表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/132

惚れ薬

 何故か記録、伝承、物語に限らず武士に仕える忍者は中京地区、東海地区に固まっている。

 有名なのは徳川に仕えた服部半蔵だろう。

 武田に仕えた猿飛佐助、北条に仕えた風魔小太郎、そして今川に仕えた藤林長門守もそうだ。

 藤林長門守は六角義賢に仕えた、という説もある。

 六角義賢の妾の中に『藤林』という者がおり、藤林長門守が妹を六角に嫁がせた、という言い伝えがあるからだ。

 実際には六角と藤林は『仲良くしていた』程度の関係だろう。

 六角が謀叛で危機の際には藤林が佐和山城攻略の立役者になった、という逸話が残っている。

 しかし忍者が城攻めでどれほど役に立つだろうか?

 この時の『藤林』の忍者が行ったのが『暗殺』と考えると色々と辻褄が合う。

 『藤林』の中忍『楯岡道順』の特技は狙撃であったという。

 道順には織田信長に対して『暗殺未遂』の記録が残っている。

 だから『要人の暗殺』を何件か行っていたとしても不思議はない。

 藤林は暗殺集団だったのかも知れない。

 

 藤林長門守には六角と交流が認められているが駿府に居住していた、という記録が存在している。

 その歴史資料に信憑性は高く、おそらく藤林長門守が今川義元の配下だったのだろう。


 藤林長門守については生年も没年も詳しくは不明だ。

 長門守の名は『保豊』、孫の『保正』の時代には徳川の家臣になっている。

 その後、藤林の名は歴史には登場しない。

ーーーーーーーーーーーーーー

 『天正伊賀の乱』に藤林の参戦の形跡がある。

 つまり藤林は『織田の敵』になるはずだったのだ。

 だが藤林が今川の配下を辞めた事でその未来は白紙に戻った。

 もしかしたら藤林が織田の配下になるかも知れないのだ。

 藤林長門守(以下保豊)が養観院に近付く。

 保豊には優れた忍としての素養がある。

 しかし能力が偏っている。

 レーダーチャートで能力を表すと尖っている、ピーキーなのだ。

 変装と暗殺には特化している。

 そして最も得意な事に『女をたらしこむ』というモノがある。

 養観院が何者かは保豊にはわからない。

 でも『たらしこんで自分の女にしてしまえば問題ない』と考えていた。


 「ここ大丈夫?」と保豊が僕の隣に腰をかける。

 僕はチビりそうになる。

 いきなりテロリストだと思ったヤツに話しかけられてみなよ。

 誰でもビビるから!

 「ダメですっ!

 僕は忙しいんですっ!」そこから僕は逃げ出そうとする。

 (何故この女には俺の術がかからない!?

 俺に夢中にならない女などいるわけがない。

 もしかして幼すぎるのか?)

 保豊は焦る。

 ターゲットの女を籠絡する。

 女を洗脳する。

 女にターゲットを殺させる。

 お決まりの暗殺方法だ。

 女にターゲットを殺させた後に女を殺す。

 証拠も何も残らない完璧な殺人だ。

 洗脳は捨て駒にする下忍にも行うので手慣れたモノだ。

 『誰が暗殺の指令を下したのかわからない』という仕事は二流の仕事だ。

 『暗殺である事に誰も気付かない』という仕事が一流なのだ。


 術なんてかかる訳がない。

 僕が男に惚れる事なんてあるわけないんだから。

 それにこのタイプの『自分の魅力はわかってますよー。俺って良い男でしょう?』って男は令和にいた時から死ぬ程嫌いだ。

 蕁麻疹(じんましん)が出る。 

 恐ろしい。

 チビりそうだ。

 でも堪らなくムカつく。

 存在が許せない。

 『ムカつき』が『恐怖』を越えた時・・・。

 僕は保豊にドロップキックをかましていた。

 しかし相手は忍術の天才。

 僕は保豊にドロップキックをしたつもりで、楯岡道順にドロップキックをしていた。

 「な、何で!?」と道順。

 少し考えてわかった。

 『変わり身の術』か。

 道順だって僕のドロップキックぐらいは躱せる。

 でも咄嗟に『ドロップキックの的』にされた時、意味がわからないでドロップキックを食らうしかない。

 でも普通『変わり身』って丸太とかじゃないの?

 いや、アニメとか漫画でしか見た事ないけどね。

ーーーーーーーーーーーー

 術はこの部屋にいる女にはかかるはずだ。

 そしてこの部屋にはこのガキしか女はいない。

 俺が術を使っているなんてここにいる男達にはバレないはずだ!

 香を増やすか。

 この香は微量なら『惚れ薬』の効果があるが、女が大量に嗅いだら体調を崩す・・・。

 保豊が『惚れ薬』を増やした瞬間、目の前の『足利義昭』がバッタリと倒れた。


 「い、いかん!養観院殿!

 義昭様を隣の部屋へお連れしろ!」と明智光秀。

 隣の部屋に担ぎ込むのはわかる。

 でも、何でそれが僕の役割なんだよ!?

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点]  養観院の中の人は元“男”だから精神的に男に魅力を感じない。      ↓  藤林は自分の術に自信があるから意地になって“籠絡香”を更に焚きしめる。      ↓  女人が養観院ひとりと思…
[良い点] おっ、念願のハーレム展開か?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ