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勇者だけど大魔王城で執事やってます。え、チートってもらえるものなの?  作者: 黒丸オコジョ
第二章:古代なロボと勇者な執事。ロマンだっ!
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25話:猫が猫をかぶっていたと言われても猫ダブリでよくわからにゃいよね?

 目が覚めると天蓋付きの大きなベットに寝寝ていた。

 というか、うん、どこかな?知らない場所に、()()()()()()()がなんだか心配そうにこっちを見てます。

 ……私は、そう。確かお父様に呼ばれて、四天王のお一方である獣族最強のライオネル様の奥様に使えるように言われて、お父様のご友人、の、髭を、生やし、た、あの――


「うぷっ」


 頭の中をぐちゃぐちゃとされたような、ぐるぐると頭が回る感覚が襲い、胃の中のモノがせりあがりそうになる。出てない。大丈夫、尊厳は守られました!にゃ!


「よかった、やっと目覚めたかいクロエちゃん。はぁ、まったくもうあの糞魔王め、一発どころじゃなくブッ殺だよね?ブッ殺でいいよね?」

「何を物騒なことを言ってるんですかこの人!?」


 黒髪の人族の少年が頭を抱えてぶつぶつとつぶやいている。顔立ちは端正でそこそこに格好はいい。だけど、なんか変な人だ!


「ぶっころかどうかはおいておいて、現状クロエさんどんな感じなんですか?」

「それは彼女に聞かないとわからないかなって。ええと、クロエさん。どこからどこまで覚えてるかな?ええと、ば、ば、ば、ばーむくーへん?じゃないか、なんだったかな?バリウム?バンプアップ?ばばりばりっしゅ?」

「バアル……だよ?」


 小さい眼鏡をかけた女の子の言葉に頭が痛む。バアル、虫の魔王。私のお父様とお母様の様子をおかしくした魔王。私は、あの日、あそこ、で。


「思い出した。あの魔王っ!私の頭をいじったばかりか、お父様とお母様まで……!」


 そう、全部思い出した。思い出してしまった。

 あの日から私がやったこと、やらされたこと、やらざるを得なかったこと……全部を。


「お疲れ様。そんでおかえり?うん、これにて成功なんだよ!くくく、気分はどうかな?俺の催眠の力でクロエさんの記憶をすっきりさせてあげたぜ!……三年前の精神状態というか、意識にまで戻さないといけないのはきつかったなぁ。あ、あとついででもいいから俺の事を思い出してくれると嬉しいな!」


 言って真人さんはニヤリと笑った。いつも通り、子供みたいな明るい笑顔だった。

 そう、今日までの記憶はある。けれどもその記憶は夢のようで、私の心はまだ十四歳のままなんです。そこから三年間の記憶と経験とを冷静に見直して見返して、おかしいこと、間違っていたことに気づかされたという感じ。

 うぅ、奥様を裏切ることを沢山してしまっています。ライオネル様に何とお詫びを申し上げればよいやら……。ううん、それで償えるならいいんです。私も、父も、母も、取り返しのつかない過ちを犯させられています。良くてお家取り潰し。最悪一族丸ごと処刑、なんてことも……。


「うん、まぁそこは何とか取り計らってもらうとして、情報が欲しいんだよ。頑張って思い出してもらえるかな?とくにあの魔王の目的をね?」


 あの魔王、つまりは魔王バアルの目的。この領で魔石を量産し、勇者を手引きしてまでかなえようとした目的。


「ええ、よく知っています。あの魔王の目的。それは――グルンガスト様そのものです」

「は?つまり、グルンガストさんの力を奪う、というかまさか乗る気なの!?グルンガストさんに!何それずるい!というかうらやましすぎないかな!?乗るんなら俺も乗りたい!いや、乗ったけど、そうじゃなくてたぶん巨大ロボにだよね!本気モードのグルンガストさんだよね!」

「落ち着いてください真人様。そんなことは後回しです。どういうことですか、クロエさん。グルンガスト様が目的とは一体どういう」


 ロベリアちゃんが真人さんのお口をふさいで私をにらむ。うん、四天王であるグルンガストさんが目的って言ってもどういうことかわからないですよね、普通。


「グルンガスト様はもともとこの地の遺跡に眠っていた古代兵器なんです。グルンガスト様が目覚められた後、魔王バアルは調査をつづけ、グルンガスト様の隠されていた本体と大魔王様からマスター権限を奪う方法、そしてグルンガスト様の持つ最大戦力を目覚めさせる方法を見つけてしまったのです」


 そのことを逢うたびに自慢のように語っていたんです。聞きたくもないのに延々と。いずれ私はその力を持って大魔王にとって代わる存在なのだと。


「うん、他人の力を奪って大魔王にとって代わるってどうなんだろ。変わったとしてその先の展望は見えてるのかなぁ」

「見えてないと思います。あの方はそこまでしか語ることもありませんでしたから」


 後先を考えず、目の前の欲望に走ってしまうと言うのは魔王らしいといえば魔王らしいのだけど、そこから先を考えていないのであれば魔王の前に王としてどうなのでしょうね、本当に……。


「はぁ、頭痛いんだよ。つまりはグルンガストさんのマスター権限を奪って操るために大量の魔石がいるからあんな無理無茶な事をしていた訳ね。城の地下の勇者の魔石工房もたぶん鉱山に魔物を繁殖させてたのもそれが目的。いや、たぶん鉱山で働かせることも目的だったのかな?お金を稼いでいた理由は勇者を引き入れて勇者を狩るため……。いや、それだけじゃあない。玲くんみたいな勇者……。そんな勇者がいれば簡単にグルンガストさんを指揮下に置くことができるようになるかもしれないんだよ!」


 真人さんの予想はおおよそ正しい。洗脳した勇者を使ってグルンガスト様のマスター権限を奪いとり、その権限でグルンガスト様の心を破壊し、完全な兵器にするのがその醜悪な魔王の計画。


「単純で頭が悪い。でも、用意周到でタチが悪いんだよ!ああ、頭痛いよこれ!絶対サクラちゃんの魔石が狙われるんだよ!」

「おそらくは、私たち姫騎士も狙われるでしょう。純粋な魔力量でしたら他の魔物よりも高いですし、儀式のいけにえと考えたならば……」

「はい、私も含めて姫騎士も生贄にするとお聞きしています」


 そう、みんな生贄。ただオウカ姫様は生贄ではなく機体のパーツにするらしい。

 エンブレムのように掲げ、その魔眼の力を振りかざすとあの魔王は笑っていた。大魔王がどんな顔をするか見ものだ、と。


「へぇ、ふぅん。なるほどね!ぶっころだ!ライガーと通信繋がらないからね、計画動き出してるよね!OKだクロエさん。もうこれ以上ないくらいに情報をありがとう!これだけの情報があれば対策がとれるんだよ!丁度いい所に丁度いい人材も拾えたし!」


 ちょうどいい人材……?と首をひねると先ほどの少年が姿を現した。


「真人さん、バイクロボの残骸を調べて分かったことがあります。……この機体、AIで動かされた形跡がないんです。ずっと気になっていたんです。AIなら意識を分割しても動かすことができるのに、なんでどちらかに集中する必要があったのかって」

「じゃあつまり、グルンガストさんって……」

「おそらく、います。中に、人が」


 それは私すらも知らなった事実だった。え、人なの?あのロボのグルンガスト様が!?いやいや、いやいやいやいや!

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