第3位無属性 <ライト>
「さて、それじゃあ魔法の演算方法を教えたところで簡単な魔法からやろうか。魔法には階位っていう発動難易度を数字にしたようなものがあるんだけど、魔法と呼べる魔法で一番難易度が低い第3位階を発動させるよ。」
ティルネアリナはそう言うと詠唱を開始する。ティルネアリナの周りに白く淡い光が漂い始めたと思うと、すぐに消えた。リリールカレナリスはその様子を集中して見続けている。
「第3位だからゆっくり詠唱してもすぐ終わっちゃうね、<ライト>」
魔法名を唱えると、ティルネアリナの右手に白い球体が現れた。その球体は辺りを光らせ、球体を中心にティルネアリナ自身やテーブルの影を作る。
「これが第3位無属性放出系基本魔法<ライト>だ。見ての通り光を発するってだけの魔法だよ。一番詠唱の簡単な魔法だから、最初に習うことの多い魔法だ。」
「これが魔法なんですか?なんだか地味というか…そもそも魔力って光を発するものなのに魔法にする意味とは…」
リリールカレナリスは少し残念そうだ。自分の想像できないような凄い魔法を期待していたのだろう。
「第3位なんてそんなもんだよ、確かにただ魔力を外に出すだけだけでも<ライト>みたいにはなるんだけどね。」
ティルネアリナは左手に魔力を集め、それを少しずつ放出する。左手から若葉のような色の魔力が輝いて部屋をさらに照らした。
右手に光る球体を、左手に魔力を流した状態で、リリールカレナリスに説明をする。
「ほら、ただ魔力を放出するだけだと色が白くないし、光にムラがあったりして形状を維持できないんだ。この魔法の発動に必要なことは、魔法を欲しい場所に集めること、自分の魔力を無属性に変換すること、魔力を球体にして外界に放出することくらいかな。あとは球体を維持するだけだ。リリールカもこの魔法を発動してみて。」
「はい!まず魔力を右手に集めて…」
リリールカレナリスの右手に魔力が集まる。やがてそれは視認できるほど強まり、右手から黄色の魔力が輝き溢れる。
「魔力を無属性に変換して…」
右手の黄色の魔力から色が落ち、薄い白光となる。
「そして球体に形を作る!<ライト>!」
そして薄い白光が形を作り、白く光る球体が形成した。
「やった!これが<ライト>ですよね先生!」
「初めてでできちゃうのか…ひょっとしたら賢知の特性なのかもしれないね。そもそも詠唱魔法を使うのは初めてなんだろう?」
「はい!教えて下さった通りにしたらできました!」
「それぞれの魔法で使う演算式を教えられずに正しく理解できることは稀だよ。」
普通は魔法を一から覚えようとすると一月はかかるだろう。それを聞いただけで発動させるリリールカは紛れもなく天才だった。
「後はこれを反復練習して効率を上げれば<ライト>の習得だね。さっきは一つずつ工程を整えたけど、ほとんど一気にできるようになると詠唱時間が格段に上がるよ。ほら、この通りね。」
一瞬でティルネアリナの周囲に4つの光体が現れる。それらは形、色、光の加減まで様々だ。
「4つの魔法を一瞬で!?…あれ、先生<ライト>って言ってませんよね?魔法の発動って声に出さなきゃいけないんじゃないんですか?」
「これは発動隠蔽っていってね、工程を増やせば声に出さなくても発動できるんだよ。詠唱時間は倍以上かかったりするけどね」
「倍以上かかってこの早さ…私もっとがんばります!」