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魔王に巻き込まれた大賢者、今世こそ隠遁生活を送りたい(願望)  作者: 白ゐ眠子
第二章・転生した魔王は問い掛けたい。
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第22話 元大賢者は、神に出会った事を後悔する (上)


 私達が夢を見た日から数週間後。

 周囲のバカ共が私相手に、


「「「自主退学!」」」


 っと声高に叫んでいる最中。

 私はそれらを相手に無視を決め込み隔日で寝泊まりを強要してくるリンス姫殿下の行動に頭を抱えていた。

 私が王族らしからぬ態度で居るから『再教育だ!』って感じで泊まる度に王族教育を強要されるのだ。


(私、平民なんだけど〜?)


 それと共に唯一の落ち着ける場所と化した私の寛ぎスペースことロニー寮の地下階・零号室では何故か、


「殿下? 毎回思うのだけど、何でこの部屋に出没するの?」

「ここが一番過ごしやすいからだが? なにぶん、第一位階に与えられた部屋というのは臭い水と沐浴場な室内風呂、薄っぺらい布団だけだからな? 窓も何故か鉄格子があってまんま牢獄の様な有様だ。幸い、トイレは廊下外だが」


 殿下はベッドに寝そべり、視線は教科書に向いたままの状態で第一位階の事情を晒す。

 私は布団が皺くちゃになると思いながらも、入寮時の部屋と変わらない事情を知った。

 あ、お茶請けはビスケットがあったわね。

 殿下ってば、このお菓子が大好きだし。


「第一位階も無印と大差ないのね?」

「そうか? だが、ここは居心地が良いぞ?」

「私が頻繁に改良したからね? リンスの部屋に行く度に不慣れで身バレが起きないよう似せて改良してるから」

「それでか。入学前、身分を偽る前に訪れた貴賓室かと見紛う程の居室と同じ出来だからな? しかし魔術でもここまでの事が出来ようとは。先程申した室内形状は同じという文言が嘘に思えたぞ?」

「元々同じ、とは言い難いわね? この部屋は第一位階より酷かったから。そのうえ防犯なんて物も無かったし」


 すると殿下は私が言った「防犯」という言葉で視線を上げてキッチンで紅茶を準備中の私を見つめる。


(良い茶葉とビスケットが手に入ると常に来るよね?)


 恐らく、私の代わりに用意しているリーナが漏らしてそうだけど。


「ん? それはまさかアレか? 最近、この寮の地下がダンジョンと化してるという噂があるのだが?」

「まさにソレね? 実際に王族と学長以外の侵入は不可としたの。だってねぇ、寮母からして〈無印排斥〉を声高に叫ぶんだもの」


 私はティーポッドとカップの準備を終えてビスケットと共にテーブルに持ってきた。

 その際に殿下の疑問に答えたところ、殿下はベッドからのそりと起き上がりテーブル席に着きつつ思案する。


「なるほどな。学長が如何に位階差別撤廃に動こうとも教職員の意識改革をせぬままだから、どうしても(しこ)りが残るという事か。それも学徒ではなく教え導く者がそれでは収まる物も収まらないであろうな」

「まぁ人心教育は一番難しいからね〜。下手に精神干渉すると魔術回路の件と同じ事が再発するだろうから」

「あー、あの件か」


 殿下もその件を思い出し嫌そうに首を振る。

 それほどの事だと王家では事前教育がされているのだろう。


「そそ。その件ね? だからこそ国を挙げても出来る事は何もないと思うよ? 仮に大賢者が居たとしても、お手上げとなるのが人の心という物だから」

「その大賢者が言うのだから間違いないであろうな?」

「元、ね?」


 その後、ゴライアスの負の遺産こと位階差別の話をビスケットと共に紅茶でお腹の中へと流した私達は、とある本題の話をした。


「それで授業の方はいいのか? 今は時間的に授業中だろう?」

「そういう殿下だって授業中でしょう?」

「いや、この教科書を見る度に思うのだが頭痛がしてな?」


 殿下は流し見していた教科書に視線を移して苦笑したので私も理由が判ると同意した。


「まぁ、判るよ? それが今のこの国の最高水準らしいから。最も落第クラスと比べたら幾分事実に近いけど」

「事実ね。いや、ここまで間違いだらけの物を見ると国の先行きが思いやられるのでな? 魔族と拮抗しようとする者を育てようとする学園が実際には魔族よりも役立たずの者を大量生産している事実に気付ないのだから」

「流石は魔族の将だった魔王様ね? 言葉に重みがあるわ〜」

「元、な?」


 殿下も危惧するのは次代の魔王と相対する者を用意しようと準備した学園が無能を大量生産している事に哀れみを見せたのだ。

 実際に使い勝手としては魔族が無難って思えるのも判る話だよね?

 この会話は外では憚られる内容だけど。


「それで次代の宰相様はどうなさるつもり?」

「うむ。そこが難しい話ではあるな。この学園も王立の名を冠してはいるが、教育方針はこの独立機関としての学園に委ねられておる故、王家も簡単には口出しが出来ぬのだ。それも大元の運営自体が…」

「あー〈人亜連合〉が運営母体って事か」


 それはシルフェンド王国が、大賢者が最後まで住んで居た国であり学園を設置するには名目上、都合の良い場所として〈人亜連合〉に指示されたらしい件である。

 この〈人亜連合〉という者達はシルフェンド王国を中心とした周辺国の連合であり、その構成も以下の様な国々で構成されている。


 ──────────────────

 ◇人類亜人連合 (人亜連合)

 一:アレネリア宗主国 (人類国家)

 二:サドッカー帝国 (人類国家)

 三:エルリア首長国 (亜人国家)

 四:ソイオンス王国 (混在国家)

 五:シルフェンド王国 (人類国家)


 ◆魔導連合(魔王軍)

 一:ハーディス王国(魔族国家)

 二:ゲイス魔導国(魔人国家)

 三:アイドリア創主国(亜人国家)

 ──────────────────


 それと共に敵対者である魔導連合も大陸の反対側、海を挟んだ別大陸に存在しているが今は比較的大人しいらしい。

 この間の進軍は偶々だったのだろう。

 その成り立ちこそ歴史を紐解けば。

 元々の〈人亜連合〉には〈アレネリア宗国〉が存在して居なかった。

 否、別勢力として存在して居たが魔術的な国力に依って〈人亜連合〉が大敗して軍門に降り〈アレネリア宗国〉は〈アレネリア宗主国〉へと名を変え二番目に国力のあるサドッカー帝国を監査とし好き放題行う国家の事である。

 この歴史も今や〈アレネリア宗主国〉に依って禁忌として封印されているが。


「あぁ。そこで各国に間違いであると提示すればアレ等が黙って居らぬのでな。魔術回路の件でも授業封印の議題で一苦労したらしいが…」

「アレかぁ」


 このアレとは? と疑問に思うだろうが。

 このアレとは先に述べた如く〈アレネリア宗主国〉という宗教国家である。それは大賢者が神に会った、あるいは神から力を授けられたとして、その功績の元となった〈魔術回路〉の授業を否定した事で一時は内部闘争に発展しかけた事があるらしい。

 だから今回の間違いに於いても大声を上げて注意が出来ないのだ。多分、父さんでもコレばかりは手出しが出来ないよね? 一応、特別棟の授業は何とかなったみたいだけど。

 それは魔術回路がないと不可能な授業と伝えたところ「ほれ見ろ!」と言ってまたも大騒ぎしたそうだから。全く以て困った国家である。

数年ぶりの改稿で申し訳ございません。

改稿を行いつつ続編を書いていきます。

〈改稿日:2022年12月17日〉

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