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 「こんなについていて良いのか!?」

 松平元康は呟いた。

 元康は桶狭間の戦いで今川軍が逃げて空になった岡崎城へ入城する。

 その時、織田信長の軍勢も岡崎城には入っておらず『良くわかんないけど城GET!』という感じだった。

 それ以来元康は岡崎城を本拠地とする。

 で『武田の相手は任せた』と信長に言われて困っていたら武田が越後の長尾景虎と争いだした。

 武田は松平どころではない。

 それに武田と織田は険悪ではなくなった。

 対斎藤に全力を注ぎたい信長は養女を武田勝頼の正室として嫁がせたのだ。

 今川を見捨てて、今川の居城だった岡崎城を本拠地にした事で今川氏真と摩擦が多少生じたが、それ以上に今川は武田との同盟解消で四方を敵に囲まれたくはないので、室町将軍足利義輝の松平との和睦に応じた。

 今川と武田との仲はもう拗れるところまで拗れて修復不能だったのだ。

 今川は織田と婚姻関係を結んだ武田を許せないし、武田は『塩止め』を行った今川を許す気はない。

 海と面していない甲斐の武田は駿河から入って来る塩にかなりの部分を頼っていたのだ。

 元康は今川を捨てて、織田信長と同盟を結んだ事に不満を言う縁戚の松平一族をプチプチと潰して回るだけの簡単な仕事をこなした。

 こうして松平元康は三河をほぼ平定する。

 ・・・となれば、今川義元からもらった『元』の字が邪魔だ。

 だいたい元康は元服した時の『次郎三郎元信』という名前が嫌だった。

 だってバカみたいじゃん?

 『康』の字は残すとして『元』の代わりにどんな字を入れよう?

 そんな事を考えながら元康はご機嫌伺いに小牧山城を訪れていた。

 「おう、竹千代!

 よく来たな!」と信長。

 元康は子供の頃、織田家縁の『万松寺』で人質生活を送っており、信長とは旧知だった。

 信長は元康を子供の頃から『竹千代』と呼んで、弟分扱いしていた。

 しかし未だに元康を『竹千代』と呼ぶのは信長だけだ。

 ・・・それより信長の横で横になっている子供は何だろう?

 元康が横になっている子供を気にしていると信長に「コイツは気にするな。不貞腐れているだけだから」と言われた。

 そんな事言われても気になる・・・。

 「おい養観院、竹千代の前だ。

 もう少しシャンとしろ」と信長。

 「『竹千代』?」と養観院と呼ばれた女児は言うと、ムクリと上半身を起こしてこちらを見る。

 「やっぱり耳たぶ男か・・・」と女児は失礼な事を言うと再び横になった。

 「失礼な子供だな・・・」とは思うものの信長の前で寝転んでいる不遜な態度を見ると身分が高い子供なのかも知れない。

ーーーーーーーーーーーーー

 僕はコイツが誰かは知らない。

 でも五右衛門が『正成』とか言ってたヤツの親分である事は間違いない。

 ・・・って事はコイツの一味のせいで五右衛門は・・・。

 「おい養観院、さっきまでそんな態度じゃなかっただろ?」僕の大体の無礼な態度も笑って許してくれる信長も流石に困っている。

 関係無い信長には悪いとは思うけど、僕はコイツの前じゃ笑えない、行儀良く出来ない。

 「おじちゃんがお嬢ちゃんに何かしたかな?」と元康(みみたぶ)

 やったなんてモンじゃねえ!

 お前の部下が五右衛門をいじめてるんだろうが!

 ・・・まぁ八つ当たりか。

 元康(みみたぶ)は忍者とはあんまり関係してなさそうだ。

 元康(みみたぶ)の手下にしたヤツが忍者の血筋ってだけで。

 「な、何とか言って欲しいなぁ・・・。

 『はい』とか『いいえ』とか」

 そんな丁寧に返事する訳ねーだろ!

 僕はお前が嫌いなんだよ!

 理不尽な事を言っているのはわかってる。

 でも理屈じゃないんだよ!


 「お嬢ちゃんは儂の事が嫌いなのかな?」と元康。

 「イエス・・・」僕はわざと元康に伝わらないように英語で返事した。

 「『家』・・・何て?

 もう一度言ってくれるかな?」と元康。

 「イヤでやんす・・・」僕はボソッと小声で言う。

 「・・・『康』?

 あぁ、儂の名前を呼んだのか?」

 ちげーよバカ。

 何で僕が元康(みみたぶ)の名前を呼ばなきゃいかんのだ。

 僕は元康の言う事をシカトする。

 「『家』・・・『康』、『家康』!?

 お嬢ちゃんは儂を『家康』と呼んだのか!?

 元康ではなくて!?」

 コイツ、頭おかしいんじゃねーか?

 「どういう事だ?」と信長。

 「今川義元の臣下になった時、『元』の一字を名前に入れられたのです。

 今川義元と決別し信長様と同盟を結んだ今、名前から『元』の字を外そうと考えていたのですが代わりにどんな字を入れるべきなのか、悩んでいたのです。

 信長様より『信』の字をいただこうとも考えたのですが儂は元服した時既に『元信』と名乗っています。

 『信康』と名乗るのは儂の息子が元服した時に任せようと思います。

 それはともかく、そこのお嬢ちゃんが『家康と名乗れ』と」

 んな事言ってねーよ、勝手に人の意見を代弁すんな!

 でもわざわざ『違う』と弁明するのも面倒臭いから「はいはい家康、家康」と僕はテキトーに答えた。

 「『家康』か。

 良いではないか!

 では竹千代は今より『松平家康』と名乗るが良い!」と信長。

 「は!」と元康改め『家康』。

 ・・・って家康?

 コイツ家康なの?

 でもこの耳たぶオヤジは『松平家康』だし『徳川家康』じゃないよな。

 つーか、この時代のヤツら簡単に名前変えすぎだよ。

 当たり前のように名前がいくつもあるし。


 徳川家康が元康から家康と名乗ったのは誰もが知る有名な事だが、家康の『家』が何から取られたモノかは諸説あるが今も定かではない。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  んー、なんか歴史モノ分野ってより「コント戦国時代」か「大喜利養観院」なノリになってんのアレかもしんないけど「海星先生ワールドとは、そーいうモンだ」と覚悟してる分にはクスリと笑える平常運転…
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