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忠臣

 清洲城は様変わりした。

 プレハブ群がなくなっただけではない。

 お市様がいなくなっただけではない。

 あらゆる人々の役職が変わったのだ。

 小姓だった利家(ロリコン)は武将扱いになった。

 奉行だった日吉も武将扱いになった。

 『武将』になれば配下が出来る。

 城下の長屋でも住む家のレベルが上がる。

 『課長になって社宅の角部屋があてがわれる』みたいな感じだろう。

 日吉と利家(ロリコン)が同時に引っ越したら二人がどうやら『お隣さん』になったから嫌でも一緒にいる時間が増えたらしい。

 以前と比べて利家(ロリコン)が日吉と打ち解けている感じがする。

 何でも『妻同士が仲が良い』らしい。

 家族ぐるみの付き合い、って事か。

 僕がまつ様に会いに利家(ロリコン)の新居に行くとそこには見慣れぬ幼女がいた。

 テメー利家(ロリコン)、まつ様だけじゃ飽きたらず他の幼女にも手をだしやがったか!

 「逃げよう!

 利家(ロリコン)がここに来る前に!」

 僕は幼女の手を引いて逃げ出そうとする。

 僕と幼女が長屋から逃げ出そうとした時に利家(ロリコン)が玄関から帰ってきた。

 「ちくしょう!

 一足遅かったか!」

 「意味がわからん!

 藤吉郎の嫁さんををどこに連れて行くつもりなんだよ!?」

 利家(ロリコン)は日吉を藤吉郎と呼んでいるらしい。

 「あの日吉(ハムスター)もロリコンなのか!

 ロリコンは伝染するのか!?

 隣に住んでるからロリコンになったのか!?」

 「『ろりこん』・・・確か『嫁が若い』って意味だったか?

 そうだ、藤吉郎も『ろりこん』だ!

 しかし『はむすたー』というのはどういう意味だ?」

 鼠男って言うよりハムスターの方が愛嬌がある名前で良いじゃん。

 そんなことより・・・なんてこった!

 ロリコンは伝染する病気らしい。

 このパンデミックをここで食い止めるにはどうしたら良いんだ!?

 「何で深刻な顔してるんだ?」利家(ロリコン)が俺の顔を覗き込む。

 「近寄るな!

 伝染したらどうするんだ!?」

 利家(ロリコン)は『また養観院が訳のわからない事を言い始めた』と肩をすくめた。


 「貴女だ~れ?」と幼女。

 「誰と言われても・・・」僕は何て説明して良いか解らず口ごもる。

 「この子は『養観院』さん。

 私は『ようかんちゃん』って呼んでるわ」と娘を抱きあげながら現れたまつ様が言う。

 「『養雲院』?

 先生と同じ名前?」と幼女。

 「『養雲院』じゃなくて『養観院』よ」

 まつ様は振り返ると僕に言った。「ねねちゃんの読み書きの先生が養雲院様っていって信長様の姪御様なのよ」

 あぁ、そういや『養雲院の息子』を名乗る男の子が三島大社にいたな。

 清洲でその名前を聞くとは思わなかった。


 この幼女が藤吉郎の妻、ねねらしい。

 僕はこの時知らないけど、1549年生まれで、桶狭間の戦いが1560年で、あれから一年経っていないからMAXで考えても12歳だ。

 まつ様も大概ロリではあるが、ねねは見た目も実際の年齢もロリだし経産婦じゃない。

 僕は令和にいた時と合計した過ごした時間なら20年近い筈だし、令和なら成人年齢は18歳だから成人して数年経った大人だ。

 でも今の肉体年齢は知らない。

 ねねは年齢以上に幼く見える。

 僕は幼女を勝手に『10歳くらいだ』と考えていた。

 まつ様も妊娠したのは11歳だと言っていたし「10歳前後で嫁入りする事も戦国時代はあり得るのかな?」と。

 『ロリコンハムスターから幼女を守らなきゃ!』という訳のわからない義務感に僕は勝手に燃えた。

 「ねぇ『まつお姉ちゃん』、この子ってねねとどっちが年上?」と幼女。

 「わからないのよ。

 記憶がないらしいわ。

 だからようかんちゃんの年齢は推測するしかないのよ」とまつ様。

 「ふーん・・・きっとねねより一歳か二歳ぐらい年下かな?」

 僕は勝手にねねは『10歳ぐらいだ』と思っているので自分が『8歳くらいに見られた』とショックを受ける。

 実際、ねねは12歳ぐらいだから10歳ぐらいに見られたのだが。

 「ねねちゃんは同年代のお友達が欲しいのかも知れないけど、ようかんちゃんはそんなお姉ちゃんじゃないと思うわよ」とまつ様が笑いながら言う。

 そんなガキちゃうわ!

 いや、わからんけど。

 転移して再構築された身体の肉体年齢が何歳なのか知らんし。

 それとも本当にこの身体の肉体年齢はクソガキなのかな?

 あまりにもショックで僕は藤吉郎が秀吉だという事に気付かなかった。

 ヒントはいくらでもあったのに。


 「ねねがお邪魔しておるか?」

 中年男がひょっこりと顔を出す。

 誰だ?このオッサン。

 「あー!オジキー!」

 そう言うとねねはあぐらをかいたオッサンの膝の上に座った。

 ガキか!

 ・・・ガキなのか。

 「この方は『木下勘解由(きのしたかげゆ)』殿、ホラ荒子から清洲まで一緒だった『木下祐久』殿の兄上でねねさんの叔父上だ。

 勘解由殿は藤吉郎の配下だ」

 『藤吉郎』は既に呼び捨てなのか。

 いつの間にそんなに仲が良くなったんだよ?

 「藤吉郎さんの配下?

 信長様の配下じゃなくて?」と僕。

 「藤吉郎ももういっぱしの武将、配下は何人かいるぞ?

 蜂須賀小六殿を知っているだろう?

 彼も藤吉郎の配下だぞ?」

 「武将に配下がいるって事は利家(ロリコン)にも配下がいるの?」

 「まぁ俺は武将になる前から配下がいたけどな」

 「どういう事?」

 「俺は小姓時代、織田家から一度クビになってるんだよ」

 「『暇を出された』とか言ってたね。

 桶狭間の戦いの前だっけ?」

 「そうなんだけど、クビになるきっかけになった事件があるんだよ。

 俺が織田家に仕えてた茶坊主を斬り殺しちまったんだよ。

 理由はその茶坊主がまつの持ってた『形見の(こうがい)』を盗んだ事が原因なんだが。

 理由が理由だけに表だった罰はなかった。

 でも俺は暇を出されたんだ。

 同僚だった毛利新介はそれに巻き込まれて小姓をクビになった形だがね。

 まぁ、今川との決戦の前に色々理由をつけて信長様は小姓を逃がすおつもりだったみたいだ。

 ・・・で、荒子に戻っていた時に、俺は『荒子衆』を手下にしたって訳だ。

 俺が手下達を集めて桶狭間の戦いに参戦したのは知ってるだろう?

 その後は知っての通り桶狭間の戦いの功績が認められて、晴れて信長様の配下に復帰出来た、と言う訳だ」

 ふーん、人に歴史ありだ。


 僕はオッサンの膝の上ではしゃいでいるねねを見ながら『まだガキじゃねえか、こんなガキが嫁入りする時代なのか』と思っていた。

 まつ様は僕がねねを羨ましがっていると勘違いしたらしい。

 「ようかんちゃん、おいで」まつ様はそう言いながら正座しているももをポンポンと自分で叩いた。

 そうじゃない。

 僕は膝の上に座りたい訳じゃない。

 ・・・そう思ってるのに「子供は変な遠慮なんてしちゃダメ!」とまつ様は強引に僕を膝の上に座らせた。

 確かにまつ様は身体が大きい。

 対して僕はちっこい。

 14~15歳の少女に子供扱いされる成人。

 何でこんな事になってるんだよ! 


 木下勘解由は豊臣家に忠臣として仕える。

 ねねの実の父親だとする説もあり、祐久の兄とする資料も弟とする資料も存在し定かではない。

 『小牧・長久手の戦い』の敗走時、馬を失った豊臣秀次(秀吉の子供)に馬を渡し、身代わりとなり殺された、と言われている。  

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― 新着の感想 ―
[良い点]  何故か僕らの知る史実へとココの歴史が綺麗に収束してるのが気になるけど、そんな事はともかく養観院さんが見た目“10歳”だと確定した回(^艸^)これまでの雰囲気からそんぐらいとは思ってたけど…
[一言] 恐ろしい事に、猿とねねは恋愛結婚だったそうですね。利家とまつみたいに会う機会が多かった、なんてことも無かったでしょうし、いったいどんな出会いだったんでしょうか?歴史のロマンですね。
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