私が、守るわ
私はディスオン様や可愛い子供や孫達に囲まれて生涯を穏やかに幸せに暮らしていけたけれど、テールミオン様はそうじゃなかった。
レジャ様と私の結婚式に堂々と参列した彼女は、私達と両陛下の御前で言い放ったのだ。呪いをかけたのだと……三百年後を楽しみにすればいいと囁きながら美しく微笑む彼女からは、恐ろしい負の気配が漂っていた。
その後テールミオン様は公爵家が所有する僻地の邸で、閉じ込められるように生涯を終えたと聞いたけれど……それはどんなに寂しく、苦しいものだったのか。
「ごめん、やっぱり僕は君を愛せない」
レジャ王子から毎週のように放たれるあの言葉を聞くたびに感じる悲しさと苦しさは、三百年前のあの頃、テールミオン様が感じていた痛みのきっとほんの一部だ。
彼女の人生を狂わせた。私には、呪いを受けるだけの咎がきっとあるのだ。
そう覚悟は出来たものの、年々あの言葉がつらくなってきたのも事実。だって、レジャ様ったら成長するにつれて性格がディスオン様とびっくりするくらいおんなじなんだもの。
正義感が強くて、こうと思ったら一直線。剣技も頑張ってるって聞くし、きっと姿だってあと一、二年もすれば私達が出会った頃の逞しさが出てくるだろう。
やっぱり生まれ変わりなのね。それが嬉しくもあり、その彼に嫌われることがこんなにも悲しい。
けれど私よりも悲しくて不幸なのは、記憶がないレジャ様だ。何も知らないのに、ただ呪いだけをその身に受けて苦しんでいる。国の存続のために愛せない女を妃として娶り、生涯を共にしなければならないなんて、あの方にとってそれがどんなに苦しいことか。
300年前のあの時、ディスオン様は周囲のすべてを敵に回しても、私を守ろうとしてくれたわ。きっと今度は私の番だ。
レジャ様を救えるのは、きっと私だけ。レジャ様は、私が絶対に……この身に換えても守ってみせる。
そう決意したその夜から、私はさらに呪いを解くための調査に没頭した。
レジャ様にぶっちゃけてしまったわけだから、もう隠れてコソコソする必要もない。思いっきり大っぴらに解呪のための動きを取っていいわけだ。
集中したいから、訪問は控えて欲しいとレジャ様に申し入れてみたけれど、なぜかレジャ様は「自分も調査する」「君だけの問題じゃない」なんて食い下がってくる。
結果的に今まで通り毎週末を共に過ごす……というか、我が家の書庫で互いに無言で日が暮れるまで参考になるような書がないか探しているわけだから、むしろ今までよりももっと共にいる時間は長いのかもしれない。