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Futuristic Memory ――この世界に届けられた物語――  作者: 破月
里面的世界編 第四章 破壊神 〜She can never forgive them〜
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死神と破壊神

※注意:残酷な描写があると思われます。文章推敲は難しい。

「…ッ!」


 何の声を上げることも出来ず、部下に指示を出せないままエヴェリンは身構えた。全神経に意識を向かわせて指先から足先までを完全にコントロールする。


 だが、それだけだった。今この時、誰かを気遣うことなどしていられなかった。


 今ここで集中しなければ、死ぬ!


 エヴェリンは目の前の存在だけに集中し、鋭く睨みつけた。

心に湧き上がる恐怖も捻じ伏せる。


 敵が小銃を的確にエヴェリンの正中線に向けて突きつけてくる。正中線とは(すなわ)ち人間の急所。そのまま発砲されればひとたまりもないだろう。それはエヴェリンも同じ。死は確実。


 しかしエヴェリンも黙って見過ごすわけがない。肩甲骨を柔軟に回し、運動量保存則に基づく運動で射線から身体を逸らす。


 それでも銃口を正確に向けてきた敵を認め、さらには半身になった。

内臓を動かし、どうにか射線から正中線を逸らすことに成功する。


「っ!!」


 弾丸が脇腹を掠めた。血が飛び散るが戦闘服に仕込んだ〈感覚切断〉の魔法陣を起動してで痛みを遮断する。


 小銃を奪うことも頭の片隅で考えたが相手が機械の場合、人間ではありえない可動域を持つ関節を持っていてもおかしくない。その場合、思いもよらない反撃をもらう可能性があった。それに敵に痛みがあるとも思えない。だからその選択はしない。


 そして反撃とばかりにウェイヴと呼ばれる技術を使って何倍にも引き上げられた力を、持っていた小銃に伝えて突きつける。人間相手なら当たっただけで後方に吹き飛ぶだろう。

防具もない生身の人間が相手なら病院送りは避けられない。


 最悪死ぬ。


 発砲はしない。なぜならもし敵が小銃を奪う選択をした場合、こんな零距離近接戦闘(ECQB)では引き金に掛けていた指を折られてしまう可能性があるからだ。引き金に指を掛けるのは相手が届かない距離にある時のみである。


 しかし流石は機械知性と言ったところか。人間では不可能な反射能力と柔軟さ、そして速度で持ってエヴェリンの攻撃を対処してみせた。


「!?」


 奴は上体を後ろに倒して完全に避ける。しかもエヴェリンの顎下を狙う位置に足を蹴り上げながら宙返りを敢行してきた。


 それもギリギリのところでウェイヴを使って避ける。


 頬から血が飛んだ。


 人工の死神と心を殺した少女の零距離戦闘は続く。激しくも正確無比。目にも止まらぬ早業。もはや戦闘に慣れていない人間が見れば何が起きているのかさえ脳の処理が追いつかないほどに。


 時にはわざと隙を作ってそこに相手の攻撃を誘い、攻撃される手段を限定させて反撃に出る。あるいは相手の誘いには敢えて乗らず、様子見して別の攻撃手段を行う場面もあった。足を擦るように狙ったり、目を狙われたり、最早どちらかが機能停止するまで戦闘は終わらない。未来にあるのはどちらかの死しかない。

少しでも気を緩めれば、その時こそ終わりだ。


 どのくらい戦闘が続いただろうか。彼らは互角に渡り合っているように見えた。しかし見る人が見れば明らかにエヴェリンが不利であることは明白であった。なぜなら死神の攻撃は確かにエヴェリンを掠めているにも関わらず、彼女の攻撃は一切当たっていなかったからだ。

エヴェリンだけにダメージが蓄積されてゆく。


 全身は血に濡れ、繰り出された拳の衝撃によってヘルメットが吹き飛ばされ、死神の腕に触れるだけでパックリと戦闘服と腕が切り裂かれる。髪留めが切られて髪が宙に広がった。


 傷はエヴェリンが浜崎前代表が創り出した人工実存(AE)であるから傷つく度に再生していく。しかし時間が経つ度に彼女は赤く血に染まっていった。再生だって無限にできるわけではない。一定量の血を失えば人間と同じく死ぬ。体力だってずっと続くわけではない。


 エヴェリンはどんどん追い詰められていった。無理な動きをし過ぎて息も上がってしまっている。限界は近かった。それを自覚してエヴェリンの中で焦りが募っていく。しかしその焦りがさらに身体の動きを鈍らせてしまい、彼女はどんどん傷ついていった。


 もう、だめ……っ。


「リーダーッ!助太刀しますっ!」


 声が響く。


 サヤが叫び、こちらに駆けて来ようとしていた。しかしそれをエヴェリンは声を張り上げて制止した。来てしまったら彼女も死んでしまう!他の部下たちも!


「来るなっ!お前が来れば、死ぬっ!部下を連れて……くっ!逃げろっ!」


 言葉を発したことで呼吸が乱れたか、今までよりも多くの血がエヴェリンの身体から飛沫となって(ほとばし)った。誰がどう見ても勝負が着く瞬間だった。

それでもエヴェリンは叫ぶ。


 死なせたくないから。


「わたしは死なないっ!早くっ!」


 そしてとうとうその時が来てしまう。体力の限界を迎え、僅かに鈍った身体に精密な死神の小銃が突きつけられた。命を刈る鎌が首筋をなぞる。そんな様が幻視される。


 発砲。


「……っ……ぁ!!」


 エヴェリンは撃たれても小銃を奪おうと武装解除(ディザーム)を実行する。もう動けないのだ。サヤたちを逃がす時間を稼ぐためにもやるしかなかった。しかし機械知性の身体は金属合金である。人間のように指を折られることもない。関節の可動域も予想以上だった。筋力も段違い。だから結局、小銃を奪おうにも奪えなかった。それどころか僅かな動きだけで()なされてしまう。


 そしてエヴェリンの身体は機械が生み出す強大な力に吹き飛ばされ、かつ銃弾をも撃ち込まれて背後の箱に打ち付けられる。その衝撃で喉の奥から空気と血が強制的に吐き出された。


「ぐ……は……っ!!?」


 今まで流れ、服を濡らしていた血が辺りに大きく飛び散る。


 その瞬間、彼女は自分の肋骨が粉砕される音を聞いた。肺に穴が空いたのか、呼吸ができない!


 苦しいっ!


「貴様ぁっ!!」


 怒りに我を忘れたサヤが小銃を人工の死神に向けて発砲する。しかし死神は放たれた3発の弾丸を容易く避け、今度はサヤに向かって突進を開始した。


 サヤもランダムに動く奴にここが倉庫の中だというのも忘れてフルオートで乱射するが、効果が薄い。相手がランダムに動いているのもあるが、フルオートにしたせいで銃身が振れて狙いが定まらないのだ。それに偶然当たったそれも奴の金属合金で出来た身体の体表で弾かれてしまっている。全くダメージを与えられていない。


 サヤは手榴弾を取り出して、そのピンを外す。


 投擲。


 しかし閃光が迸った時には既に死神は接近を果たし、サヤの顎下の骨のない場所に銃口を突きつけていた。


「ッ!?」


 爆音、そして発砲。


 乾いた銃声と手榴弾の爆発音が響くと同時にサヤが仰け反るように背後に倒れ伏した。


「…!!?」


 …………。

 死んだ?

 殺された?


 エヴェリンの中で何か切れた。見開いた目が戻らない。呼吸が大きくなるのを感じる。身体が熱くなるのを感じる。何か、リミッターが外れた音を聞いた気がした。普段なら外してはいけないそれを。だが、今だけは、ただ殲滅すべき敵を、その焦点に映すことしかできない。


 感情が、エヴェリンの中の全てが()いでいく。


 悲しみも、怒りも何もない。感情の起伏が一切なかった。


 そして次の瞬間にはその凪いだ場所を静かな、しかし巨大で真っ暗な何かが埋め尽くす。視界が狭まって、周りの音も聞こえない。心の声も全て失くし、今不必要なもの全てを削ぎ落とした。


 呼吸も、瞬きも、表情も、言葉も全て今は必要でない。無駄に(コア)の演算能力を使っている機能を停止させる。


 それは怒りでも、憎しみでもない。ましてや憎悪でもない。それ以上の激しくも静かな激情だった。


 真に怒りで我を忘れた状態。究極のストレス状態。


 今は何も要らない。


 ――全ては敵の殲滅のために。


 エヴェリンは立ち上がる。再生しきれていない身体を無理やり起こし、血をダラダラと流しながらも戦闘態勢に入る。誰かが見ればその(おぞ)ましさに生存本能に由来する恐怖を覚えることだろう。


 しかしエヴェリンは一度感情が凪いだために理性がありえないほどに働いていた。それもどうやって奴を殺すかというただ一点だけに絞られた形で。


 傷ついた身体の効率的な動かし方。


 瞬発的なスピードと破壊力だけに注力した力の入れ具合。


 体温を上げる呼吸の仕方。


 この先のシミュレーション。


 防衛を捨てた攻撃手段。


 そして――。


【言いなさい。憎いでしょ?ほら、もう一度、あの時のように】


 声が頭に響く。自分のものではない。誰かの。


 まるで銀鈴の、エヴェリンの声に似た声が。しかし彼女のものではない声。

しかし声でもなかった。なぜならまるで音や視覚情報を介さずに直接相手の意図した意味を感じ取ったようだったから。


 そう。テレパシーのように意味だけが直接魂に響く。


【〈破壊神(ヘカテイア)〉、と】


 人工の死神がエヴェリンに迫る。小銃を突き出し、銃口をエヴェリンの鼻先に向ける。そこには骨がない。跳弾することなく中枢神経を破壊できてしまう。


 しかしエヴェリンももちろん簡単には撃たせない。(コア)の機能を全てこの戦闘に費やし、時間が引き伸ばされた中、身体を効率的に制御し、最小限の動きだけで回避する。その直後に腕を前に出した。




 それを認識した死神は疑問を覚えた。つまり的確な判断を下せなかった。今までの彼が学習した中にない、不可思議な現象が起きていたからである。ネットワーク越しに情報を精査しても、該当するものは皆無。似ているものも現実にはそぐわなかったり、状況的にありえないことばかり。


 彼女の仕草にも疑問に覚えたが、それではない。


 今ここに何かが集まりつつある。この倉庫の外からまるでエントロピーを無視したかのように、靄となって目の前の少女の許に集結する。

さらには地面に、もしくは彼女にこびり着いた血からも湧き上がる。


 それが少女を中心とした半径5メートルの内に砂嵐のごとく集った。少女の髪が不自然に舞い、乱れていく。


 理解不能な事態に死神は攻撃を中止。全神経とその演算能力を使って解析に入る。しかしそれが目の前の少女に致命的な隙を与えてしまった。




 エヴェリンは魂に響いたその言葉を自らの口で呟いた。代償など一切考慮せずに。


「…〈破壊神(ヘカテイア)〉」


 そして再び魂に響く。鈴のように清らかで冷たいその言葉が。


【管理者権限【プロトタイプ】起動。あなたの意志は顕現される】

 破壊神降臨――。


 本日も本小説をお読み下さりありがとうございます。


 では今回の解説。最初の方に出てきた内臓を動かすという話。実のところ私は完全には理解できていません。ですが、そんな表現をしているヒトたちがいるのも確かで、恐らく腹筋の細かな使い方に寄るものだと私は思っています。実際それで通り魔に襲われても脇腹をえぐられるだけで済みそうですしそれくらいならできました。因みに戦闘に置いて正中線という身体の中心部分は急所となりますが、もっと正確に言えば中枢神経のことを指すみたいです。内臓や筋肉、骨なんかが損傷してもすぐに戦えなくなるわけではありませんが、中枢神経をやられると一瞬で戦闘能力が殆ど失われますからね。


 ウェイブという技術。これは確か自衛官とか、特殊部隊が使っている技術だったかな?私は動画だけを参考にそれっぽいことを実践してみましたが、これが大変難しいこと。タイミングを間違えると威力が出ませんし、変な動きをすると身体の方が壊れます。しかも体力をかなり削るので訓練でもしないと一般人には疲弊してしまいそうです。でもこれはスポーツに於いて無意識にやっているヒトもいるみたいですね。私はバドミントンをやっていたのですが、まさにこれだったような?あとこれって威力だけじゃなくてかなりの瞬発力も出せるので、速さが必要なスポーツには使えるかもしれませんね。因みに肩甲骨と股関節を意識するみたいです。あ、これ使ったら本棚が簡単に壊れました(捨てるものだったので大丈夫だったけど)。


 そして今回エヴェリンが戦わざるを得なかったこの相手。エヴェリンがどれくらい強いのか判断できないので分かりませんが、相当に強いとは思っています。しかしあまりにも不合理敵過ぎる行動ですよね。だって銃を持っているんですから、最初から遠距離で攻撃して全員を無力化しても良かったはずなのに。彼にはそれができるのはその機動力と繊細な動きからして明らかなのですから。何がしたいのか。あと明言していませんが、これは自律型致死性兵器(LAWS)のヒト型です。そしてその容姿は敵の戦闘能力を削ぐために人間の本能が恐怖を覚えるように造られているのだと思います。そうすれば少なくとも相手が怯む隙が生まれるチャンスが来るからです。まあ、規制の動きがありますが、それに従う理由がありますかね?守らないでしょうね。


 怒りで我を忘れる状態。これはずっと疑ってきた事実なんですが、実際あるもんなんですね。しかもこの時の思考状態って平常時と比べて異常で自分自身のことなんかどうでも良くなります。ただ目の前の敵を殺すことだけを考えて、防御は捨ててしまいます。そして正常に戻れるのは敵を殺したときか、横やりが入ったときか、一度意識を失うかのどれか。あと、この時は筋肉のリミッターが外れるので70%の筋力が100%に近くなります。だって、自分なんかどうでも良くなって、思考の片隅にも自分の安全性のことが消えるのですから。まあ、気づいた時に振り返って自分でない自分に恐怖するのは当然だったのかな?まあ、価値観が、ね。


 そして響いた声。あれはなんなのか。そして破壊神?何が起きているのか?因みにヘカテイアとはギリシア神話のヘカテーのことです。死の女神とか、女魔術師の保護者、無敵の女王とか別名があるらしく、称号に救世主があるとか。あと象徴としてトリカブトとか蛇、松明なんかがあるみたいですね。私がこの神の名を使ったのは、まあ、松明のところからでしょうかね?繋がりが欲しかったので。分からない?調べるか、今後読めば分かるかな?こう考えると両者ともに死神ですね。一体どうなることやら。最後の管理者権限【プロトタイプ】も気になるところですね。


 最後に、やはりこういうのって見た目が大事なんですよね。ほら、アニメとか映画、さらには漫画で登場人物がずっと顔面マスクをして全く顔が見えないってなんか面白くないですよね。目を隠すとか、口マスクとかならトレードマークになるかもしれませんが。登場人物の感情を表す表情があるからこそ物語が面白くなるのです。あと服装も大事なんですよね。そう考えた時、今回のエヴェリンの服装もちょっとおかしかったり。本当なら絶対顔は晒していけません。ですが、ヘルメット?を飛ばされただけで顔が露になっています。顔を見られたら普通こんな世界では致命的なんですけどね……。小説だから見逃して下さい。ヘルメットが簡単に外れたのはよく猫の首輪にもついている強い力を加えると簡単に外れるあれです。セーフティかな?つまり、何が言いたいのかと言うと、見栄えを良くするためにリアルを削ぎました。すみません。でも、私にはこれが限界です。私服で突入するようなアニメはありますが、毎回ツッコんでしまって……。面白いけどね。


 では、今日はここまで。また来週にお会いしましょう!評価、感想、質問、お待ちしております!ブックマークもぜひ!またまた〜!

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