表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/27

第1話

「……いやだわ、降ってきた」


 曇りだった天候は、更に天候が悪化し雨が降り始めた。その雨も勢いが増している気がする。その証拠に雨音が前より大きく、風も吹き始めた。


 雨が降ったのは丁度、昼頃。いきなり降ってきて洗濯物を職員総出で取り込んだ。故にまほろの髪と服はほんの少しだけ濡れていた。


「本降りにならないと良いのだけど」


 寮母室の窓から天を見上げるまほろは、微かに呟いた。まだ、通常の降り方ではあるが、雲を見てみると、本降りになりそうで心配だ。


 出来れば、これ以上悪化しないで。と願いつつ、まほろは手に持っているタオルで髪を拭く。水に滴るまほろは、何処か色っぽく見えて美しい。

 そんな仕草を晒しつつ、まほろは部屋を出た。


「兎に角いまは目の前の仕事をしないと」


 願うことばかりしていられない。小走りでやる事を頭の中で整理しつつ、その現場へと向かう。その時だった。


 ザバァァァァァーーッッ!!!! ビュオォォォォーーー!!!!


「ひゃわっ」


 盛大な雨音と、強風の音が鳴り響く。降るなと願っていたのにバケツをひっくり返した様な雨と、荒々しい風が吹いてしまった。まさに警報クラスの悪天候……。


 思わず可愛い声を出して驚いてしまったまほろは、呆然と外の様子を見た。



「わ、わぁ。突然降ってきたわ」


 今しがた洗濯物を取り込んで良かったと安堵しつつも、まほろは心配になってしまう。


(これ、嵐……よね)


 通り雨と言う感じではない。廊下の窓を見たところ、一面曇天。暫く続くと思ってもいい。


「放課後までに止んでくれると良いんだけど……」


 淡い期待を胸に、まほろは歩んで行くのであった。







 時は進み放課後……。学園の3年6組教室内。生徒達は不安と心配にかられていた。


 窓に激しく打ち付ける雨、割らんばかりの勢いでぶち当たり、喧しく鳴り響く。風の音も凄まじい、ガタガタと窓を揺らし……本当に壊れてしまいそうだ。


 窓から離れて、生徒達は教室内でザワザワしながら待っている。

 学校から近い生徒は充分に気を付けての帰宅。そして寮生は泊まっている寮へ帰らせた。


 残っている生徒はと言うと……。


「うん、そうなの。いま、学校で待機だって言われた。自転車で帰らせるには危険過ぎるって……うん、うん」


 自宅が遠い生徒達。殆どの生徒がスマホを使い連絡をしている。江咲結音もその1人である。が、しかし。


「そ、そっか。ううん、気にしないで。私なら大丈夫。うん、気をつけるね、お母さんも気をつけて。じゃぁね」


 雨の勢いが酷く、学園まで来られない……と言われてしまった。殆どの生徒は親が学園まで来るそうだが。極小数、道路の状況等で来られない……と言われた人がいた。

 結音もそのうちの1人。


 はぁぁぁ……、深過ぎるため息をついて。通話を切り、スマホをしまう結音。電話ではあぁ言った手前。本当は胸が張り裂けそうな程心配だ。


(大丈夫、かなぁ)


 が、心配する相手は自分ではなく家族。早く帰りたいが。聞いたところによると、一部道路が冠水しており、運転困難な地域があるらしい。

 その地域は、結音の帰り道。


 憂鬱な気分で窓を眺めつつ"今すぐ雨よ止め"と心の中で念じるけれど。雨は当然止んでくれない。


 教室に残った生徒達は、心配で落ち着きがない。椅子に座ればいいのに、ソワソワするのか立っている生徒が殆どだ。

 いま、先生側が会議を開き親が迎えに来られない生徒をどうするかを決めているそうだが……。どうなるのだろう?


 もしかしたら、先生達が送り迎えをする? でも道路の状況が良くないと聞いているから、そうはならないかも知れない。


(はぁ……モヤモヤが止まんない。いやな気分)


 基本元気な結音も、この時は気分が落ちる。この待ち時間は嫌な不安が過ぎって、とっても嫌だ。そう思った時。


「おーい、お前達。よく聞けー」


 教室の扉を開け、先生が入ってきた。ざわついていた生徒達は水を打ったように静かになり、先生の言葉を聞く。


「今から、会議で決まった事を話すぞ。えー、帰れない生徒はだな。緊急で寮に泊まる事にする」


 その言葉にザワついた。寮に泊まる……そうなるとは思ってなかったから驚いた。その反面、寮に泊まるという状況にワクワクしている。


 だって、普段は無い事だから。


「いま、誰がどの寮に泊まるかの紙を配るから、各自取っていってその寮へ行ってくれ」


 パタパタと紙を手にし、先生は話す。その後、先生が言った通りに紙を取りに行く。結音も取りに行った。

 一体どの寮に泊まる事になるんだろう。この学園の寮は4つある。高校生寮2つに中学生寮2つ。


 結音達は高校生なので、恐らく高校生の内のどちらかになると思う。全室個室の菊花寮か2人部屋の桜花寮……。


 内心ドキドキしながら紙を手にし、結音は見た。すると……。


(あった、私の名前……。えと、私は……っ)


 結音が泊まる寮は、菊花寮だ。その刹那、朝 明子と話した時の話を思い出す。


"え? あぁぁ、その特徴なら私達の寮の寮母さんだね。雨酔まほろさんって言うの。キレイで優しい人なんだよ"


(まほろ、さん……。あの寮母さんがいる寮に泊まるんだ)


 何故だろう、不思議とドキドキしてきた。今朝あった人に対して? よく分からない気持ちになりながらも結音は直ぐに向かおうとした。


「みんな、気をつけて行くんだぞ。あ、そうだ。寮に着いたら食堂へ集合な。各寮の寮母さんから説明があるから」


 その時、先生が慌てて言った。結構大事なことを言い忘れていたみたい。無理もない、先生も不測の事態で慌てている。誰だって言い忘れる事もあるだろう。


(……よしっ。早くいこっと)


 改めて、結音は菊花寮へ急いだ。一夜限りの寮生活。後に大きな出来事が起こるとも知らないで。


緊急で寮に泊まる、このご時世。この設定は色々と無理があるし、ガバガバな感じがするけれど……気にしないで下さるとありがたいです。


読んで頂きありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ