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人たらし

 「斎藤義龍は(われ)が『相伴衆』の地位を与えた者ぞ!?

 織田信長の態度は何だ?

 何故、我の和解の提案に応じぬのだ!?」

 足利義輝が三好長慶にヒステリックに当たり散らしている。

 三好長慶もまた『相伴衆』だ。

 彦太郎は思う。

 『それだけアンタの影響力がなくなってるんだろ。

 アンタの言う事を聞くヤツが減ってるんだろ。

 アンタの時代はもう終わりなんだろ』と。

 光秀はこのすぐ後に義輝が失脚して、義昭が将軍になる事を知っている。

 しかし明智光秀が誰に仕えたかまでは知らない。

 彦太郎のいた未来では『明智光秀』は知名度が全くないのだ。

 この後明智光秀は足利義昭に仕えて、その後織田信長に仕える事になる。

 歴史通りのルートを辿っているが、彦太郎本人は自分の意思で仕える主を選んでいると思っている。


 一部資料によると『斎藤義龍は2メートル近い大男だった』と書かれている。

 大男に凄まれても萎縮しない胆力、体格差を全く感じさせない人間の大きさ・・・。

 「やはり織田信長は並の男ではない」と彦太郎は思う。

 信長の第一印象は最悪だったのに評価爆上がりだ。

 彦太郎は義輝を見限り義昭に仕えるが、義昭と信長の関係を密にしようと暗躍する。

ーーーーーーーーーーーーーー

 一方、茶会場の外では僕が松永久秀と望まぬ再会を果たしていた。

 利家(ロリコン)も近くにはいるが、僕が振り切ってしまったから今の一瞬は一緒にいない。

 松永久秀は僕が一人になるタイミングで話しかけてきたんだろう。

 「町奉行様、お久しぶりです」僕はペコリと頭を下げる。

 「ふん、もう町奉行ではない」

 「・・・という事は今は『町火消し』ですか?

 『め組の親分』と呼んだ方が良いでしょうか?」

 「誰が『火消し』だ!

 今は三好長慶様、直々に仕えているのだ。

 『三好三人衆』などと呼ばれているのだ!」

 「三人衆の四番目な訳ですね。

 大体『四天王』と言えば五人いるものですしね」

 「それはいったいどこの常識だ!?」

 のらりくらりと返事はしているが僕はコイツに関わりたくないんだよね。

 コイツは僕にバレてないとは思ってるけど、三好の殿様がいる飯盛山城に潜入してた重秀から『松永久秀がお前を拐おうとしている』って聞かされてたから僕は東へ逃げたんだった、ようやく思い出したよ。


 「お前が堺の港から鈴木重秀と、もう一人の男と船に乗ったところまでは情報を掴んでいた。

 だがしばらくして堺に鈴木重秀だけが戻って来て、お前は戻って来なかった」と久秀。

 重秀、堺に戻ってたんだ!

 「しげ・・・」

 僕は重秀の事を喋ろうとしたが『いらない事は言わない方が良いだろう』と思い直して口をつぐんだ。

 「何かを言おうとしなかったか?

 隠しだてすると為にならんぞ?」

 「『しげの秀一は"バリバリ伝説"の頃、キャラクターは寝癖全開だったのに"MFゴースト"に出てくるキャラクターにあんまり寝癖はないよね』と言おうとしただけです」

 「訳のわからん事を言ってごまかそうとするな!

 鈴木重秀に貴様の事を問い質そうとしたのに、取り押さえようとした者達を殴り飛ばして逃げたのだ!

 アイツは今、どこにいるのだ!?」

 「し、知らない・・・」

 松永久秀に手首を掴まれて問い詰められるけれど、本当に知らないんだってば。

 今、重秀が堺にいないって?

 そんな事を言われても・・・。

 重秀が堺に帰った事すら知らなかったのに。

 つーか、重秀関係なくない?

 探してたのは僕でしょ?

 「あの男は俺を殴ったのだ!」

 殴られたのお前かい。

 完全な私怨じゃねーか!


 重秀は任務終了の報告を田中(オヤジ)にするために一旦、堺に帰った。

 任務終了を伝えたタイミングで松永久秀に見つかり、追っ手達を殴りどこかへ逃げたのだ。

 

ーーーーーーーーーーーー

 時は1日前、信長一行が道中の寺に一泊した日にさかのぼる。

 清洲城の中庭では建造されたプレハブ小屋の大半が解体されていた。

 解体された小屋は人海戦術で一宮に運ばれた。

 一宮に運ばれた小屋の部品は次々と木曽川に投げ込まれた。

 木曽川に小屋の部品を投げ込んだ人海戦術部隊は急ぎ下流の笠松へと向かった。

 笠松に待機し、部品を回収していた部隊と合流し、また人海戦術でひたすら西へ小屋の部品を運ぶ。

 西には別に先行して向かっていた部隊もいる。

 先行していた部隊がどこへ向かっていたのか?

 何をしていたのか?

 先行していた部隊は西の『墨俣』を目指していた。

 墨俣で先行していた部隊は建物の土台を作っていた。

 「急げ!部品が来たら直ぐに組み上げられるようにしておけ!」

 「任せておけ!何度も訓練済みだ!」

 土台造りは二時間程で終わった。

 土台造りが終わると同時に分解された小屋の部品が到着する。

 休む暇なく建物が建てられ始める。

 建物は『砦』だ。

 養観院は『天井を高くしてくれ』と言っていたが、やたら高い壁を見て『こんなに高くなくて良いのに』と言っていた、高い壁が砦の防壁に再利用されるとも知らずに。

 日が暮れた途端に土台造りが始められて、日が昇る直前には墨俣に砦が完成していた。

 城ではない。

 砦だ。

 だが世に言う『一夜城』の完成だ。

 部品を運ぶ部隊と修理大夫二十名の仕事は終わった。

 『一夜城建造部隊』のリーダーが小六郎なのは言うまでもない。

 『一夜城建造部隊』と入れ違いで砦に入る軍隊がいた。

 軍隊を率いるのは日吉、『木下藤吉郎』だ。

 

 日吉の進軍は完全に箝口令が敷かれていて、味方すらもほとんどの者が知らない、信長ですら。

 これはある意味、日吉の賭けだった。

 『独断専行の責任を取らされて首を斬られるか』

 『長良川の戦いで痛感した"砦がないから増援が間に合わない"という圧倒的不利を覆した功績を讃えられるか』

 とにかく軍働きがないと立身出世は望めない。

 しかし信長が日吉に進軍を指示する可能性は低い。

 だから作戦は信長がいないタイミングで行われた。

 『信長がいない場合の緊急時には城に残った者が自分の裁量で兵を動かして良い』

 その権利を日吉は使った。

 悪い言い方をすれば『権利の濫用、悪用』とも言える。

 しかし後から日吉の行動を知った信長は「やりおったな、藤吉郎!まったく食えぬ男よ!」と高らかに笑った。

 そんな信長の性格までを理解して確信犯的に越権行為を行った日吉は『人の心を読んでいる』としか言いようがない。

 こうして『対斎藤義龍』の前線基地が小谷で茶会が行われる日に出来上がった。

 この事は織田信長も斎藤義龍も知らない。

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― 新着の感想 ―
[気になる点]  んん?墨俣で必ず描かれる「初手織田家No.2の佐久間が斎藤側の妨害で築城失敗、次に武辺第一の柴田が数日に渡って河畔で斎藤軍を迎撃した時間で土塁まで積み上げたが戦力差を覆せず無念の撤退…
[一言] 清洲城のプレハブを解体して、墨俣の一夜城をつくちゃっただ~!? おいおい。早すぎじゃね。
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