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再会

 「お前がいると話がややこしくなる」と信長が養観院の襟元をつまんで隣の部屋へ連れて行く。

 養観院はじたばたと暴れたが信長は慣れたモノだ。

 「ここで待ってろ」

 信長は隣の部屋の布団が積み上げてあるところに養観院を放り投げた。

 思いの外、投げられたのが楽しかったようで「もう一回投げて!もう一回!」と養観院は信長にキャッキャとせがむ。

 ため息を吐きながらも信長は布団が積み上げてあるところに養観院を放り投げる。

 また『投げろ』と言いそうな養観院に信長は「後は戻ってきてからな。大人しくしてたらまた遊んでやらんでもない」と隣の部屋へ消えた。

 こういった場合、養観院の扱いは信長が二番目に上手だ。

 テンションが上がった時の養観院は手がつけられない。

 しかもそのテンションに子狼達やねねがハイテンションで加わるんで、始末に負えない。

 そういった場合、人柱が必要になる。

 その人柱になるのが藤吉郎か利家だ。

 人柱はヘトヘトになるまでハイテンションに付き合わされる。

 そのハイテンションを「いい加減にしなさい」の一言で止められる人物は利家の女房『松』ただ一人だ。

 『松』はハイテンションの養観院の扱いが一番上手い。


 信長が隣の部屋に戻ると長政が「すいません、すいません」と義秋にペコペコ頭を下げていた。

 「義秋様、義昭様と旧交を(あたた)めに来た訳でもありますまい。

 御用向きを教えていただけないかな?」と信長。

 「うむ、某はかつて将軍になるのを諦めた身だ。

 兄『義輝』が将軍になり、自分は仏門へと入った。

 それで構わないと考えていた。

 『我々兄弟の中から将軍が出るなら権力争いで揉める事もあるまい』と」

 「ふむ」

 「だが『義栄』殿は我が兄弟ではない。

 我々兄弟の父『義晴』と権力争いをしていた『足利義維』の子だ。

 ヤツが将軍になるのは面白くない。

 それで某は将軍になろうと名乗り出た。

 しかし某は義昭が将軍になることに全く抵抗はない。

 兄弟が将軍になるのなら仏門に入るのですら抵抗はなかったのだから」と義秋。

 「ならば義昭様に将軍の座を譲る、と?」と信長。

 「いや、話はそんなに簡単でない。

 某も暗殺者に怯え、朝倉義景殿を頼った。

 そして『助けてもらう代わりに将軍の座を目指す』と約束してしまっている。

 今更『将軍の座などいらぬ』などとは言えぬのだ」

 苦々しい顔で義秋が言う。

 本来なら演技を疑うところだが、義秋本人は本気でそう思っている。

 なぜなら義秋は『男の娘』以外に何も興味はないのだ。

 「つまり、我々が同盟を組もうとしても『朝倉義景』殿がそれを善しとしない」と信長。

 「うむ、何故だろうな?」と義秋。

 信長には『義景が同盟を組もうとしない理由』はわかっている。

 義景は信長が嫌いなのだ。

 いや、『大大大大大嫌い』なのだ。

 「信長と同盟を組むぐらいなら舌を噛みきってやる」とそう言うだろう。


 「どう思う?」

 信長が光秀に聞く。

 「同盟など所詮、夢物語かと。

 ・・・ですが時間稼ぎにはなるかと」と光秀。

 「時間稼ぎ?」

 「はい、今回の上洛までの時間稼ぎに。

 我々は行く先には『義栄』様がいます。

 そして後ろには『義秋』様がいます。

 両方敵に回しては闘えない。

 『義秋』様を後回しにするとしても、この同盟が活きてきます。

 たとえ形だけのハリボテの同盟だとしても。

 義景殿は義秋様が結んで来た同盟を即座に破る事は出来ないはずです」と光秀。

 「なるほど。

 義秋様のお人好しさを利用して、我々は悠々と上洛する、という訳だな」と信長。

 「はい、仰る通りです」

 光秀は信長の言う事を肯しておきながら内心では(事はそう簡単に運ばないだろうな)と思った。


 (ヒマだな・・・)

 積み上げられた布団にもたれながら養観院はうつらうつらとしていた。

 「・・・!」

 うたた寝している養観院を誰かが揺さぶる。

 誰だ、全く。

 しかし僕の安眠を邪魔したその罪、命で償ってもらおう!

 養観院は自分を揺さぶる腕をガッシリ掴むと相手の首の頸動脈を両足で締め上げた。

 三角絞めの完成だ!

 利家には通用しないが、油断した藤吉郎など何度も絞め落としている。

 養観院、必殺の技だ。

 因みにこの技を養観院に教えたのは鈴木重秀。

 あまりにも養観院が弱っちいのでいくつか護身術を教えたがマスター出来たのが、この三角絞めだけだった。

 完全に決まった!・・・はずなのに『三角絞め』をかけられた本人はスルリと絞めから逃れた。

 「ムダだよ、誰がその絞めをお前に教えたと思ってるんだよ?

 ・・・それよりお前、全然大きくなってないな」

 そこには黒づくめで寺に忍び込んだ重秀が立っていた。

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