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美少女転校生

「じゃあいってくる」

「いって・・・きます」

「はい、いってらっしゃい」


笑顔で母に見送られ、俺はいつも通り、麗奈にとっては初である華台への登校。

二人肩を並べて歩き始める。

家を出てから5分程度、いまだに会話はない。

当然である。来斗には彼女作ることは疎か、普段から女子とも喋らない。そんな来斗に、喋ることを苦手とする女子相手に会話を弾ませるなんていう能力は持ち合わせてはいない。

とはいえ、ずっと黙ったままというのは麗奈をうちで引き取った意味がなくなってしまう。気軽に話しかけあえる関係にならなければならないのだ。

まずは無難な会話から始めることにした。


「二条さんは前通っていた学校では、部活やら委員会に入ってたりしてたのか?」

「ご、ごめんなさい。少し、待っていてくださいね」


そう言うと麗奈は深呼吸をしながら、何かを考えるように目を閉じる。

『よし』という声と共にこちらに顔を向ける。


「私が昨日まで通っていたがきゅっ・・・痛っ!!」


なんだこのデジャビュ感は・・・。


「いつもこの調子なのか・・・?」

「・・・はい」


涙ぐみながら返事をする麗奈。

ここで俺は一つ気づいたことを口にする。


「人と話すことに苦手意識があることを自覚しているからこそ、うまく会話しようとするんだよな。ただ、二条さんはそれが空回りしてるんだ。会話をする前に深呼吸する人なんて俺はいままで見たことないぞ?まずは自然体で話せるようにしよう。俺でよければいつでも練習相手として付き合うから。俺相手ならばいくら失敗してもいい、家族相手に恥ずかしがる必要なんてないんだからな」

「は、はい!・・・よろしくお願いします」


元気に返事をしたかと思えば、それに恥ずかしがる麗奈だった。


学校に着き、麗奈を職員室まで案内して教室へ向かう。

教室に入り自分の席に腰を下ろすと、鑑が興奮した様子でこちらへと向かってくる。


「ライ、聞いたぜ?めちゃくちゃ可愛い謎の女生徒と歩いてたってな」

「この学校の伝達網はどうなってんだよ・・・」


学校に着い5分程度しか経っていないのに、この広まりよう。

教室もなんだか浮ついた雰囲気であることから、大方の生徒は知っているのだろう。


「くっくっく・・・宮地くん、私を侮っちゃぁいけないね」


声をした方を向くと、そこには『号外!朴念仁の宮地来斗に超絶美少女の彼女!?』と書かれた紙を持っている女生徒が立っていた。


「流石だなぁ横矢?」

「お褒めに預かり光栄です」


横矢真木はこの華台の新聞部部長であり、学校一の情報通。

そんなアニメの世界にいそうなキャラがこの世に実際に存在しているのだ。


「女を隣に連れて歩く時は私に気をつけろとあれほど言ったじゃない」

「いや、言われてないからな?」

「細かいことは気にしないの!それよりも私に情報を提供してくれない?隣にいたあの美少女、誰なの?」

「教えん」


『なんでなんでー』と加減を知らない真木のパンチが降り注ぐ。

教えようが教えまいが真木はすぐに麗奈の正体を掴むだろう。

これは来斗のせめてもの抵抗である。


「にしても水臭いなぁ?友達である俺を差し置いて彼女を作るとはな」

「あんまからかうなよ鑑。お前は事情分かってんだろ?」

「まぁな」

「え、なになに?これには深い事情があるっていうの?修羅場?」


『んなわけあるか』と、真木の頭を叩いたところで教師が教室へ入ってくる。


「全員座れー。今日はHR長引くぞー」


長引くというのは麗奈がこのクラスに入ってくるということだろう。

事情が分かってるこちらは心構えが出来ているが、他の生徒は面倒臭いなどとボヤいている。

朝の諸連絡をした後、その時がきた。


「今日はな、この変な時期だが転校生を紹介する。入ってくれ」


唐突に告げられた教師の一言で、教室の中が興奮に包まれる。

更に、麗奈が教室に足を踏み入れた瞬間に男子のボルテージはMAXに。


「じゃあ自己紹介を頼む」


そう教師に振られると麗奈の顔が強ばる。

深呼吸をして、意をけして口を開く。


「二条...麗奈です」


その艶麗な転校生が紡ぐ美声に教室が静まる。

それは教師以外が簡素な自己紹介に誰も触れられないくらいに。


「ん、終わりか。なら宮地の隣が二条の席だ。宮地はあのボケた顔してる男な」

「何言ってるんですか」


教師の小ボケに教室に賑わいが戻る。

席に座った麗奈というと、顔を真っ赤にして俯いていた。

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