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魔王に巻き込まれた大賢者、今世こそ隠遁生活を送りたい(願望)  作者: 白ゐ眠子
第一章・転生した大賢者は隠れたい。
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第16話 元大賢者は、願望から乖離する事に気付けない。


 その後の謁見は一通りの流れを終え、殿下と私の婚約が翌日より通達として出される事となった。そして今は陛下の執務室へと移動して伯母と姪、そして子息と伯父だけがこの場に居り先程の話を続けた。


「さて、ここからはリンスの母として話しますが、アリスさん。ゴブリンの群れに攫われた娘を助けて下さってありがとう」

「いえ、伯母上。お気になさらず。私が偶々指名依頼を受けた時に助けただけですから頭をおあげ下さい」

「アリスよ。そこは素直に受け入れるものぞ」

「うっ、はい。伯母上の感謝、受け入れます」

「ありがとう」


 陛下もとい伯母上は私の言葉を聞いて、それはもう嬉しそうな表情で感謝を述べた。

 すると、今度は殿下が怪訝(けげん)となりながら疑問に思った事を口走る。


「しかし、お爺様は何故リンスを一人で帰らせたのですか?」

「リンスが言うには途中までは護衛のBランク冒険者が居たそうだが、王都の手前だったか? 何処かで魔術戦が勃発した際に冒険者達が散り散りとなって逃げたというのだ」


 殿下の質問に対し宰相閣下こと伯父上が答えたので私はギルド支部で聞いた事を口にする。


「あー、多分遺跡の調査隊に居た魔術師団の事ですね。全滅したって話ですが…」


 すると、伯父上は苦々しい顔をした。


「うむ。その件も執政部に報告が上がっておるが、その際にゴブリンの討伐依頼をも騎士団が拒否したとあってな。まさかリンスが攫われて居る等と誰も彼も理解していなかったらしい。しかも肝心の逃げた冒険者達までも己が身可愛さに無事送り届けたと報告があって今や隣国に逃げているというしな」

「隣国? ソイオンス王国ですか? あの地から近い隣国ならそちらでしょうから」

「そう、聞いておるな。報告を受けたのも国境を越えた先の支部らしいからの。まぁたちまちは依頼を受けた者達は国家反逆罪として指名手配しておるから、この国に帰ってくる事はあるまい。事実上の国外追放だが、それ相応の事をしてくれたのでな」


 私が言葉尻から逃げた先を思案すると今度はとても重い罪状を冒険者に突きつけたという。

 おぉう、逃げた先でも仕事を失うというか盗賊まっしぐらな罪状じゃないの!?


「なるほど。色々あって私が指名依頼を受けて…」

「リンスを助けたという事か。アリスの巻き込まれ体質も時に役立つという事だな?」

「殿下。ま、まぁ、結果として危うく身バレしそうになりましたけど今回は何とか回避しましたから今後も気をつけたいと思います。隠れに隠れてやり過ごすように…」

「やり過ごすって…。でも俺との婚約が表沙汰となるとリンスの質問攻めが俺にくる事になるのだが?」

「それは仕方ない事ではないですか? 私はあくまで控えです。表沙汰となっても何処に住まう者なのか知りようがないでしょう? 普段のアリサはともかく、アリスとしては王立魔導学園の籍が無い者となりますから」


 殿下は先の婚約の事もそうだが普段の私に対しての疑問を口走る。


「それはそうだが…。だが、如何せん、何故魔力無し等と演じる事としたのだ?」


 私は居住まいを正しながら自身に施された魔術回路の一端を見せつつ事情を話す。

 私の場合は全身に〈風氷紋〉を描いているので、今は右の掌だけを見せる。本来は身体の隠れた部位のみに施すものだけど魔術効率を考えると全身の方が無難なのだ。


「己が身に魔術回路を持つ者が学生など出来ないでしょう? リーナから聞きましたが卒業後に与えられる代物を自身で施せる者など前代未聞です。それに元々は学園に入学するつもりは有りませんでしたし、リンス殿下から学園の名前を初めて聞いて気になって入学したに過ぎませんから」

「そ、そうか。確かに前代未聞だな」

「とはいえ自身で施せる者とはライオネル殿も人が悪い。そのような教育を愛娘へと施しているとは」

「ふふっ。実際にリースも彼から施して貰ったそうですし、親の子なのかもしれないですね? 帝国の皇弟が相手ではゴライアス殿も施し自体が不可能でしたし」


 とまぁ他者が聞いたら白目を剥くような会話が続くけど、この場は身内しか居ないため、気が緩んでいるのかもしれないね。

 次の話題は先も述べた如く婚約理由である。


「それで、今回の婚約の理由をお聞かせ戴けますか?」

「そうだったな、それが本題だな。姉上、お願い出来ますか?」

「そうね。実は先程も名前が出ましたが、ソイオンス王国の姫君がヨハネスに懸想をしてましてね。今はリンスと共に学園のAクラスに在籍して居りますが、ヨハネスが誰とも婚約してない事を餌に自国の国土割譲と娘を差し上げると打診が入ったのです。ただ、その時に実は相手が居るとして先方にお断りしたため…」

「私に白羽の矢が刺さったと? でも国土割譲という手は一体どういう事ですか?」


 私は伯母上の苦しい言い訳を聞きながらも、事情を伯父上に聞く。


「それが全く困った事にな? その領地が魔族によって思想汚染された地域なのだ。場所としては校外学習をしている領地の隣だな」

「なるほど。それは由々しき事態ですね。魔族の思想汚染というと魔王が数年後に復活するという話でしたか?」

「そうなるな。大賢者と共に滅びた者が復活とか迷惑千万な話だが、その汚染が我が国にまで飛び火するのは避けたいからな。お断りとしてアリスの名が出たのだ」

「まぁ私としては殿下の事は嫌いではありませんし、そういう事情なら素直に受け入れます」

「そうか! それは助かる」

「そうと決まれば婚約披露宴の準備よね! リースとライオネル殿と、お父様達を呼んで盛大に祝わないと!」


 そうして私と殿下の婚約は正式に結ばれ、殿下も一安心という表情であった。

 先程までは仮契約という扱いで臣下へのポーズを示したともいう話である。


(しかしソイオンス王国の姫君ねぇ?)


 Aクラスを見た時に居たかな?

 まぁ何れ判るからいいか。

数年ぶりの改稿で申し訳ございません。

改稿を行いつつ続編を書いていきます。

〈改稿日:2022年12月16日〉

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