堺
明日締め切りで今日、書き始めます。
果たして間に合うのか!?
『酒池肉林?』
「いや、別に酒も肉もいらないよ。
未成年だから酒は飲んだ事ないし、肉も一度焼き肉食べにいったら1ヶ月は焼き肉は食べたくないんだよ。
酒より肉より甘いモノが欲しいな。
甘いモノならいくらでも食べられる。
あとはお決まりの『ハーレム』は欲しいかな?」
『人を助けて命を落とした人物には転移のチャンスが与えられる事になっているのですが・・・。
しかしもう修復が不可能なくらい貴方の元の肉体は傷んでいます』
「傷む?」
「貴方は道に飛び出した子供を助けてトラックに轢かれたんです。
さながら潰れたトマト状態です。
だから貴方の肉体は転移するにあたって再構成されます」
「出来れば元の肉体と同じにして欲しいんだけど・・・」
『それが出来るなら蘇生だって簡単に出来るはずでしょ?
潰れた身体を元通りに生き返らせる事が出来るなら転移なんてさせる意味なんてない。
それに死んだ人間を元の世界、元の時代で生き返らせる事は禁忌なんです。
だから他の世界、他の時代に転移してもらう訳なんです。
修復可能なら元の肉体を使うけれど、貴方の遺体は修復不可能です。
幸い、貴方の願望の中にハーレムがあります。
ハーレムの中にいるためには決まった容姿がありますから』
「転移させる肉体がない場合は転生させるんじゃないの?」
『転生はもっと"徳"を積んだ魂でないと厳しいですね。
言ったら失礼かもしれませんが、貴方は人助けをして死にましたが"徳"は全く足りていません。
転生は無理ですね。
転移が妥当でしょう』
「あ、そう。
そりゃそうか。
"助けて当たり前"と思うぐらいの善人じゃないと転生は出来ないのかもね。
僕は助けた事を"気の迷い"とどこかで思ってるもんね。
神様の仕事も慈善事業じゃないんだろ?
転生には手間も労力もかかる。
神様にとって利益がある存在じゃないと転生はさせられない。
違うかな?」
『そういう事です。
貴方は転生には足りませんが転移に相当する善行は行いました。
だから望めば転移出来る・・・と言う話です』
「"望めば"?
拒否する事も出来るの?」
『もちろん。
拒否したら貴方は"輪廻の輪"の中に入ります。
ただ人間に生まれ変わる事は約束出来ません。
貴方は死ぬ前に善行を積んだので"人間に近い存在"には生まれ変われるでしょう。
しかし人間に生まれ変われるとは限りません。
転移する事をお薦めします』
「転移するしかないのか。
で、僕はどこの世界に飛ばされるの?」
『どの世界、どの時間軸に飛ばされるかはわかりません。
完全にランダムです。
私にもわかりません』
「"時間軸"?
何それ?」
『生命が溢れかえる時代もあれば、氷河期のように多くの生命が死滅する時代もあります。
つまり、同じ時代だけでは魂が余る事も、足りなくなる事もあるのです。
そういった場合は違う時間軸と魂を"貸し借り"するのです』
「ちょっと待って。
過去に送った魂が時代を変えたりしないの?
だって過去に送った魂はこれから起こる事がわかってるんだよね?」
『これから起こる事がわかっている魂は少数です。
数少ない転生者、転移者だけです。
それに時代はそう簡単には変わりません。
曲がった鉄を叩いて修正しようとしても熱が加われば直ぐに叩く前の状態に戻ります。
それと同じです。
一度決まった道筋はそう簡単には変えられません。
同様に一度ズレてしまった道筋はそう簡単には軌道修正出来ません。
望んで時代は中々作れないのです。
それでも、時代がズレてしまう事はあります。
しかし、それは全く問題ありません。
転移者、転生者が飛ばされた時点で時間軸は枝分かれしています。
違う時間軸同士は交わりません。
転移者、転生者はより良い時代を作れば良いのです。
そうやってより良い時代を作る事こそ、我々"神"に与えられた仕事であり使命なのです』
「ふーん。
僕が時代を変えてしまっても良い訳ね?」
『変えられれば、の話ですが。
過去に起こる事がわかっていてもこれから起こる危険を回避する程度ですよ?
時代なんて中々変えられるモノではありません』
「わかった。
これから先は完全ランダムなんだよね?」
『多少の希望は通ります。
でも貴方の『ハーレム希望』はかなり大きな希望です。
私自身、その希望が通ると思っていませんでした。
他の希望が叶う事は余りないでしょう。
"甘いモノが沢山食べたい"という希望が通るか、通らないかは私にはわかりません。
ランダムの抽選の後は私の預かり知らない話なので・・・』
「わかった。
ここから先は僕の運次第、って訳ね?
だったらサッサと転移させてよ。
ここでモヤモヤしてても埒が開かないし」
『わかりました。
では、良い人生を・・・』
僕の意識はそこで途絶えた。
「これ、起きなさい。
往来で寝ていては危険だ」
何者かに揺すられる。
「・・・・・」
僕はムクリと上半身を起こす。
身体は動く。
痛みもない。
どうやらこれが新しい僕の身体みたいだ。
地面はコンクリート舗装されていない。
だからといって全く舗装されていない訳じゃない。
車が余裕で二台すれ違えるだけの道の広さはあるし、道の脇には見覚えがある障子、雨戸、襖が視界に入る。
しかしガラス窓はないようだ。
どうやらかなり昔の日本に飛ばされたようだ。
ゲッ!
見たところ電気も車もネットも電話もない。
「意識が戻ったなら返事をしろ!」
中年男にお叱りを受ける。
「お主は何者だ?
何故ここで倒れていた?」
"何故ここで"と言われてもここがどこだかわからない。
それに今の僕は『僕であって僕じゃない』状態だ。
身体は再構成されて全くの別人になっているはずだから。
僕が何て答えたら良いかわからずに頭をひねっていると、中年男は何を勘違いしたのか「あ、そうか」という表情をして改めて僕に話しかけた。
「失礼した。
"人に名を尋ねる時には先ず自分から"だったな。
儂は『田中与四郎』。
堺で魚問屋『魚屋』を営んでいる者だ」
うん、知らんオヤジだ。
『魚魚丸』って回転寿司屋は知ってるけど、そんな問屋は聞いた事がない。
「さぁ、儂は名乗ったぞ?
お主も名乗らないか、娘よ」
田中は僕を急かす。
・・・ちょっと待て。
『娘』って何だよ?
僕は自分の胸を揉んでみる。
うん、揉もうと思えば揉める。
でもふくよかならもっと胸の大きな男だっているだろう。
胸じゃよくわからんな。
自分の服装をマジマジと見てみる。
僕は浴衣みたいな服を着ている。
まぁ転移させるにしても裸という訳にはいかなかったんだろう。
この下着みたいな服は女神がオマケでくれたっぽい。
そんな事は今はどうでも良い。
次に股間をまさぐってみる。
触り慣れたあの感触がない。
『ハーレムに入る』って言うのは『ハーレムの主になる』という話ではなく、『ハーレムの主が作るハーレムの一員になる』って事だ。
テメーあの女神!