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勇者だけど大魔王城で執事やってます。え、チートってもらえるものなの?  作者: 黒丸オコジョ
第二章:古代なロボと勇者な執事。ロマンだっ!
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13話:男の子の意地の張りどころは中々女の子に理解してもらえないよな?

「こいつが俺の新しい脚、か」


 鋼にしては軽く、プラスチックにしては固く、頑丈のようだ。不思議と立ってみても違和感はほとんどない。ただ感覚が無いだけ。これはどうにもなれるしかない。ようやく俺の足が戻ってきたのだから。


『魔鋼を原料にした義足になります。貴方の足とそん色なく機能し、貴方のコールによりさまざまな機能を発動できます』

「うん、ソードとバレッドは分かるんだが、フレイムバレッドって?」

『ミサイルです』

「え?」

『ミサイルになります。発射すると着弾点から周囲五十メートルを破砕、焼却することが可能です』


 へぇ、なるほどなー。って、いやいや流石に俺の膝に爆弾を仕込まないでくれないか!?というか、膝に爆弾ってネタなのか!?ネタにしてるのか!?いや、顔を逸らすんじゃない!ネタにしてるんだな、このバイク野郎!


『野郎、というのは正確ではありません。それに、これは貴方が単独でこの拠点と人員を守護するのには必要な装備だと思われます。本当ならバルカンかビームカノンを仕込みたかったのですが、流石にそこまでの義足を用意する時間的猶予が……』


 このバイク、かなりマッドだ!いや、あの変な仮面の男の知り合いの時点でまともな奴だとは思っていなかったが、かなりマッドだよこいつ!


「おお、かっちょいー!ヴォルフ兄ちゃんかっこいい!」

「すげー、ぎんぴかだー!」

「きらきらしてる、ねぇ、キラキラしてるよ!」


 俺よりもはしゃぐガキどもの頭を撫でて眺めつつ、バイクが運んできてくれた飯を喰らう。……パンと肉の入ったスープなんてまともな食事久々に喰った気がする。


『ここの子もそうですが、貴方も基本的な栄養がまるで足りていません』

「だろうな、俺の貰ってた配給は大体薄味のイモのスープだったしな。孤児のこいつらだって残飯を漁っていたんだろうが、ここらの飲食店でまともに経営で来ているところも少ない。このご時世だ。わざわざ孤児に投げ銭してくれる奴もすくねーしな」

「ええ、その通りよ!よく知ってるじゃない。私だって貴方のこと良く知ってるわよ。わんわんさん」


 振り向くと睨むようにウサギの少女がいた。

 この子もあの魔王の犠牲者。家族を全員虫に食われ、一人だけ取り残され、廃墟になったこの場所で同じ境遇の孤児たちを護ってきた。それがこのミウという少女だ。

 文句を言いつつも俺の手術の手伝いをしてくれていたらしい。本当に感謝のしようもない。


「それで、護れなかった俺に何か言いたいことがるのか?」

「……言いたいことは沢山あるけど、いい。私とこの子たちみんな護ってくれるならそれで」


 強い子だ。俺がこの子のように心が強ければ、護れたのだろうか?この子たちの家族を、俺の居場所(この街)を――


「どうしたのお兄ちゃん?」

「ぽんぽんいたいの?」


 子供たちの声でハッとする。ああ、そうだ。過去の事なんて今はどうでもいい。護るのだ、今度こそ。この子たちも、この街も!




『そういうわけでリハビリです。加減して私が攻撃しますので頑張って避けてください。大丈夫です、死にかけたら治療効果のある魔法弾をうちこみますので』

「まて、何をする気だ。いや、待とう、待て!待ってください!というかその紋章は……。アンタ、まさか――!!?」


 ボコだった。

 完全にフルボッコだったぞ!走って避けて躱して走るが、それでも尽きることのないバルカンとミサイルの弾幕に襲われ弾かれ吹き飛ばされる。だからな!子機とはいえ、四天王に勝てるわけが無いじゃないか!加減してる?それで本当に加減してるのか!?全く、なんて奴連れてきやがるんだ、あの男は……。


『さぁ、まだこれからですよ。この街を護るのであればそれではまるで足りません。少なくとも全盛期まで調整をさせていただきます。問題ありませんね?』

「はーはーっ!ああ、無いさ!それでも足りないくらいだからな!」


 そう、足りない。あの頃の俺で護れなかったんだ。それならばもっと力がいる。


 両の足でしかと立って、バイクから変形した四天王と相対する。足はまだ動く。まだ走れる。俺はまた走り出せるようになったのだから――!ギリギリと駆け抜けて雨のように襲い掛かる弾幕を避けて躱して弾いて躱す。


「コール――ブレイド!」


 足のスネが開き刃が現れる。その刃にて飛来するミサイル共を蹴り裂き、奔る足を止めることなく四天王に肉薄する。だがそれでもまだ速さが足りない!圧倒的にまだ足りない!高速で移動していく四天王に迫れはしても追いつくことができない。ならば――!

 膝の刃を外し両手に構える。ああそうだ。これがなくては俺じゃない!刃を翻し、体を押し込むように走り抜ける。それで尚足りない、まだあの頃の俺にすらたどり着いていない。まだ、もっと――!


「がんばれ、にいちゃー!」

「まけんなー!」


 子供たちの声援を受けて力をもらう。でもすまんな、勝てないからな!この四天王死ぬほど強いから!けれども挑むけど!挑むがな!!





「かっこ悪い……」


 ぽつりと、ミウがそうこぼしたのが聞こえた。

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