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3章3話

 まほろと結音のデートは静かに行われていた。ただ単に景色を見ながら静かに歩く。その景色は2人にとって見慣れた景色であった。と言うのも……。


「デートって、学校の中でするんですね」

「えへへ、そうだよー。」


 そう。星花女子学園内の景色だ。毎日の様に見ていて、代わり映えのしない景色だが。不思議だ……。こうして、2人でみるいつもの景色は、どうしてか違って見えて新鮮だ。


「こう言うのも、良いでしょ? まほろちゃん」

「そ、そうね。とても良いと思うわ」


 学園内には、部活に励む生徒達がいる。それ等の視線を避けるように、まほろと結音は手を繋ぎ歩く。


 歩く場所は校舎内。誰も部活で使っていないルートを使った。ちょっぴり妙なデートコースだけれど。

 まほろと結音は気にしていない、だって今の状況がお互い幸せに思っているから。窓から見える部活に励む生徒を見たり、嵐で散ってしまった桜をみたりする。


 でも、二人が一番よく見てしまうのは。互いの仕草と表情だ。

 心臓の音、結音に聴こえていないだろうか? バクバク大きな音を立て、緊張をアピールしている。


(確かに良いのだけど。わ、私の精神が良くないわ……。ちゃんと最後まで心がもつかしら)


 この緊張、絶対に結音にも伝わっている。それを変な風に思われていないか、まほろは気が気でない。

 けれど、それは考え過ぎだ。結音は全く気にしていない、それどころか、まほろの反応を感じ取り嬉しさを感じていた。


「実はね、街に出てみようかなーって思ったんだー。でも、止めたの」

「え、どうして?」


 やめた……? なにか理由があったのか。


「まほろちゃんは、そっちのが良いかなーって思ったの」

「私が……?」

「そ。どうしてだと思う?」


 そんな風に聞かれても、全く答えが思いつかない。困らせるのはやめて欲しいわ。と思いつつも、一応考えて見るけれど、やはり答えは出なかった。


 すると、結音は答えが出ないのを察したのか話してくれる。


「街だと人の目があるでしょ? でもここなら少ないし。その方が、まほろちゃんの気が楽かなーって」

「そ、それはそうだけど。どうしてデートの時にまで?」

「だって。いつもコッソリ会ってるんだもん。デートもコッソリしないとね」


 えへへと、笑って白い歯をまほろに見せた。その笑顔に、艶やかさも感じてしまう。結音の笑顔はこんなにも魅力的だっただろうか?


(笑うと可愛いのは知っているわ。でも……ここまでドキドキさせるなんて事、今まで一度も無かった筈なのに)


 こんな笑顔を見たら、甘えたくなってきた。今すぐ結音の身体を抱きしめて、頭を撫でて貰いたい。


(……いいえ違うわ。それよりも、深く甘やかして貰いたい)


 まほろの思考力じゃ思い描けないけれど、深く関わりたい。でも、アレ以上の事なんて まほろに思いつける筈がない。

 

「ちょっぴり理屈っぽいかな? でもね、私がこうしたかったと言うのが一番の理由かも」


 考える内に、結音はまほろに身を寄せてきた。今日の結音はボディタッチが多い気がする。

 いつも触れられているけれど、アレはまほろを甘やかす為のボディタッチ……でもコレは別物の様に、まほろは感じた。


「結音さんも? 私と二人きりになりたかったって事かしら」

「そうだよ」


 率直な疑問にストレートで答えた。

 ……冗談交じりに言ったのに、まさか本当に二人きりになりたいだなんて。

 変な風に考えざるをえない。どうして二人きりになりたいの?


「だって。私はまほろちゃんに、伝えたい事があるんだもん」


 浮かんだ疑問は、1秒と待たずに結音の口から語られた。意味深な言葉は、今のまほろにとって告白前の雰囲気としか考えられない。


(そんな筈ないわ。きっと、別の事よ)


 だとしたら一体なんだろう。極度の胸の高鳴りで、周りの音は結音の言葉以外きこえない。だって、結音が次に語る言葉が気になって……それにしか集中出来ないから。


「えへへ。改まって言うと、恥ずかしいな……」

「ゆ、ゆい姉さん……?」


 恥ずかしくて中々先を言わない結音に、まほろは焦れったくなってくる。この先の言葉だけは何故だか知らないけれど。早く聞いてみたい。


 急かすように、まほろは名前を読んで。切なく見つめた。こんな事して良いの? でも、早く聞きたいの。

 まほろの想像通りの事を言うの? それとも違う? あぁ……こんな事を考えていたら胸が苦しくなってきた。


 辛くて辛くて、ソコに手を当てていると。ポツリと結音が呟いた。


「引かないで聞いてくれる?」

「え、えぇ。引かないわ」


 だから……だから早く言って? まほろはずっと待っているから。


「あ、あの。私、私ね」


 うん、もういいよ。焦らさなくていいから、早く……。胸の高鳴りがどんどん増して、もう痛いから。早く……言ってよ。

 辛さが増して、まほろはキュッと目を閉じてしまった。ソレから暫くの間が空いた。時間にすれば、ほんの数秒間だったけれど。


 まほろには、永遠の様な時間に感じる。もう、こっちから聞き出そうと思ったけれど。結音は漸く言った。


「……まほろちゃんの事が好き」


 伏せ目がちで、まほろの方を見ずに言ったけれど。その言葉はまほろが想像していた通りの、明らかな"好意"を大きく含んだ言葉であった。


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