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勇者だけど大魔王城で執事やってます。え、チートってもらえるものなの?  作者: 黒丸オコジョ
第一章:大魔王の姫と勇者な執事?みたいな?
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8話:イケメン死すべし慈悲は無し……元でも無いよね?

 仮面をつけたまま訓練場の開けた場所に連れて来られる。おっちゃんと正面に向かい合うなんてなんて罰ゲーム?


「そう言うなよ。これでも若いころはイケメンと言われていたんだぞ?」

「今は面影もなく?」

「はは、これはまた手厳しい。まぁ、うん、子供に洗濯物を一緒にしないでとかよく言われるんだよな……」

「だよね、お兄ちゃんと一緒の洗濯機は嫌だとか言い出すんだよ」


 いいじゃない、洗うんだから!界面活性剤のおかげで汚れはつかないよ!!


「さて、お前は模擬用の武器は何を使う?もここにあるものならなんでも使っていいぞ?


 見回すと、木剣に木刀に木斧に木槍に木ハルバートにとなんでもござれだった。トンファーもあるのか!……トンファーが木って普通じゃない?模擬?


「ライおっちゃんはどうするんだ?」

「吾輩か?そうだな、普段はハルバートあたりをぶん回すが今日はお前の実力を見るために無手だな」

「それじゃあ俺もそれで」

「いいのか?吾輩には爪があるぞ?」


 おお、立派な爪だ!俺のいた世界でも獅子は爪と牙で獲物を狩っていたよ!実際は爪と牙で捕まえて圧倒的力で首をへし折ったりしてるんだけどね。こう、猫パンチで。


「当たらなければどうということは無いとロリコンでシスコンでマザコンな人が言ってたから大丈夫だよ?」

「それは果たして大丈夫なのか?」


 いけるいける。諦めてどうする!やればできる!やればできるお米喰えよおおおおお!


「まぁ、お前がそういうのなら構わんがな」

「ライガ、制限はその砂時計が落ちるまでで審判を頼むぞ」

「御意に」


 ライガと言われたトラっぽい若いあんちゃんが前に出てくる。

 ざわざわと視線がこちらに集まる。うん、視線が痛いんだよ?


「それでは、構え――模擬試合、はじめ!」


「是ッッッ!!」


 瞬間、空が裂け、大地が震えた。遥か後ろに逢った壁に爪痕が刻まれてるよ!怖いな!

 吹き荒れる嵐のごとく振り注ぐ斬撃の嵐を躱し躱して避け避ける。ソニックブームともいえる風圧に吹き飛ばされそうになるが逆に風に任せてしまえは問題ない!見える!見えるぞ!私にも見える!普通に見えてるよ!当たれば上半身事吹き飛ぶぞ!


「はは!本当に当たらぬ!気持ち悪いくらいに当たらんぞ!!」


 くそうこっちは楽しくないのにライおっちゃんが楽しそうに笑ってる!凶悪な爪の届かぬ懐に潜り込み、こぶしを腹に軽く小突く。無限流/無手/穿――体の中の気を練り上げ、相手の体内を貫く一撃――。


 が、軽く吹っ飛びはしたがライおっちゃんはよろめきすらせずに踏み込んで来る。なんだかなぁ!


 大ぶりの一撃を躱したところに逆手が構えられ、さらに躱すと尾がムチのように襲い掛かかる。それを弾き、裏拳を躱し、さらに襲い来る爪の連撃をいなし、いなし、いなす、いなす、いなす、あああもう!追い込まれてきた!速いし固いし強いよライおっちゃん!


 大きく息を吸い、大地を踏みしめ、さらに気を練り上げ、練りこみありったけの霊力をもねじ込めて行く。嵐のように荒れ狂う力の塊を両の手に込めて敵の両の手を弾き飛ばす。


 無限流/無手/奥義ノ壱――


「ッ!そこまで!」


 その言葉で手を止める。くっそ、倒せなかった。せめてもう一発くらい当てておきたかったんだけどなぁ。

溜めた嵐のような力を解き放つと風が吹きあがった……。ふむ、ロベリアちゃん今日みずい――木刀を頭に投げられたよ!痛いな!


「はぁ、なるほど。大魔王様が認めるわけだ。認めるぞ、お前は強い。そういうわけで吾輩の部下にならんか?給料いいぞ!」

「全力でお断りさせていただきます!」


 無理、無理だよ?男ばかりのところでなんてむさ苦しすぎて死んじゃうからね?せめてこう、女騎士さんたちに囲まれたい。うむ、ケモミミだったら尚良し!


「ううむ、いるにはいるが吾輩の直属にはおらんなぁ……」


 そういう訳で、今回の件は無かったことに。お祈り申し上げます!そう言ってすたこらさっさと逃げ出す。後片付けはお願いします!!





「ライオ様、あの者どう思われますか?」

「強い。だが脆い。あ奴の手を見たか?」


 あの男、真人とか言う勇者は無手でありながら確かに強かった。だが、自らの放つ力に負けて腕がはじけ飛んでいた。持っていた何かで治療はしていたようだったが、あの技は恐らく常人の身で放てる技ではない。


「もしかすると、アレで十全ではないのやもしれんな。聞けばこの世界に来てまだ一日たった程だという。異世界で学んだ術なのだとすればこちらの世界とは勝手が違うだろうしな」

「あれで、ですか……」


 ライガは唖然とした様子で立ち尽くす。まぁ、当然であろう。吾輩は全力で爪を振るった。そのせいかあたりは深くえぐれた爪跡が残り、あたりに生えていた木々は砕け散っている。

 それでありながらあの男は吾輩の攻撃を掠りすらさせなかった。

 それでありながら最後に自らの腕を破壊しつくすような一撃を放とうとした。


 アレを喰らっていたならば――


 久々に楽しめた。人生を豊かにするのはやはり闘争である。

 あ奴が十全であり、吾輩が自らを<解放>して全力で互いに闘ったのならばどうなっていただろうか?

 素晴らしく、血が、滾る。


 しかし、女騎士がいいとはな……。ライガも一応女なんだがな。胸は……いや、何でもないぞ!なんでも!

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