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2章9話

 今日は結音の部活が無い日。

 いつもの様に、連絡を取り合って。まほろと結音は飽き教室で、また二人きりで会っていた。


「えへへ。こうやって合うの、もう慣れちゃった。まほろさんはどうかな?」

「そうですね。その、慣れちゃいました」


 置いてあった椅子を並べて座って、まほろは結音の肩に身を寄せている。いつもの様に、優しく撫でられて今日もまほろは癒されていた。


「だよねぇ。まほろちゃんってば、あった時よりゆったりしてるもん」


 すぅ、すぅ……と寝ているみたいな吐息を出してしまってる。それぐらい癒されているのだ。身体の全てが結音を許してる。


(……うん。やっぱりそう。ゆい姉さんは、私を癒してくれる人なんだわ、好きとかそう言うのじゃ無いのよ)


 今朝方、職員に言われたことを考え。改めて自身の想い直せた。でも、やはり完全にでは無い。


(……けど。何故かしら。あんな事言われたから? いつもよりドキドキしちゃう)


 ちょっぴり結音を意識して。触れているのが恥ずかしくなってくる。いや、それは何時もなのだが。今日は更に恥ずかしい。

 いつもより、結音を良く見てしまって。彼女の微笑みが強い印象を与えてる気がする。


 こんなにも可愛かった? 髪のキレイさ。小さな身体なのに大きな癒しを与えてくれる雰囲気。可愛い、大きくて潤む結音の瞳に飲まれそう。


「ん、どしたの? 私の顔になにかついてる?」

「ッッ。や、ぁ゛……べ、別に何も付いてませんよ」


 つい見すぎてしまって。横をむくまほろ。ん? と言いたげに首を傾げる姿にキュンと来た。


(お、可笑しい。ゆい姉さんって可愛いと思っていたけど。今日は更に可愛く見えるじゃない)


 意識しすぎてる、可笑しくなってる。落ち着かないと……。息を整えるつもりが、荒くなりすぎて。結音は、じぃっとまほろを見つめてくる。


(う゛……。いま、そんなに見られると、その。困るわ。でも、見ないでなんて言うのも可笑しいし、どうしたら良いの?)


 横を向いたまま、変な汗をかいてしまう。それもこれも、職員が変な事を言ったから。それが無ければ、こうはならなかったのに。


「ゆ、ゆい姉さん。その、本当に気にしないで? ちょっと見過ぎただけなの、ほんとよ?」


 取り敢えず、こう言って誤魔化してみるが。なんだろう、視線がさらに強くなった気がする。


(や、やだ。絶対に変な事を思われてるわ……。これをきっかけに嫌われたりなんて、しないわよね?)


 まただ、最近思わなくなった。被害的な妄想をしてしまう。怖くなった、不安になった……。だから胸が絞めつけられる。

 そんな様子を、結音は絶対に見逃さない。


「こーら、誤魔化さないの。ぜったい何かあったじゃん」

「あ、ゆ……ゆい姉さん」


 結音は、まほろの顔を自分の胸に押し当て後頭部を撫でた。その後。


「よしよし。大丈夫だよ、私といる時は何にも嫌なこと考えなくて良いからね」

「あ、う……」

「ふふふ。そうそう、落ち着いてきたね。その調子でリラックスしてよ」


 たぶん、結音は誤解してる。けれど、こんな風に癒されてもらうのは嬉しいから、何も言えない。なにより、こうされる事で"嫌われていない"という事が実感出来た。


「どう、しよう。これ、あの気持ちが膨らんできちゃう。絶対、そうじゃん。私……まほろちゃんの事……」


 その時だった。ボソボソと結音が何かを話し始めた。近くにいるまほろでも、良く聞き取れない。気になったから聞いてみる? いや……。


(今は、いいわ。暫くこうしていたいもの)


 スーッと、静かに目を瞑り。甘えていたい。


(あ。ゆい姉さんの心音……ちょっぴり早いわ。緊張してるのかしら)


 甘えている内に、初めは知らなかった結音の事を知れてくる。こうして甘やかしてくれても、結音もシッカリ緊張してるんだ。

 心なしか息づかいもちょっぴり荒い、ふと彼女の目を見ていると。熱っぽい目でまほろを見てる。


「あの、ゆい姉さん。そんなに見ないで欲しいわ」

「え、あ。ご、ごめん。えへへ、ちょっと考え事してて……」

「そうなの?」

「そうそう」


 考え事をしていた、本当にそう? なんだか誤魔化された気がするけど。まほろは追求しなかった。それ以上に、何故かモヤモヤしてしまった。


(私が傍にいるのに。って、やだ。なによこの考え……)


 まるで、不貞腐れてるみたいじゃないか。私が傍にいるのに、別のこと考えないでよ!! と言いたげな考え。

 図々しい、恥ずかしい!! 本格的に思考が変になってると悟った。


 正直、もっと傍で甘やかして貰いたいけど。今は去ろう。変な事を考え過ぎて何か変な事をしてしまう内に。


「ゆ、ゆい姉さん」

「ッッ。な、なに」


 ガバッと、勢いよく結音から離れ。真っ直ぐと彼女を見てまほろは語る。また明日にでもこうして会えば良いと自分に言い聞かせながら、まほろは続きの言葉を話そうとした。


「ごめんなさい。私、もうそろそろお暇させて……」

「あー。いけないいけない、こっち見回りすんの忘れてたー!!」


 もらうわ……。まほろは、そう言おうとした。だが、言葉を割り込むように大人の女性の声が聴こえた。


 まほろと結音は互いに肩を震わせた。カツンカツンと鳴り響く足音。よくきくと此方へ近付いている様に聞こえる。


「はぁ。アタシとした事が気が抜けてるなぁ、シッカリしないと」


 間違いない。コッチに近づいてきてる。焦る2人、途端に息を殺し。結音が小さな声で話してきた。


「ど、どうしよう。まほろちゃん」

「え、あ。どうしようって……」


 内緒で会いに来ている2人にとって。ここで誰かに見付かるのは非常に不味い。何とでも言い訳すればいいと思うが……寮母と一生徒が会う理由だなんて、早々無いから難しい。


 たまにドジるけど。いつもシッカリしてるのに、突然のハプニングに慌てている結音。あぁ……これが彼女の弱い部分。

 こんな時だけど、まほろは知れた。が、次の瞬間!!


「よ、よし……こんな時は!!」

「え、あ。ゆい姉さん、何処へ行くんですか」

「シー……ッッ。見つかっちゃうでしょ」


 なにかを思い付いた様な顔をした瞬間。まほろの手を引き、この教室の"とある場所"へ向かった。


「ほら、まほろちゃん。ここに入って」

「え、ここって……」

「良いからはやくー!!」

「え、あ。わっ、わわわっっ」


 強引に押し込まれるような形で、"とある場所"に入れられてしまった……。


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