表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者だけど大魔王城で執事やってます。え、チートってもらえるものなの?  作者: 黒丸オコジョ
第二章:古代なロボと勇者な執事。ロマンだっ!
72/554

9話:ここほれワンワンのここほれってワンコが人の言葉を話してるよね?

「で、俺を奴隷から解放してどうするつもりなんだ?」


 ケモミミの兄ちゃんが俺の背中からじっとこちらを見ている。うーん、女の子に見つめられるのはうれしいんだけど、男子はちょっとねー。あとあんまり動かないでね?お兄さんをおんぶして歩くのってなんだかすっごく怪しいんだよ!


「まじめにです」

「話が進みません」


 サラさんとクロエさんに怒られた!もう、ケモミミの兄さんめ!


「あれ?俺が悪いのか!?」

「まぁ許そう」

「許された!いや、俺悪くないよな!?」


 そういう訳でこのケモミミの兄ちゃんを助けたのには意味がある。

 いやぁ、ちょうどいい所に転がっていて()()()()()()()な!被害者で当事者で現場の事を良く知る誰かさんを探していた所だったんだよ?()()って怖いね!うふふ?俺が歩けば棒に当たるんだよ!ケモミミの兄ちゃん犬系だし?わんわんお!


「見つけた所でどうするんです?」

「まずは状況把握だよ。で、わんわんさんや」

「ヴォルフだ!わんわん言うな!……なんかもう疲れて来たぞ」

「マラソンでもしたのかな?まぁ兎も角、まず聞きたいことはお兄さんの出身地とその近くの鉱山に巣食ってるキラーアントの規模だよ」

「俺の出身の村はリリアの村だ。ここから東に言った所だな。キラーアントの規模は、そうだな。俺の村にいる人間を一人一体で全員食えるくらいだな。今は森の動物や魔物を喰ってるみたいだが、恐らくもうすぐ村が出してる生贄では足りなくなるだろうな」


 つまるところ、二百体くらいらしい。俺の記憶が確かならばリリアの村は人口三百ほどの小さな村。その村から生贄やら税に収めるために働き盛りを奴隷に出して人口は三分の二まで減っている。老人が生贄に向かい、若い男たちが奴隷になっている。残されていくのは女と子供ばかりになっているとの事。村の将来がやばいよ!それよりキラーアントがやばい!

 キラーアントの生態は女王が巣食った土地で規模を広げ、根こそぎ喰らいつくしたあと、産まれた次代の女王に自分と部下たちをすべて喰わせ、巣立って別の土地へと向かうというもの。詰まる所、世代を追うごとに手が付けられなくなっていく厄介な魔物なわけなんだよ!二百もいるって事は当たりを食いつぶす一歩手前まで来てるよ!誰だよそんな糞みたいな魔物引き入れたの!


「どう考えてもあの魔王でしょうね」

「この土地をすべて喰らいつくすつもりなのでしょうか?」


 つもり、ではなくそのつもりなんだろうね。あとの事を全く考えていないんだよ?公共事業は表ばかり綺麗にしてあって、下水も壊れて川にたれ流されている。浄化の魔法陣さん機能してないね!


「こちらもですね。記されていた市内の事業のほとんどは行われた形跡もありません」

「上水に使われている浄化の魔法陣だけは綺麗にされていたようですが……」

「うん……ぼろ、ぼろ……」


 工業廃水なんかも垂れ流しだ。川の水が七色に光り出しそうだったよ!汚いな!


「でも、いったい何が目的なんでしょう?この領をつぶそうとでもしているんでしょうか?」

「そこまではまだわからない。けど、たぶん何か目的があって、そのために金が必要だったんだろうね」


 それも恐らくまともな金じゃ足りないほどに。いったい何につぎ込んでいたのかな?お兄さんわかるかい?


「さてな?俺の村のおばば様なら何か知ってるかも知らねーが……」

「ほう、その心は?」

「風を詠む呪い師でな、危険や嫌な感じがする場所を察知してくれんだ。最も今この状況で役に立つかはわかんねーが」


 うん、周り全部が危険でいっぱいだからね!もしかしたら風を詠もうにも詠み切れないかもしれないな!けれどもせっかくの手がかりだ。行ってみるのも手だろう。


「でもその前にこの辺に勇者御用達の裏教会的なところはどこだい?あるって聞いたんだけど?」

「な、なんだお前勇者だったのか!?じゃ、じゃああの魔王を討伐するつもりで……」

「討伐するかはともかく排除は絶対にするつもりだよ」

「あと、普通の勇者が魔王を討伐すると人間たちが土地を求めて押し寄せてきますよ」

「ぐ、それだけは勘弁だな……」


 結局のところ人の国がこちら側を攻めてくる理由はそんなところだ。土地と財産と奴隷が欲しい。魔族側も同じ。だから互いに戦っている訳だ。種族が違うだけでただの戦争だよこれ!


「まぁ、ともかくアレだよ。俺は勇者だけど、どちらかというと魔王側なんだよ。それも本来この地を治める魔王のね?」

「じゃ、じゃあ、あの魔王を追い出したらまた元のまともな暮らしが!?」

「んー、そこはみんなの頑張り次第だからなんとも?でも少なからずはましにはするつもりだよ?」

「はい、真人様は無駄に優秀ですから」

「ですね、無駄に仕事ができますし」

「はい、無駄に分身までしますから」

「むだ……むだ……むだ……むだ……?」


 くそう、フルボッコだ!俺頑張ってるんだからね!頑張ってるんだよ!書類の山さんと格闘するのはかなり疲れるんだよ……。正直もうぐったりさんなんだよ!


「はは、なんだかよくわからんがわかった!まずは教会だったな?勇者が出入りしてるって噂があるところはあそこの角を曲がった路地に入ってすぐの酒場だ。よく見たら十字が切ってあって魔石を持ってる魔族なんかは寄り付きづらくなってるみたいだったな」

「本当に色々と知ってるな兄ちゃん」

「こう見えて昔は酒場巡りが趣味でな。いつか飲みに行きたいって思ってた場所だったんだよ」


 照れくさそうに俺の背中で頭を掻いている犬の兄ちゃん。うん、兄ちゃんのテレ顔みても嬉しくないよ!兎も角はてさて勇者の酒場だ。セーブポイント(死に戻り)の更新って初めてでちょっとわくわくだよ!やっと大魔王の間で無限復活フルボッコからおさらばだ!あ、でも大魔王城のセーブポイント大魔王の間しかないよ!こ、困ったなぁ……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ