第8話
感想、ブクマ、評価よろしくお願いします。
マザーバンガードを倒した俺は、マップを頼りに最寄りの街へやって来ていた。道中、敵SACに何度か襲われたが、命中率100パーセントの機関砲が呆気なくそいつらをバラバラに粉砕してみせた。最初の戦闘がなんだったのかと思うくらいには緊張感がなく、仕方ないとはいえ少しばかり残念な気持ちにはなる。
そういえばだが、俺が先程までいたダンジョンは消滅していた。このゲーム、ボスが撃破されてしまったダンジョンは、時間経過で消えてなくなってしまうようだった。
「しかし、いきなりレベル777かぁ。運営、ゲームバランス崩壊してるよ……いいのか、これで」
雑多な飲食店で、机に顔を伏せて呟く。
ここは移動要塞都市マルクスのグルメエリアである。
その名の通り、動く都市、ではあるのだが、それはあくまで設定だけの話であり、実際に動くことはないとガイドが言っていた。この街はゲームを始めたばかりの初心者の多くが立ち寄る場所で、サービス開始から間もないということで非常に活気がある。ちなみに、街の中にSACは持ち込めないので、ブラックバレットは街の入口にある格納庫に待機してもらっている。
「御注文の麻婆豆腐定食でえす!」
頭上から声がかかる。
顔をあげると美人なウェイターがテーブルに料理を並べて「ごゆっくりドゾー!」と言って去っていた。
中華料理店みたいな内装で、ウェイターは皆赤いチャイナドレスを着ている。
湯気立ち上る麻婆豆腐定食を前に腹が鳴る、とりあえずレベルのことは後回しにして、いまは腹ごしらえしよう。
「いただきます!」
レンゲで柔らかく山椒と辣油の香りが立ち込める豆腐を持ち上げて、口に放り込む。滑らかな舌触りの豆腐に挽肉の旨味、絡み合う餡のコクが素晴らしくマッチしている。
そして遅れてガツンと来る辛味、これこれ、麻婆豆腐といったらこの辛さだ。口の中が真っ赤になって燃えてしまうような感覚、これが良いのだ。そしてそのまま白米をがっつく。
「うっまぁ……!」
食事というのはパイロットHPを回復させる為のものだが、こうして美味いものが食べられるのなら、娯楽として食事するのもアリだなと思ってしまう。
そうして舌鼓を打っていると、店の奥から怒鳴り声が聞こえてきた。何事かと身を乗り出して様子を窺ってみると、どうやら何か揉めているようで、金髪で華奢な女の子が複数人の男に囲まれているのが見えた。