘭丸』『森力丸』『森坊丸』の三名だ。
その中の『森蘭丸』の前生が令和からの転生者なのだ。
でも記憶はないから当然「未来を変えたい」なんてこれっぽっちも思わない。
関係ないと言えば関係ないが『森蘭丸』の前生、いや『森川成利』の令和での生活、成利が命を落とす数年前を少し覗いてみよう。
成利は大学受験生、高校まではサッカーをやっていて全国大会へチームを導くぐらいの腕前だった。
しかし公立高校の限界というか、いくら成利が優れたサッカー選手でもサッカーは一人でやるものでもないし、強豪高校には歯が立たなかった。
結局、チームは全国大会二回戦で散る。
それまで、サッカーに全力投球していた成利は全国大会が終わった1月始め頃から、1月18日の共通テストに向けて猛勉強を始める。
行き当たりばったりではない。
前もって願書は出してあったのだ。
『元からそうするつもりだった』と。
貧しい家計を助けるために、新聞配達をしながらサッカーをやっていた。
「サッカーは高校まで」そう女手一つで自分を育ててくれた母親と約束をしていて「大学は国立しか受けない」と決めていた。
『何故、大学を受験するのか?』
冤罪で自殺に追い込まれた父親のような人間を二度と産み出さないように必ず自分は弁護士になる、と。
しかし今から勉強するのは流石に大変だ。
元々地頭は良い。
読解力は飛び抜けている。
数学もパズルみたいで好きだ、苦にならない。
勉強しなくても国語、英語、数学、古文、物理は出来る。
最大の課題は『日本史』だ。
とにかく丸暗記するしかない。
「えーと・・・1582年『本能寺の変』か。
織田信長が側室の養観院に裏切られて焼き討ちされた・・・と」
未来は無限に枝分かれする。
明智光秀が信長を焼き討ちした未来も存在する。
養観院が信長を焼き討ちした未来も存在する。
「番外編が並ぶのは変だ」という指摘を受けました。
そう言われれば、そうですねw
あんまり番外編を連投するのは控えます。




