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魔王に巻き込まれた大賢者、今世こそ隠遁生活を送りたい(願望)  作者: 白ゐ眠子
第一章・転生した大賢者は隠れたい。
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第13話 元大賢者は、面倒事へと首を突っ込む。


 そんなこんなで校内巡りを引き続き行った私は特別棟と呼ばれる場所へと移動した。特別棟には例の大賢者候補の二百名が居るらしい。


(へぇ〜。解析陣を読み解く授業ね。魔王軍が用意した連携陣を精巧に複製したのね。ただ、魔力量と質を読み間違えてるわね。そこに与えるのは魔術回路を通した偽装魔力でないと解析時に…)


 ─バチン!─


(ほーら、言わんこっちゃない。レジストされて反転しちゃった。しかし、この状態だと魔術回路を構築する授業は行ってないのかしら?)


 全盛期、否、前世での私は己が精神上に魔術回路を構築していた。それは肉体と魂との間に存在する精神に対し魔力的な紋様(・・)を刻み付け魂に宿る魔力性質の変換を行うのである。

 通常の魔力を用いる生活魔術等の基礎魔術のみであれば大仰な魔術回路は不要な部類となるが、魔獣討伐に於いては質を高める魔術回路が必須だった。

 それと、この学園での指標たる位階は魔力量のみで判別する物だけど、この魔力量とは生まれながらの素質と成長期までの魔力操作の修練で高めた度合いの結果(・・)でしかない。

 そのため努力を怠った者と、そうでない者の違いだけが明確に存在するのだ。魔力隠蔽してる、私とヨハネス殿下は例外だけどね。

 一先ず話を戻すが、この魔術回路というものに限って言えば、魔術使い・魔術師と魔導士、果ては賢者と呼ばれる者との差違を示す指標ともなりうるもので刻印しているかどうかで話が変わる。

 斯く言う私もスキル判定の儀以降に自らの手で施術を行い、必要な場面では魔術回路を〈解放〉して魔力の質を高めるのだけど、それをすると確実に周囲が凍結してしまうの。


(一番最初に〈解放〉したのはスタンピードの時だったかな?)


 どうも、今世での資質は風氷系に特化してるようで、前世の風系と違い扱う場所が限られているのだ。そのため、発動直後から周囲が冷え込み、誰もが寒々しい格好で震え上がっていたのを今でもハッキリと覚えている。

 その結果、寄親殿からは『必要と思える時以外は〈解放〉するな!』と命じられている。

 でも、魔術回路の事だけは何故か一部の者達は知ってるみたいだけどね?

 教育に反映させない理由って何だろう?


(うーん、見るからにしてないみたいだね? 賢者といい大賢者といい最終的に精神を弄る事までしないと到達しない人外の領域だから授業では教えないのかもしれないね。とはいえ、それをせずに成功をなそうとするのは愚の骨頂だよね?)


 そうして私は落胆の色を見せながら特別棟を後にした。学園を用意した功績は高く評価出来るけど落第確定な授業とか位階差別とか、あのバカ弟子には今一度説教をすべきかしら?

 面倒だからやらないけど。


  ◆◇◆


「本日の授業はここまで! 来週の初めには校外学習があるから自身の考えるテーマだけは決めておくように! それと、そこの無印、お前には特別課題を出しておくから、校外学習の三日間は寮内で熟すようにな!」

「はい。承りました (棒)」

「ん? まぁ、了承したというなら、構わないか。後で職員棟に受け取りに来るように」


 授業は終わり教師は〈身代わりゴーレムちゃん〉を相手に偉そうな素振りで指示を出す。

 ちなみに私は〈身代わりゴーレムちゃん〉の隣に立ち、この指示を聞くに留めた。

 恐らく復習の意味合いで用意したものだろうから、板書している内容だけ記せば問題ないだろう。


(とりあえず、ノートだけは複製して保管ね。どうもきな臭い動きが見えてる(・・・・)し)


 私は左の瞳に映る光景を目の当たりにしたので〈身代わりゴーレムちゃん〉と瞬間的に入れ替わり、今後の状況を注視した。


(動きとしてはノートを破いて中庭の庭園に棄てる? そのうえ反省房送りにせず、示し合わせた副学長に訴え出て、私の退学まで持っていく、という話し合いを副学長の娘と行った。見返りは卒業資格か。全く烏合の衆とはこのことか)


 右の瞳に映る光景を目の当たりとし呆れのある表情でこれから動こうとしたバカ達を睨めつけた。


「叶わない夢はこちらから(・・・・・)差し上げるよ」


 私は彼等に聞こえないように呟き、こちらに向かってくるであろう、教室内外の主犯格共を総じて中庭の庭園内へとご案内した。


「え? 今、消えた?」

「また!? どういう事よ?」

「見て! 副学長とラーナ様まで池に入ってる!?」

「あー、学長がすっ飛んで来て、副学長を叱責しているわ」

「やはり、位階差別反対派の筆頭の姫殿下(・・・)が在籍してるから、何処かしらでお怒り(・・・)を買ってるのかもしれないな?」


 その直後、学生達は中庭が見える窓から侵入者達を眺めて口々に己が言葉を口走る。


(というか、最後の一言は殿下では?)


 そうして意味も判らず庭園に入り込んだ副学長は減俸処分となり、その娘と共に動こうとした烏合の衆達は校外学習の日も含めて別枠での特別課題を言い渡されていた。

 ようは長ったらしい反省文である。

 ちなみに、私に与えられた特別課題はというと魔術史に於ける大賢者が成し得た成果に関するレポートだった。

 どうも直前の授業が魔術史のであり今回の校外学習も王都から数ケメイル離れた大賢者の足跡を歩むという勉強会だそうで私の黒歴史を暴くという愚行そのものである。


(成果の詳細は明確に覚えているけど何を知りたいのか不明よね。この際、魔術回路のレポートでも書いてあげようかしら。どうせバカ弟子すらも忘れてる事案だろうし思い出させて授業に盛り込む必要があると提案しましょうか?)

数年ぶりの改稿で申し訳ございません。

改稿を行いつつ続編を書いていきます。

〈改稿日:2022年12月16日〉

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