大地に立つ
何と『歴史』ランキングの20位以内に入れました!
「より多くの人に読んでもらいたい」という事を意識する私にとって、ランキングから人が流れて来てくれる事は歓迎すべき事ですし、ランキングは意識しまくりです。
ですがここから上は楽しんで執筆しながら目指す場所ではありません。
『書籍化』『コミカライズ』という文字が散見される世界です。
そこを意識したら楽しく執筆する事が出来なくなる気がするのです。
ですがこれからも楽しく執筆していく予定ですのでよろしくお願いします!
「信長様への書状、本当に養観院に任せても大丈夫か?
俺は信玄様の治療で手一杯なんだが。
そこにもってきて勝頼様の謎の全身低温火傷の治療もしなくちゃいかん。
何で急に火傷したのか訳がわからん」と光秀。
「大丈夫だってば!
知らないの?
僕結構、信長様に気に入られてるらしいよ!
そう利家が言ってたよ!」と養観院。
「・・・本当に任せるぞ」と光秀。
「大丈夫だよ、心配性だな」と養観院。
こうして養観院は清洲城への書状を任された。
前にも触れたが養観院は楷書は何とか書けるし読める。
しかし草書に関しては『ミミズがのたくった跡』という認識だ。
つまり清洲からの書状は『読めん』と放置していたし、こちらから送る書状は『変わりなし』という定型文だった。
龍勝院の婚約が成立しても『変わりなし』だったし、『武田信玄が清洲に行く事になった』というのも当然『変わりなし』だ。
つまり岡崎城で何があったか信長は知らない。
その定型文書状が初めて違う内容になる。
『そろそろ帰る。お土産は大あん巻き』
勿論『武田信玄が清洲に行く』という内容は書状に書かれていない。
そんな事より優先して書かれたのが『土産を持って帰る』という事だ。
『大あん巻き』というのは三河の名物で、令和の現在でも土産物として人気がある。
薄く小さなホットケーキのような生地にあんなど色々な物を巻いた菓子だ。
気付いた人もいるのではないか?
そうだ昔、三島で養観院が鏡で焼いた物だ。
『水飴作り禁止』と言われた養観院は、ブーブー文句を言いながら、仕方なく囲炉裏でホットケーキを焼く。
そして昔、鏡で焼いた『あん巻きもどき』を思い出したのだ。
菓子に関して養観院は行動は早い。
暇を持て余していた養観院は『大あん巻き』の量産にとりかかる。
岡崎城で『大あん巻き』を食べた事がない者がいない程の量だ。
それでも作った『大あん巻き』は余った。
そりゃそうだろう。
養観院のお小遣い全額『大あん巻き』の材料代に消えるぐらい大量に作ったのだから。
「お金なくなっちゃった。
松様にまた怒られる。
『無駄遣いはよしなさい!』って言われてたのに・・・」と半べそをかく養観院をみかねた佐助が変装をして『大あん巻き』を岡崎城の城下町で売り捌いた。
そして養観院の枕元には『大あん巻き』の材料代で使い果たしたはずのお金以上の大金が。
「ありがとう、サンタさん・・・!」
なぜ北欧に住む子供好きの犯罪者予備軍の老人に感謝したのかは謎だが、とにかく養観院は更なる浪費のための金銭を得た。
こうして岡崎を中心とした三河地区で『大あん巻き』というモノが名物として定着して令和に至るのだ。
『明日、清洲に帰る』というある日、呼び出されて、家康の所へ行く。
家康は実は養観院の事が苦手だ。
理由は、家康が今川義元の配下で敵だったからだ。
敵でなくなってからも信長は人質で幼なじみだった家康の事を『子分』として扱うクセがあった。
そのぞんざいな態度が養観院に伝染しているのだ。
家康は城を持っている大名にもかかわらず、養観院は『スネ夫に対するジャイアン』のような態度で家康と対話する。
怒れば良いのだが『信長様のお気に入り』と思うと怒るに怒れない。
だから家康は必死で養観院と顔を合わせないように逃げていたのだ。
だが『帰る』となったらそうも言ってられない。
信長から直々に『養観院と龍勝院を無事に清洲まで送ってくれ、頼む!』と頭を下げられている。
普段、手下扱いしている家康に信長が頭を下げるなんて言うのはよっぽどの事だ。
この『清洲への護衛任務』失敗する訳にはいかない。
家康は護衛任務に『岡崎城の最大戦力』を投入するのだった。
養観院が呼び出された部屋にはまだ家康は来ていなかった。
「まだ誰もいないのかな?
早く来すぎたかな?」
しょうがないから養観院は部屋の中で待つ事にした。
誰もいないと思った部屋の中には大きな人影が。
「ぎゃああああああああ!!!!!!」思わず養観院は情けない悲鳴を上げる。
人影は微動だにしない。
「な、なんだ人形か。
ビビらせらせやがって!」
ビビりのクセに抵抗してこない相手にはとことん強気に出るのが養観院だ。
人形にローキックを食らわせる。
なぜローキックなのか?
技術的にハイキックが出来ないからだ。
そんな事はともかく、人形は相変わらず微動だにしない。
養観院は更に強気になる。
「肘を左脇下から離さない心構えで、やや内側に抉り込むように打つべし!」
てし!
養観院の『左ジャブ』が人形の顔にヒットする。
「打つべし!打つべし!打つべし!打つべし!打つべし!打つべし!・・・」
てし!てし!てし!てし!てし!てし!てし!
『左ジャブ』が人形に連続でヒットする。
人形は相変わらず微動だにしない。
そこに家康が来る。
「・・・何をしておるのだ?」と家康。
「何って、『泪橋を逆に渡るためのその一』?」そう言いながらも養観院はジャブを打つ左手を止めない。
「訳がわからん・・・それよりなぜ『平八郎』は黙って殴られているのだ?」と家康が人形に語りかける。
養観院が「人形に話しかけるとか、危ない人かよ」と言おうとした瞬間に人形が話し始める。
コイツ、喋るぞ!
人形?恋もするのか!?
「別に痛くなかったですし・・・」と人形。
たしかに養観院のジャブは猫の尻尾がてしてしと身体に当たっているようなモノで心地よくすらもある。
養観院がサンドバッグにしていた人形こそ後の『徳川四天王』の一人、本多忠勝だ。
家康は『平八郎』と呼んでいる。
そして養観院が『ガンダム』と呼ぶ男だ。
本多忠勝は初陣の『桶狭間の戦い』で包囲されて不可能とされた『大高城への兵糧入れ』を成功させ、家康に高く評価されるようになった。
「まあ良い。
この『平八郎』こそ清洲への護衛だ」と家康。




