27話:車の運転は免許証をきちんととってからじゃないとダメダメだよね?
カリカリカリ。近くに生えていた木を木札を使って削って削る。この日のためにたくさん作って来たけど足りなさそうなんだよ!予想以上に領内が荒れ荒れな荒れ放題の好き放題にされてて思わず使いすぎちゃったんだよ!正直なところ、あの大魔王城の桜の木程の出力はリリア村一番の巨木でもとてもじゃないけど足りない。だけど代用品が見つからないからこれで行くんだよ!質が駄目なら量で勝負なんだよ!
「どう見ても触手にゃ……」
「し、言わないの。どう見てもきもいけど言っちゃダメです」
んん!聞こえてるぞ!お兄さん傷ついちゃうから姫騎士二人はキチンと玲君のお手伝いをしてね!
クロエさんの覚えていた話を整えると今日、ついさっきまでのグルンガストさんはすでにバアルの術中に嵌っていたとのこと。それならばどうして俺たちにこちらにきた目的を話すなんていうマスターであるバアルの目的を話すことができたのか?その疑問は玲君が晴らしてくれた。
「魔王に完全掌握される前に意識をこちらのバイクに移していたので自由に動けていたのだと思います。魔王バアルに不利なことはできないという命令を、魔王バアルの不利益になることはできないなんて言う言葉のロジックで置き換えていた形跡があります。なので、バアルに不利益と考えられる鉱山にはびこる魔物の駆逐、そしてこの地にやってきた勇者の排除ができたのでしょう」
「明確な命令をしていなかったから抜け道があったわけだ。おかげで助かったし、俺たちが分かれて動いたからサクラちゃんたちがピンチなんだよ!」
おそらく、というかもう何度も言う通りサクラちゃんは狙われる。狙われないわけがないんだよ!魔石にしろ能力にしろ彼女はあの魔王にとっては格別。姫騎士たちも同じくだ。くっころ勇者二人娘も下手すれば城の地下送りで元の木阿弥なんだよ!マジで速くしないと!
「目的地は分かっているんですか?」
「そこはクロエさんが言っていたからね。場所は、グルンガストさんの眠っていた地、古代遺跡なんだよ!」
本当は婚前旅行でサクラちゃんと行きたかったスポットなのにこんな糞ったれな理由で行く事になって至極残念でならない。こうなったらあの魔王をさっさとぶっ飛ばして無理繰り婚前旅行に仕立ててしまうんだよ!遺跡ツアーして巨大ロボを操るんだよ!!
「そのう、あと一つ大切なことが……」
「なんだいクロエさん。ちょっと顔の色がマジでブルーなマジブルーなんだよ?」
「……もし真人さんに今回の件が露見した場合、状況をすぐに第三段階に移行すると指令があったんです」
第三段階……?第一が遺跡のグルンガストさんのコアの発見だとして、第二段階はグルンガストさんの確保、そして第三段階と考えると……。ううん?それは詰まる所どういう事なのかな?グルンガストさんの超巨大ロボを起動させるのかな!それはちょっと期待したいけど!
「この土地の浄化です」
「浄化……?」
「まさか、この地の生き物すべてを喰らいつくすつもりですか?植物も動物も魔物も人すらも!」
震える声でサラさんが声を荒げる。いや、流石にそこまではしないでしょ!自分の領にするんだよね?す、するつもりなんだよね?
「いえ、バアルはこの地を餌にしてしまうつもりです。自分の眷属たちすべてをこの地に呼びよせ、根こそぎ喰らいつくす、との事です。私もその贄になれ、と……」
ふふふふ、やばい。何がやばいって、虫はやばい。数がやばい。量がやばい。質もヤバい!Gとか来たらとんでもないんだよ!あれだよ?元の世界のイナゴでもやばいのに魔物の虫だよ?やばくないはずがないんだよ!
「ど、どうするんですか真人様?虫の大群なんて、私たちだけじゃ……!」
「うん、マジ無理だね!でもどうにかするしかないんだよ!」
本当にどうしようもない状況だけど、どうしようもできるピースはここにある。
「がんば……玲、くん……」
「へ、ぼ、僕?」
そう、彼こそが勝利の鍵だあああああああああ!!
というかそれしかないんだよ!玲君を連れてってグルンガストさんを取り返す。それが一番単純で簡単で分かりやすい解決法。それ以外はグルンガストさんと戦って倒し、虫共が死滅するまで聖剣を振り続けるしかない。魔王バアルもその虫に含む!さらに言うとサクラちゃんたちを助けて戦力にして、とか考えるとどう考えても無理だ!ドギーな兄ちゃん連れてきたいけど、あの兄ちゃんはあの町を護ってもらう必要がある。細工は流流、あっちは全部あの兄ちゃんに丸投げぽいなんだよ!
だから俺は俺でできることをしなければならない。そのために必要な猫の手さんが玲君だ。玲君のチート、アナライザーの出番である。今お願いしている車の主導権を奪い取る作業をグルンガストさんでやってもらう。やってもらっていいかな?あ、答えは聞いてないけど!てへぺろ!
「聞いてください!いや、流石に無理でしょう!僕はその、まだ勇者になって日も浅いんです!戦いも、見ての通りダメダメ……でしたし」
玲君は腰にぶら下げられた小さい短剣をため息をつきながら撫でる。うん、大丈夫そこは期待してないから!大事なのは役割だよ!俺とクロエさん……ちゃんでいいや!クロエちゃんが前ね。そんで苺ちゃんとサラさんに玲君が後衛。その護衛にロベリアちゃんを付けておくんだよ!ふふ、完璧な布陣だね!
「にゃ!?そ、その、私が前衛なんですか!」
「できるよね?できないなんて言わせないんだよ。ふふふ、俺は君を洗脳?したわるーい?勇者だからね!ほらほら、俺の言う事が聞きたくなーる?」
手をピロピロとしてみたけど効いてない!そりゃあそうだよね!退行催眠くらいしかかけてないし!洗脳なんてするにはながーい時間と根気が必要なんだよ!仮に?一応?ご主人様って事にはしておいてるけど?反抗も反応も普通にできるからご主人様であってないようなものだから大丈夫だよね!なんだか視線が痛いな!見てたよね?俺変なことしてなかったよ!!
「ぷふ、はーあ。私のご主人様は本当に変な人です。にゃ、わかりました。貴方に救われたこの命、貴方のために捧げます」
うん、だから捧げないでね!君の命を背負えるほど俺は偉くないし、気構えも無いから!だから死なないで欲しいなって?死ぬ覚悟なんてしないで欲しいんだよ!生き抜く覚悟を持って欲しい。死んじゃったらね、終わりなんだよ?俺は勇者で死んでも生き返っちゃうけど、今死んだら絶対に後悔する。だから死ねない。死なないんだよ!死んだら大魔王城だからね!戻るころには全部終わってるなんて事になっちゃうかもしれないんだよ!
「だから命は捧げないでね?君の命は君のモノだ。だから、生きるために、生き抜くために戦うんだよ。全力で、全開で、あの糞ったれな魔王の横っ面をぶっ飛ばすんだ!」
そうしないと俺の気が済まないからね!ふふふふ、ぶっ飛ばしてぶん殴ってそこから馬乗りになってワンツー!ワンツー!何だか腕にストレッチパワーが溜まってきそうだな!ワンツー!ワンツー!
「頭の可笑しい真人様は放っておいて、経過はどうなんです?」
「あ、う、うん。いいのかな?もう少しで完了します。けど、僕は車の運転はちょっと……。ゲームで位しか触ったことが無いので」
ああ、そこは大丈夫なんだよ!数々の坂を攻めてきた俺がいるからね!ふふふ、グラスの水もこぼさずに走り切ってやるぜ!
「……何でしょう、猛烈に不安感が」
「う……うめぼし……すっぱい……もの、を……」
あれ、何かな?俺の運転に不安があるのかな?大丈夫だよ!国際免許持ってるからね!どこの国でも異世界でも運転は大丈夫だよ!ネットで取ったからなんでか日本の免許証じゃなかったけど!名前と、住所も違ったけど!あれ、俺のかな?俺のだよね?大丈夫、俺の免許だよ!
「酔い止めだけはどうにか死守しましょう」
こうしてみんなの意見が合致した。なんでだ!?