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魔王に巻き込まれた大賢者、今世こそ隠遁生活を送りたい(願望)  作者: 白ゐ眠子
第二章・転生した魔王は問い掛けたい。
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第24話 元大賢者は、身バレではないが身バレした。


(あぁぁぁぁぁ〜、どうしよう…)


 私は大講堂への移動の最中、焦りのある表情で大いに悩んだ。今はアリサとしてこの場に居るのに副学長のバカの差し金でアリス・フィリアとしても居ないといけないというのだから。


(さて、どうしたものか。やっぱりアレをするしかないかな。でもそれをすると感知出来る者には感知される…。でもこの際、仕方ないか)


 考えた。ただ只管に考えた。

 そして結論として、この学園の者達の練度が極限まで低い事を願いながら、ある魔術を強行しようと手を打った。


(我が身代わりの・写しを此処に対と成す・願うは器の姿なり・双対する存在の器(デュオヴェスール)


 移動する学徒達の中で存在希薄魔術を行使して、背後を移動する者の認識をずらしアリサの器を構築して元の場所へと戻した。

 この時、一瞬だけ消えたようにも見えるけど誰にも気付かれてないみたい。

 本来の私はAクラス者達が居るの場所へと移動して遠隔でアリサを操作した。

 この魔術のデメリットは魔力感知を行える者が見ると操作される側の頭上から魔力線が操る方に伸びており術者を知られるリスクがあるのだ。測定時には魔力を全面カットして姿形だけの器で放置だけど。


(この行使が吉と出るか凶と出るか学徒の練度に依るかな?)


 一人で悶々と、本来なら居る筈のないAクラスの列に並んだ私だった。存在希薄魔術はこの時点で既に解除しており私が列の最後尾に並んだ瞬間、


「!? ひ、姫殿下? いつの間にお越しに?」

「ごきげんよう。殿下から今日は登校するようにと連絡を受けましたので」

「そうでしたか。失礼致しました」


 リンスの再教育のお陰か身のこなしを王族のソレに近付けた事でアリサとしての立ち振る舞いが隠せた事で良しとした。

 前列に居るリンスからは呆れと溜息を漏らされたので再教育がまだまだ続くようだ。


『もう少し、お淑やかに!』


 と、口を動かされたよ。


  ◆◇◆


 これから始まるのは魔力測定なのだけど、この魔道具、壊れてない?


「はい。アリス様の魔力値は一〇万マナですね。リンス様より一桁分低いようですが…」

「そうですか」


 私は測定員の言う言葉へと素直に応じた。

 測定員の彼は若干落胆の色が見えるけど、


(本来の魔力値は一〇〇万マナを放出していたよ? 残り九〇万マナが消失してて測定されていないだけでしょう? リンスの総魔力量すらも測り切れず、断線した魔道具を用いて継続測定するのだから程度が知れるってものよね?)


 思った事は口に出さず離れようとしたが、やぱり気になったので、測定員が次の者を測定する前に一言告げて私は離れた。


「それよりも、そこの、ミスリル線が断線してますので修理した方が宜しいですよ? それでは失礼致します」

 

 実は反対側でもアリサの測定が行われているので、今は同時操作で出力制限していたともいうけどね?


(あら? 殿下? 何をそんなに驚いているのかしら?)


 すると突然、落第クラスの方が騒がしくなった。


「お、おい! 無印から魔力反応が出たぞ!」

「え? 一〇マナ? どういう事?」

「普通、魔力無しが… あ! 魔石ね! 魔力が無いからって魔石で代用とか卑怯よ!」

「剥け! 今すぐソイツを剥いて魔石を奪え」


 その一言を聞き、私は出力制限を間違えたと察した。接続を切るつもりが壊れた魔道具に意識を割いたがため微量だが漏れ出たらしい。

 その間も立ち尽くすアリサは学徒から魔石所持疑惑を向けられており、頭の痛い問題となった。


(剥けとか幻惑魔術だから脱げないけど?)


 そう思いながらも意識をアリサに移し一言述べる。いつかはバレる事だったし仕方ないか。


「はぁ〜、やってしまった。魔力無しとして過ごそうと思っていたのに」


 アリサは周囲を惑わす意味深な言葉を発した。直後、私は出力制限を少しだけ解禁しアリサの身体に八〇〇〇マナ程の魔力を流した。

 落第クラス程度ではこの程度らしいからね。 

 隣のIクラスでも最小値が出力制限した殿下の一万マナらしいから。


「魔石ねぇ。魔石一つで幾らくらいの魔力があるか知ってる。およそ一〇万マナだよ。それをどれだけ砕こうとも一〇マナって屑魔力にはならないの。それくらい基礎知識は持っているものだと思っていたのに持ってないんだね。所詮は頭も魔力も落第クラスは落第クラスなのね」


 呆れながらも周囲のバカ達を煽ってみた。

 すると、巻き起こるのは、


「!! 無印が偉そうに!」

「そ、そうよ! 大体、魔力無しで過ごすとか嘘は言わないことね!」

「そうだ、そうだ! 魔力が無いという証明だ! やっちまえ!」

「どうぞ、ご自由に。カウンター魔術を喰らってもいいなら是非打ち込んでみたらいいよ?」


 最後は完全な呆れから無防備状態を晒してあげた。周囲では他のクラスの者や上級生が面白半分に笑っていたり同じように加勢する者達が現れたり、しっちゃかめっちゃかな様相を呈していた。

 教師達も、お手並み拝見という感じだね?

 主にアリサではなく周囲の学徒に対してだけど。


「あの子達、でも、アリサさんといえば、あの時の?」

「リンス? 助けたらダメよ? 助けたら、あの子、更に酷い仕打ちを受けるから」


 その間もAクラスの方ではリンスがある事を思い出してアリサの助けに行こうとしたが私はリンスの右肩に手をやり制止した。

 下手に王族が関わると平民のアリサの人生が詰むからね? ホントに詰むからね?


(本気で止めて!?)


 リンスは私の手を振りほどいて反論した。


「でも! こんな事は見過ごし出来ません!」

「放っておきなさい。それよりも、自分の身を守る事が最優先ね?」

「え?」


 私はその言葉を聞きつつも、あちらの状況を注視しながらリンスに提案した。

 まぁ既に遅しの感じも見受けられるけど。

 それは一人ずつが個別に火・水・木・金・土魔術を行使し、明らかに相克して不発に終わるようなアホの所業であった。


「ぎゃ!」

「はひっ!?」

「うひょ!」

「うぺっ!」

「ギャン!」


 それらはアリサの周囲に張ったカウンター魔術を喰らい自身が打ち込んだ魔術が跳ね返り、そいつら自身が魔力無しではなく魔力有りという証明をしたに他ならない珍事であった。

 予想よりも低レベルだったみたいで防御結界は必要なかったみたい。

 その日の一件によりアリサは学長室に呼び出され魔力持ちという事実を隠していた事に対してコンコンと説教されたのは言うまでもない。

 原因を作った者達は総じて反省房送りとなり止めなかった教師共も減俸処分と相成った。


  ◆◇◆


(一先ず、説教は身代わりに任せてるから、今はこっちをどうにかしないとね)


 そう、アリサの説教の間も私は一人別件対応していた。


「で? あの双子の意味は何なんだ?」

「仕方ないじゃないの! 急な事だったし」


 殿下の尋問である。

 もちろん私の自室で、だが。


数年ぶりの改稿で申し訳ございません。

改稿を行いつつ続編を書いていきます。

〈改稿日:2022年12月17日〉

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