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魔王に巻き込まれた大賢者、今世こそ隠遁生活を送りたい(願望)  作者: 白ゐ眠子
第一章・転生した大賢者は隠れたい。
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第20話 元大賢者は、隠遁生活から乖離した事に気付く。


「アレとは何だ?」


 殿下は私が発した対策が聞きたいというように問い返す。


「ここの物理障壁ってね? この透視水晶と連携してて、この魔道具に〈転換の書〉を載せると一時的な〈転換防壁〉となす事が出来るの。これは国境警備魔術を使う魔道具の劣化版なんだけどね」

「はぁ? 劣化版だと? だが、このような魔道具など城では見た事がないぞ?」


 私は書庫の脇に置いた大型の〈書物読取魔道具〉を動かして透視水晶に接続した。

 この劣化版という意味は大型という意味で持ち運びが出来ないという意味なの。

 殿下は「国境警備魔術」の魔道具と聞き初見であると驚愕を示したので私は魔導庫に放置されていた代物を露見する。


「それはそうでしょうね? その現物は一階の魔導庫の内に仕舞われてるから」

「何だと!?」

「恐らくゴライアスのバカが、いつか使うから〜って事で城に置かずに書庫に仕舞ったまま忘れてるだけでしょうけどね?」

「あの者のすっとぼけが、この事態を引き起こしているのか」


 殿下は私が言うバカ弟子の悪い癖を知らないがため師団級の軍団に入られた事を苦慮した。

 私もバカ弟子を改めて殴り飛ばしたいという心境に駆られたが改めて現物の説明を行った。


「困った事にね。現物は〈障壁の魔杖〉という物なんだけど左手に持つ書物と右手の〈魔杖〉を重ねて書物を叩く事で書物の威力を国境結界の物理障壁に付与出来るという代物なの。扱う書物は等級が高い程、与えられる一時障壁が強固になるという代物でね、扱う者が王族で有らねばならないという利用者の制限付きなのよ」


 それほどの魔道具を放置とかバカの所業である。


「それほどの物か! ん? では三〇〇年前に我の撃ち出した〈極大始原魔術:アブソリュート・グラヴィティ〉を凌いだのは…」

「あー、アレね? そうね。当時は利用者制限を設ける前だったから私が〈解呪防御の書〉を読み込ませて、最質魔力を用いて強化した結果ね。その代わり、防御結界など不要と宣った国は物の見事に消し飛んだわね」

「なるほど… で、あれば回収して母上に献上するしかあるまいな?」

「それが良いでしょうね。ともあれ、それも外の大変態を片付けてとなるけどね」

「いや、既に片付いてるだろう?」

「まぁね。サキュバス婆がインキュバス爺に、その逆も巻き起こって驚愕のまま全撤退したみたいね。今回は魔族限定としたし人間達は影響外だから安心してね」


 私達の会話の間に結界の外では阿鼻叫喚の渦が巻き起こっていた。それは結界周囲に居座る魔族・淫魔や夢魔を指定した物で結界に触れることなく肉体性質を書き換えたのだ。

 特に装備を外したサキュバス婆が一番顕著な変化を見せたのだけど、それは萎んで生えて肌も立ち所に皺くちゃの爺さんに変貌したのだ。


(ある意味で肉体偽装もしていたのかしら?)


 若々しい肉体が年相応に変貌したから。


  ◆◇◆


 魔族の侵攻を受けた日から数日後。

 例の〈魔杖〉は殿下を経由して無事に陛下へと献上され国防に於いて最も重要な魔道具が手に入ったとして大変喜ばれたそうだ。


「だが、如何せん…」

「まぁそんな事を言うなよ? 立場上それが最善策だったのだから」


 そう、今は殿下との婚約披露宴の最中なのだけど私は頭の痛い問題を突きつけられており、どうしたものかと悩んでいた。


「アリス姫殿下、此度の御婚約、誠におめでとうございます。つきまして殿下の学籍を王立魔導学園のAクラスに置かせて戴きたいのですが宜しいでしょうか?」

「!?」


 という、学長ではなく副学長の媚びへつらいに巻き込まれたのだ。私は立場上反応に困ったので殿下に丸投げしたのだけど、


「構わぬよ? ただ何分、彼女も忙しい立場に置かれておるから籍だけを置く事として戴けないか?」

「それは勿論で御座います。籍だけでも問題は御座いません」

「ではそのように手配を頼む」

「はい。委細、承知致しました」


 っと丸投げした結果、学籍が二つとなりました。どうすんのさコレ? ちなみに何故この経緯に至ったのか理由が存在してて。


「まさか、我に懸想をしてた姫がサキュバスだったとは想像しようがないぞ?」

「その姫が校外学習の日に行方不明となり、結果的に退学処分となった事で穴埋めのために私を入れるってどうなの? そもそも私、姫じゃないし」

「貴族や民達にとっては姫も同然だろう? それが例え隠された姫であったとしても、表舞台に出た以上はこういう扱いを受けるのが常だ」

「うぅ」


 私は隣に居る殿下から諭されて唸った。

 すると、そこに…


「お兄様、ご婚約おめでとうございます」

「おぉ、リンスか」

「アリス様は、お義姉様とお呼びしても宜しいですか?」


 リンス姫殿下は微妙に〈威圧〉を効かせた笑顔で私に問い掛けたのだけど、こちらとしては笑顔で首肯し受け流すしかなく、応対を殿下に丸投げした。声を聞けばバレるのは必定だ。

 会話したという面識がある分、そのリスクは半端ない物となるから。


「ありがとう存じます。では、お兄様との馴れ初めをお伺いしても…」

「リンス、それはだな。母上がお決めになったこと故、勘弁願えないだろうか?」

「ですが、面識の無い者を娶るというのは…」

「いや、面識はあるぞ? お主が先日まで居た領地にて彼女と私は出会っておる。その時は、大暴れしたという冒険者との面談だったがな」


 リンス姫殿下は兄離れが出来てないのかブラコンを拗らせた睨め付けを笑顔の裏から行っていた。殿下もタジタジだから普段から離れて暮らしていた理由はそこにあるのかもしれない。

 というか面談じゃなくて尋問だよね?


「そうでしたか…。では?」

「うむ。彼女は叔母上の娘(・・・・・)だからな、そこまで言えば判るであろう?」

「はい。そういう事ですか」

「そういう事だ」


 この、とある理由から察したであろう姫殿下はヨハネス殿下の言い訳を受け流しながらも、この場を収めて下さったようだ。

 まぁ控えである私が表に出た以上は気を引き締めろという陛下の思惑があるのかもしれないけどね。王家のゴタゴタに巻き込まないで〜。


数年ぶりの改稿で申し訳ございません。

改稿を行いつつ続編を書いていきます。

〈改稿日:2022年12月17日〉

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