camellia
初投稿、失礼します。
今の季節、ツバキの赤とサザンカの赤が冷えた空気を彩りますね。
花ごと落ちているのが、ツバキ。花びらが散っているのが、サザンカ。
良ければ、気にして見てください。
ツバキが、笑ってると思います。
それは儚い、青い春の日。
自らツバキと名乗ったその少女は僕と同い年で、背丈も僕と変わらなかった。
なぜツバキと一緒に居るようになったのかは、忘れた。特に意味は無かったように思う。だが、どちらからともなくお互いを求め合っていたのかもしれない。
「 わたし、咲きたいの 」
夕日が街を呑み込む時間。ツバキは唐突に、そんなことを言い出した。
「 ツバキはお花じゃないよ、人間でしょ 」
そんな素っ気ない言葉を返しただけで、彼女はまるで今日の晩御飯が全て自分の好きなものだったときの子供のように。嬉々とした顔で、僕を覗く。
「 うん、だからお花になるの。手伝ってよ 」
僕は何も思わなかった。ツバキが花になろうがなるまいが、僕には関係の無いことだから。
「 いいよ、何したらいい? 」
「 わたしは、落ちたい 」
そう言いながら西の残光に目を細める。
「 わたしがここから落ちるとこ、見ててよ 」
三日前の僕はただ、首を縦に振った。
いざ、その時がきた。
「 ちゃんと見ててよ?目瞑ったら怒るからね 」
ツバキの制服が薫風に包まれ、揺らめいていた。太陽の光がまるでツバキを幻かのように演出する。
「 大丈夫、見てるから 」
相変わらず愛想という言葉を知らない僕。言葉は落ち着いていたが、胸の中は脱脂綿が詰まってるかのように重くジメジメしていた。
「 わたしは、落ちれば愛される 」
そう言って彼女は躊躇うこともせず、空に一番近い所に立った。確実に今はツバキの方が、背が高い。
そういえば、今朝の登校道で落椿を見たな。
「 それじゃあ、また 」
「 うん、また明日 」
最期にツバキは僕に微笑んだ。あぁ、もう春が来る。僕たちは高3になって、進路を決めて、次に進むんだ。
なのに、なのにツバキは。
「 元気でね。 」
少女は、春霞の中へ消えてゆく。
少女は風に吹かれ地面で笑う落椿のように、コンクリートに打ち付けられ、鮮やかな赤を咲かせていた。






