表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

32/32

ドラゴンに転生したら心優しい少年にテイムされました

 カイルの就職をひとしきり喜んだ後、俺達は闘技場の外に出た。


「「「「カイルっ!!」」」」


 すると、カイルの両親・リリとその従魔達に親父さん、それにボンズが俺達を出迎えてくれた。


「みんな聞いて! 僕――」

「カイル、良い戦いぶりだったぞ! その、何だ……また来年頑張ればいいさ!」

「お父さんの言う通りよ! カイルは凄い! よく頑張ったわ! もちろん、アイズ君達もね!」

「え? う、うん。ありがとう」


 言葉を遮って異様に明るく話し掛けてきた両親に、カイルは戸惑った様子で言葉を返した。


「カイルっ! また来年一緒に頑張りましょ! だから前向きに! ねっ?」

「そうだぞ、カイル。初出場で準々決勝まで行くたぁ、見事なもんだ。だから自信を持て!」


 続いて掛けられたリリと親父さんの言葉に、カイルはさらに困惑した顔を浮かべた。


 一体どうしたんだろう、みんな。

 何かテンションがおかしいけど……。


 そんなことを思っていると、リリの従魔達が俺達の目の前にやってきて話し掛けてきた。


『アイズっ! それにエリノアとフィル。あんた達はよーく頑張った。だから自分を責めちゃあいけないよ』

『そうよっ! 今回は相手が悪かっただけなんだから!』

『気にしちゃ……ダメ……。アイズ達は……凄い……』

『お、おう。ありがとう……』


 モモ達の様子もおかしい。

 何か気を遣われているような……。


「おい、カイルっ! お前はこの俺に勝ったんだ。だから……負けたからって落ち込むな! 分かったな!?」

「う、うん、ボンズありがとう。でも僕、落ち込んでないよ……?」

「「「「――えっ?」」」」


 ボンズの言葉にカイルがそう返すと、そこに居た全員が心底驚いたかのような表情を浮かべた。


 ……なるほど。みんなは負けた俺達を励まそうとしてくれてたんだな。

 きっと落ち込んでいるだろうと思って。


「あ、そうだ! みんな聞いて! 僕、テイマー養成学院で講師として働くことになったんだ!」

「え、えっと……。どういうこと?」

「さっき控え室で――」


 カイルはその後、控え室で院長先生からスカウトされたことをみんなに説明した。

 すると、みんなが自分のことのように喜んでくれて、祝福してくれた。


「あっ! 父さん、母さん! 僕をテイマー養成学院に入れてくれてありがとう! これからは僕がいっぱい稼いで楽をさせてあげるから、無理をしないでね!」


 おいおい、カイル。ここでそんなことを言ったら――


「か、カイル……」

「この子ったら……」


 あーあ。ほら、泣いちゃったじゃないか。

 ……でも、カイルの両親も本当に嬉しそうだ。

 本当に良かったな、カイル。


「よぉーし。今日はカイルの就職を祝って、みんなで盛大にやろう!」

「あっ、お父さんナイスアイデア! じゃ、みんな家に来て!」


 その後、親父さんの提案で俺達はリリの家で、カイルの就職を祝う会を開いてもらえることになった。

 




 そうして、リリの家に向かっている道中、俺は空を見上げて心の中で言葉を紡ぐ。


 ――勇斗。

 兄ちゃんがそっちに行くのは、まだだいぶ先になりそうだ。


 実は兄ちゃんな。

 ドラゴンに生まれ変わって、勇斗に似た優しい男の子と仲間達と一緒に暮らしているんだ。


 旅に出たり、戦ったりと退屈しない日々だよ。


 良い子にしていられたら、とびっきり面白い話を聞かせてやるから、もうちょっとだけ待っててな。

 兄ちゃんは第二の人生も精一杯生きてから、必ず勇斗に会いにいくから。


「アイズーっ! 行くよー!」

『何してるんですか、アイズさんっ! 空なんか眺めて!』

『早くしろ。置いていくぞ』

『――悪い悪い! 今行くよ!』

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 最初から一気に読みました。 面白くて楽しめました!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ