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魔王に巻き込まれた大賢者、今世こそ隠遁生活を送りたい(願望)  作者: 白ゐ眠子
第二章・転生した魔王は問い掛けたい。
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第25話 元大賢者は、婚約者を慌てさせる。


「急な事って。まぁ確かに、急な事だったが」

「お陰で学徒の練度の度合いを知られたから良いけど、逆にこちらも魔力有りがバレて隠蔽度合いを引き下げないといけなくなったし」

「それは自業自得だろう? この件以降、入学時に魔力測定を必須とするっていう話が下りてきたからな。今までは魔力が有るものとして扱ってきた学園がアリスが一石を投じた事で少しだけ変化したのだから」

「それも悪い方にね? 本来なら自己申告で良かったけど、今度は大っぴらにされるから入学前の時点で位階差別が勃発よ?」


 現在進行形で説教を受けている〈身代わり〉から送られてくる情報から学長と副学長の連名で〈人亜連合〉に対し入学時の魔力測定を設ける事を提案したらしい。

 それが即座に承認され、次回から行う事となったようだ。その代わり位階序列が入学前から発生し、何らかの隔離措置を施さないと面倒な事このうえない事態に陥る事が確実になった。

 殿下は私が用意した紅茶に口を付けつつも私が示した起こり得る事案を考える。


「貴族と平民を別ける必要はあるだろうが」


 私はその一言から未来の測定場を幻視した。


「平民でも魔力量に依っては殺伐とした状態に陥るけどね?」


 すると殿下は、


「それは本人達の努力次第だろう? 魔力量は本人次第で変化するのだから」


 努力をしない者との区別であると断じたので私は今日の出来事を改めて教える事とした。


「それであればいいけどね? 今日の測定、リンスの後の者は破損状態の測定魔道具で魔力測定していたからね。その間違った情報でどんな教育が出来るんだか。しかも壊れてますよ? って言えども、破損箇所が判らないのか気にせず測定を続けていたからね」

「破損だと? それは、どういう事だ?」

「そのまんまよ。リンスの魔力が現状で一二〇万マナあるとして、その魔力量を受け入れる側の魔道具が劣化していたかで破損したの。そしてリンスの結果は一〇〇万マナで測定されて後の者から順に断線が酷くなって、私が計測した後には完全に切れていたからね? 私が一〇〇万マナで抑えて放出していたのに、一〇万マナで測定されたのだから」

「それならAクラスでも魔力無しが出るんじゃないか?」

「出ていたわよ? 案の定、Jクラスの魔力無しが魔力有りとなって、Aクラスの魔力有りが魔力無しへと落下する結果がね?」


 実際に出ていた。アリサの件があったから有耶無耶となって隠された事案だが、その測定員はその場で秘したのだ。

 それは計測相手が宗主国の王子だったからかもしれないが魔力無しと断言するには相手が悪かった。


「あの魔道具は宗主国が納入した物で、最大

で一五〇万マナまでは測定可能と謳っていた物だったがリンスの魔力量で壊れるとか信じられないぞ?」

「それだけ程度が知れた物って事よね? 測定員も宗主国の者だったのだろうし」

「だとするなら、Aクラスだけが劣化品を掴まされたのか? だが、それなら…」


 殿下は私から聞いた事案から一人でブツブツと考えを口走っていた。その間の私は一人で紅茶を口に含み意識を学長室に向けたところ、


『以後気をつけるように! それと来週から第一位階に引き上げるからそのつもりで』


 一言付け加えられ副学長だけが『ぐぬぬ』と唸っていた。成長期を過ぎた者の位階が上がる事って滅多に無いらしいからね。

 本当ならばそれ以上に発揮出来るけども。


「あ、説教が終わったみたい。魔術を解除してっと。うーん! 微量で抑えながらの魔力制御は大変だわ〜」

「まさかゴーレムを使っていなかったのか?」

「あー、うん。〈双対する存在の器(デュオヴェスール)〉っていう存在複製魔術でね。主に斥候で使う術なの。まぁ魔力感知スキルを持つ魔族相手では即殺される術だけど人間相手ならザルって事が今回判っただけでも儲けものかなって」

「なるほど。その術の効果範囲はどの程度だ? それと連続行使はどれほどの期間行える?」


 私が魔術を解除して、一息入れる一言を言うと殿下が興味深げに聞いてきた。何というか目が爛々として未来の宰相閣下の雰囲気が出てるけど? 勿論、魔王じゃなくてね?


「食いつくわねぇ。まぁ、最初に魔力を与える量にもよるけど最低三〇マナ程度で学内を縦横無尽に動かして、およそ三日は保つわね。一日だけなら一〇マナを与えるだけで済むけどね」

「では仮にそれを覚えさせるとして斥候の疲弊は改善されるのか?」

「相手次第ね? デメリットとして魔力感知スキルを持つ者が相手だと術者の特定が容易に出来るって事だから亜人と魔族相手には使えないわよ?」


 すると殿下は私の提示したデメリットを理解しながら誰を相手に使うかを確認してきた。


「だが、人類国家相手なら可能だな?」


 私はその一言から怪訝(けげん)となりつつも、


「もしかして間諜でも送り込むつもりなの?」

「もしかしなくても間諜だな。相手は身勝手に国内を跋扈するが逆は無いからな。どうしても後手後手となって防諜戦は常に負け戦が続いているのだ」

「あぁ、機密情報が抜かれ放題って事ね」

「そうだ。最近だと我の婚約者が居なかった事が漏れていたな。その後はリンスの婚約者が居ないという事で宗主国の第三王子が出張ってきたという事くらいか?」


 なるほどね。私はその言葉を聞き第三王子が来た理由を察した。殿下には普段の対処を口走る。これは頻繁に泊まる必要がありそうね?

 再教育は甘んじて受け入れるしかないが。


「あの変態王子かぁ。私が頻繁に幻惑魔術で明後日の方向に、ご案内して差し上げている…」

「ど、どういう事だ?」

「リンスの部屋に泊まる時に見ていたのだけど、いっつも入口前に立っては気持ち悪い視線を室内に送っててね。鑑定したら内部を透視していたの。だから、代わりに体術戦担当のアシッド・グライ客員教授の居室を見せてあげているんだよ。『肉体美』って言いながらポージングして、常に自室で裸となる変態教授だけど」

「そ、それはそれでどうなんだ? まぁリンスの裸が見られていないなら安心だが…」


 流石に対処としてはオカシイと思ったのか、殿下は引き気味に問い掛けるが妹の裸が護られた事には安堵していた。

 その代わり…


「そうね。リンスは見られてないけど私はバッチリ見られたからね?」

「何だと!? それは許せん!」

「はいはい、落ち着いて!」


 この魔王様もとい殿下は私が見られたと知るや威圧魔力を解禁した。全く下手に魔王の魔力放出すると魔族が近付くから程ほどにしてね?

 まぁ魔族達は気付いていないから助かったけど。


数年ぶりの改稿で申し訳ございません。

改稿を行いつつ続編を書いていきます。

〈改稿日:2022年12月17日〉

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