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結局男は女に弱い

食事が終わり少しした頃、当初の目的通りに顔合わせにあたり件の整理をしていた。


「さて、大まかな話はお父さんから聞いているだろう。しかし、ただ一緒に暮らすだけじゃ意味が無い。歳の近い君らと共に暮らし会話を交わすことにより、この極度の人見知りが直ることを期待している」

「それには未羽、来斗の2人の協力が不可欠なんだ」


なるほど、だから父さんに頼んだ訳か。


「自分は別に構いませんよ。未羽が2人になったようなものですし」

「お、お兄ちゃん!」

「確かに麗奈さんと未羽は似てるかもなぁ」

「お父さんまで!」

「尚更いいじゃないか。似た者同士、うちの麗奈も心を開くかもしれないからな」


それから生活面の取り決めなどをしていく。

部屋に関しては今朝のうちに母親が空き部屋を掃除しておいたので、そこを使ってもらうことになった。

家事に関しては今まで通り母親がやることになった。

家事の話になると、麗奈が『家事は私がやります!』と名乗りを上げたが、家事好きの母親が待ったをかけ、それらしい理由を並べた後になんとか納得させた。

麗奈も父親が言い出したこととはいえ、少なからず負い目を感じているのだろう。

宥められた彼女はまだ少し不満そうな様子だった。


それから話もまとまり、帰宅の準備をする。

今日の夜から麗奈をうちで引き取るらしい。


「では宮地くん、我が娘をどうか頼む。この恩はいずれ、な」

「大事な社長の愛娘には不自由のないようにします。どうか安心ください」


二人は握手を交わす。


「来斗くん、未羽ちゃんが一番苦労するだろう。どうか我が娘を頼む」

「はい」

「・・・はい」


俺達が返事をするとにっこりと笑い、黒塗りの高級車へ乗り、走り去って行った。

自分達も自家用車へと乗り込むと、家に向けて出発する。

いつもより多い五人で。





目覚まし時計の音で意識が覚醒する。

現在5月半ば、過ごしやすい気候のお陰で朝は布団から出るのに大した苦労はない。

あれから家に帰って、お互いに疲れているだろうからすぐに休もうということになった。


リビングに行くと、朝食の準備をしている母親と麗奈の姿があった。


「おはよ」

「来斗から起きたのね、おはよう」

「・・・」


麗奈は会釈だけする。


「二条さんも朝食の準備してるのか?」

「なんか他人に準備させるのは落ち着かないんだって」


二条家レベルだと家事くらいお手伝いさんにやらせてそうだけど。


「二条家の教育方針らしい、どうやら家事など自分のことは自分でやるようにするためにお手伝いさんは雇っていないと社長から聞いた事がある」


今朝の朝刊を読んでいた父が会話に加わる。


「だから昨日も家事は自分がやると名乗りを上げたのだろう?麗奈」

「は、・・・はい」


ぎこちないながらも返事をする麗奈。

ちなみに昨日の話し合いにより、期間限定であれ同じ屋根の下暮らすのだから、苗字で呼び合うのは距離感を作ってしまうのではないか?といった二条おじさんからの提案により、麗奈と名前で呼ぶことになっている。

が、来斗は普段から同年代の女性との関わりは限られた人しかいないため、それが出来ないでいるが。


「そうなのねぇ、やっぱり家事の一部くらいは任せようかしら」

「お願いします・・・」


朝食が出来上がりそうな頃、廊下の方から妹が顔を覗かせる。


「おはようございます」

「やっと起きてきたわね、じゃあ朝ご飯にしましょう」


全員が配置につき、いただきますと合掌する、

そこで来斗はふと気になる。


「今日は平日だよな、二条さんは元いた学校からうちまでどのくらい距離があるんだ?」

「あ、あの・・・そのことなんですが!!って、痛っ・・・」


舌をかんだらしい麗奈は口元を抑えて悶絶する。

日常会話ですらこの調子だと、麗奈の学校での生活を心配してしまう。

その様子を見ていた母は口元を綻ばせていた。


「来斗と話すのはまだ慣れないようね。麗奈ちゃんは今日から来斗と同じ学校に通ってもらうことになってるわ。だから通学中は貴方が麗奈ちゃんのサポートをしてあげるのよ」

「分かった。よろしく、二条さん」


なんで転校までするのかとか、なんで俺が通学中までお世話しなきゃならないだとか色んな疑問や不満があったが、


「よ、よろしくお願いします」


白い頬を少し赤らめながら頑張って寄り添って来ようとする麗奈を見たら、性に合わないことをしてやろうと思うのが男ではないだろうか。

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