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魔王に巻き込まれた大賢者、今世こそ隠遁生活を送りたい(願望)  作者: 白ゐ眠子
第一章・転生した大賢者は隠れたい。
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第17話 元大賢者は、雪嵐を巻き上げる。


「伝令! 伝令!」


 婚約披露宴の話し合いをしている最中、騎士団の通信兵が伝令と叫びながら執務室へと走ってきた。


「どうしたのですか? 騒々しい」

「失礼致しました、陛下」

「それで何かあったのですか?」


 伯母上は伝令兵に対して話し合いを中座しつつも事情を聞く。


「は! 実はミッドハイド領に魔族が現れたとの報告がありまして…」


 すると、それを聞いて驚いたのは伯父上であり、伯母上は思案しながら指揮系統の確認を行っていた。


「な!? それは誠か? して、学生達は大丈夫なのか?」


 その間も伝令兵は詳しい事情を報告する。


「は! 魔族が現れたのは学生達の居るミッドハイド領の領都より、南に一〇ケメイルの地点であり、今のところは護衛騎士達が警戒して姫殿下達をお守りしております」

「そうか。然し、一〇ケメイル南というと…」


 伯父上は伝令兵に言を聞き唸るように地図を拡げる。

 殿下も地図上に現れた印を見つつ呟いた。


「場所的に大賢者の魔導書庫がある地点か?」

「しかし、何で魔導書庫に魔族が?」


 すると、伯父上は私の問い掛けに対し、


「恐らく、書庫にあるとされる〈転生の書〉を奪いに来たのではないか?」

「え?」


 寝耳に水な内容を口走る。


(え? ちょっと待って!? そんな代物は書庫に置いてないわよ!?)


 実際に魔導書庫にあるのは暗号化された前世の私の日記帳やらスケジュール帳などが並び、肝心の〈転生の書〉という代物は残してない。

 それは真っ当な魔術師ならば己が叡智を後世に口伝として残し記録と呼べる形では残さないからだ。

 それが何の因果か存在するとして狙われたとするなら勘違いも甚だしいだろう。

 だって私、口伝を残す前に巻き添えで亡くなったのよ? バカ弟子すらも知らない代物が存在するとか呆れてものが言えないわ。


「これは、行くしかないかな…」

「行くって? 何処に?」

「ミッドハイド領の魔導書庫にね。場所は判るから、あれだったら魔族を吹っ飛ばしてくるのも止むなしだし」

「うむ…。しかし危険ではないか?」

「まぁ必要とあれば〈解放〉するし、大丈夫だと思うよ?」

「なら、今から馬車を用意するか」

「あー、馬車は不要だから気にしなくていいわよ?」

「「「え?」」」


 私が言外で様子見に行くと言うと何故か殿下が心配して下さり、馬車を手配しようとしたのだけど断りを入れた途端、伯母様達は総じて目が点となったの。あぁ、転移魔術って失伝してたっけ。私は伝令兵が居る状況ではあるが仕方なく手札を切る事とした。


「えっとね? 実は以前、とある魔術を発見してね? 今は私だけが行使出来るのだけど…」

「それって、まさか転移魔術か? ゴライアス殿が近距離しか出来ないとされる?」

「そう、それね? 未解放なら距離的に休み休みの移動が出来るし、解放してなら書庫の傍までひとっ飛びだから」

「全く規格外もいいところだな。まぁ幸い、お主が傍に居た事が吉と出たか?」


 殿下は私の言葉を聞くと、呆れのある苦笑いのまま安堵していた。

 陛下もそれならばという頷きの元、


「アリスよ。そなたにミッドハイド領の魔族討伐を命じる! ただまぁ、無理はなさらないでね。何かあると私がリースから怒られるから」


 陛下は真面目な顔で私に命じるも、その直後より破顔してしまい私も乾いた笑いで返した。


「ははは… は! 謹んで拝命致します!」


 伝令兵の怪訝(けげん)な視線を感じて命令を受諾した。


「では、我も連れて行ってくれるか?」

「殿下!? よ、宜しいので?」

「うむ。どのみち、今回の件が終わり次第合流する予定だったからな。早いか遅いかの違いだ。頼めるか?」

「承りました」


 そうして私と殿下は執務室内にて換装魔術を行使し、身形を冒険者の姿へと換え、城外へと転移した。その後には苦笑したままの伯父様と陛下、目が点となった伝令兵のみが残った。


「全く、大した娘じゃないか。リースの功績は大きいな?」

「そうね。コホン! 今ここで見聞きした事は今すぐ忘れなさい」

「は! 承知しました!」


 陛下は目が点のままの伝令兵に対して厳命するのであった。公には出来ない命令だからこそ周囲には隠す必要があるよね。


  ◆◇◆


 一先ず、城外に出た私は殿下の身を護るために、とある魔道具を手渡す事とした。


「では殿下。この腕輪を着けて戴けますか? 着けた直後は身体が暑くなりますが必要な措置ですので我慢して下さい」

「? あい、判った」


 殿下は何の事なのか怪訝となるが無理して付いてきた事を思い出したのか素直に受け取って下さった。そしてこの後は己が魔力を最大量練り上げながら行う解放である。


「では。風を纏い・羽音と共に・氷化の滅びよ顕現せん・全風氷紋解放フル・サーキット・リリース!」


 私が詠唱呪文を唱えると身体中の魔術回路が青白い光を発し銀髪を巻き上げる。そして最後の鍵言の直後、猛烈な吹雪が私を中心に発生し辺り一面が雪化粧を纏った。

 今回は見た目の偽装を含めて並列行使していたため、魔術回路の偽装を忘れていたよ。


「途轍もないな… いや、この腕輪が有って良かったと思えるぞ?」

「ですね。傍に立つ衛兵達が寒々しい格好でこちらを見てますし、サッサと移動しますか?」

「うむ。では頼む」

「では、行きます!」

数年ぶりの改稿で申し訳ございません。

改稿を行いつつ続編を書いていきます。

〈改稿日:2022年12月17日〉

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