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 勝頼(バカ)の部屋の前で、養観院と保豊がぶつかる。

 保豊も忍者、さすがのバランス感覚だ。

 床に『絶倫香』を置き、逆立ちして鍋を抱えている養観院をヒョイと避ける。

 保豊の運動神経を木の上のテナガザルと例えると、養観院の運動神経は木の上のテナガエビだ。

 サルに皮を剥いて食われる存在、要するに運動神経なんて全くない。

 ヨロヨロとたたらを踏むと、保豊の床に置いた『絶倫香』を入れ物ごと蹴ってパッカリと割った。

 保豊は毒と香のエキスパートだ。

 あらゆる毒と香に耐性がある。

 だから『絶倫香』を浴びても正気を失わない。

 だが『絶倫香』は貴重なモノだ。

 「もったいねー」とか「また最初から準備するのか、面倒臭せー」ぐらいは感じる。


 一応、保豊は養観院に異変がないか見守る。

 養観院に影響がなくても、偶然近くにいた男が『絶倫香』を嗅いで養観院に襲いかかる可能性があるからだ。

 『絶倫香』は男性の精神のみに効果を発揮する香だ。

 だから保豊は『養観院様が香を嗅いでも何ともない』と思っている。

 だが養観院は元男なのだ。

 そして精神構造はいまだに男なのだ。

 つまりバリバリに『絶倫香』の効果が出る。

 養観院は何か訳のわからない興奮と高揚感に襲われた。

 しかし養観院には『いきり立つモノ』がない。

 『絶倫香』は養観院に格闘技選手がドーピングで使う『興奮剤』のような効果を与えた。

 『いきり立つモノ』があれば女性に対して攻撃的になったのかも知れない。

 だが『いきり立つモノ』がない養観院は勝頼(バカ)の部屋の前にいたから、意味もなく勝頼(バカ)に対して攻撃的になった。

 養観院は勝頼(バカ)の部屋に障子を開けて入る。

 もう昼前だというのに勝頼(バカ)は大口を開けて寝ている。

 養観院は寝ている勝頼の布団を剥ぎ取ると浴衣の前をはだけさせ、乳首に熱々の水飴を柄杓(ひしゃく)(たら)した。

 「!!!!!!!!!」勝頼は声にならない叫び声を上げて目を醒ます。

 叫び声を上げようと開けた勝頼の口の中に養観院は水飴を流し込む。

 「熱い!甘い!」勝頼は訳もわからず転げ回る。

 転げ回ってうつ伏せになった勝頼の襟元から背中に熱々の水飴を流し込む。

 「ガアアアアアアア!!!!!」勝頼は怪物じみた断末魔を上げる。

 「これはシャレにならない」と思った保豊は勝頼に「御免!」とトンと軽く当て身を首元にして気絶させた。

 熱々とはいえ、水飴がちょっと冷めててよかった。

 コレ、もう少し熱かったら勝頼(バカ)が大火傷していた。

 そこでハッと養観院は正気に戻る。

 「僕は一体何をしていたんだろう!?」と。

 「そりゃこっちが聞きたいわ!」という言葉を保豊は飲み込んだ。


 「これ、どういう状況?」と現れた龍勝院が言う。

 龍勝院が起きたら、養観院の名前で『勝頼様の部屋の前まで来て下さい』という手紙が枕元にあったらしい。

 想像はつくだろうが、その手紙は養観院が出したモノではない。

 保豊が龍勝院を勝頼の部屋まで誘導しようとしたのだ。

 つまり『勝頼(バカ)様と龍勝院(ケモナー)様の間に既成事実を作ってしまおう』と。

 短絡的にも程がある。

 龍勝院が受け入れない可能性を考えなかったのか?

 保豊は『女性に受け入れられなかった経験』があんまりない。

 ハンサムあるあるだ。

 たとえ受け入れなかったとしても、あらゆる『手練手管』がある。

 自分を基準にして『既成事実を作れば何とかなるでしょ?』と考えたのだ。

 なる訳ない。

 大事件になる。

 ある意味、保豊の作戦が失敗して良かった。

 

 目を醒ました勝頼(バカ)は「何かヒリヒリ、ベトベトするけど何なんだろう?何か甘いし・・・」と勘助に聞く。

 勘助は答えた。

 勘助にもこれがどんな状況だかサッパリわからない。

 ただ凄く甘い匂いがする、わかるのはそれだけだ。

 『今孔明』と呼ばれた天才軍師は『保豊の野郎、何か失敗したな』というのだけは瞬時に感じ取った。

 何とかフォローしなくてはいけない。

 だが、どうしたモノか。

 勘助の頭脳(スーパーコンピューター)がフル回転する。

 「それが恋ですよ。

 勝頼(バカ)様は愛を求めているんですよ。

 見合いをしたらいかがでしょうか?」と勘助は言った。

 いくら縁談をまとめたくてもさすがに無理があったかもと思う勘助だった。

 しかし、勝頼(バカ)への効果は絶大だった。

 「そうか。

 そうなのか。

 ボクが愛を、温もりを求めているからこその『このネバネバ』なのか。

 わかった。

 この縁談、前向きに考えてみるよ」と勝頼(バカ)

 勘助はしみじみと思った。

 『バカで良かった』と。

記念すべき100個目のエピソードです。

『それがコレでええんか?』と思わないでもありませんが。

読んでいただいている読者様には感謝しております!

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