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勇者だけど大魔王城で執事やってます。え、チートってもらえるものなの?  作者: 黒丸オコジョ
第一章:大魔王の姫と勇者な執事?みたいな?
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6話:君の名は何かと聞かれたら答えてあげるが世の情けだよね?

 すれ違う人すれ違う人に聞きに聞いて、やっとたどり着いたよ空中庭園!

 聞く話によるとこの庭をお手入れしているのも件のお姫様らしい。ううん、すごい。すごくない?

 すっかりと暗くなった外に出て、跳ね橋を渡る。


 んー住んでるというか隔離してあるよね、これって?


 見上げると大樹の桜。ソメイヨシノにも見えるけど、こんなに大きくなるなんて聞いたことないんだよねー。


「異世界で突然変異したのかな?なんか花びら光ってるし!って、ん?」


 よく見ると桜の大樹の上の方で何かが動いた。人影かな?んー、スカート履いてるし、女の子かなー……あ、落ちた。 

 手持ちの残りのお札を使って風を巻き起こし、自らが風になって駆け抜ける。普段の一歩が十歩になり、壁を蹴り、屋根を蹴り、幹を蹴り、少女が落下する寸で受け止め、勢いを風圧で殺しきって屋根の上へと落下して、ドリフトターンで見事に止まる。うん、止まったよね?止まったな!ギリギリだ!


「――あ、貴方は?」

「そう、俺は――ピーターパンさ!」

「ぴ、ピーターさん?」


 おおっと思わず言いたいセリフを言っちゃった。男の子なら言ってみたいよね。格好いいし?


「で、怪我は無かったかい?」


 お姫様抱っこを颯爽と決めたのだ。ここは頑張ってイケメンスマイル全開で行くべきだろう。


「はい、その、怪我は無いです。危ない所をありがとうございました」


 サラサラとした銀色の長い髪を垂らし頭を下げてくる。うん、お風呂上りなのか上気した肌が赤みをさしていて色っぽい。というか、付けてないよねブラジャー。肩出てる服なのに紐が無いよ!ヌーブラかな?


「え、えと、その、それで、ですねピーターさん」

「ん?ああ俺か。何かな?」

「そのぅ、て、手をその、ええと……」


 顔をさらに真っ赤にしていく少女。金色の目がうるうると緩み、長いマツゲを少し濡らしている。

 なんだろう、こうイケナイ感情が胸の奥底から湧き上がってくるような――落ち着け、落ち着こう、まだ立ち上がっちゃダメだ。落ち着け俺のザンバットソードさん!ウェイクアップしちゃダメ!フィーバーじゃないよ!!


「む、胸から離して、いただけるとぉ……」


 ……ん?胸?

 ふと、手を動かす。大きすぎず、ほどよい大きさの柔らかな感触が手のひらに広がる。


「ん、ぁ」


 長いマツゲを揺らし、少女が唇をかみしめる。頬が更に朱に染まり、心なしか固いものが……。ふふふ、いけませんねぇ!


 そっと少女を地面に下ろし、正座スタイルで頭を地面にゴリっとこすりつける。


 平身低頭。


 日本男児ができる最上位の謝罪の形。そうそれはDOGEZA。古来より伝わる伝統の詫びの方法だ。これでだめなら切腹しかないよ!


「あ、頭を上げてください。その、私のをもんでも、あんまり、ですし?」

「い、いやいやいや!そんなことは!とってもやわら……じゃなくて!そこは怒らないと!というか!うん、申し訳ありませんでした!!」


 頭をゴンガンと地面と言う名の屋根に数度たたきつける。石畳だから割と痛いぞ!


「だ、駄目です!怪我しますから!わ、私の胸でよければい、いくらでも……ってあれ?違うくて、うぅ、その、ごめんなさい……」


 顔を真っ赤にして少女はうつむく。何だこの子、いじめて欲しいの?いぢめていいの?抱きしめていいかな?いやいや、ここはまず口説いていかないと。そう、確か女の子を口説くには褒めないとだめだと妹が言っていた。褒める……かわいい!いや、違うな。


「うん、君の目ってすごくきれいだね」


 月並みだ!並々だよ!普通過ぎないかな!でも仕方ないよね童貞だもの。あ、ちょっとまた涙が……。


「え、目……目っ!そう、ダメ、ダメです見ちゃダメっ。私の、見ちゃダメなんです」


 ダメって……んー太ももがまぶしいな?


「ひゃぁ!?じゃ、なくて!め、目です!目を見ちゃダメなんです!」

「メって目の事?なんでダメなの?んー?すごく綺麗だし、可愛いよ?」

「か、かわ、かわいい……?」


 真っ赤な顔が更に赤くなってる。茹蛸みたいでなんだかおいしそ……とっても可愛い。タコは可愛くないけど!


「で、でも、私の目は見ると危なくて………………なんとも、ないんですか?」

「んー。ちょっと、ときめいたくらい?」

「と、とき……っ!」


 作画が崩れていきそうなレベルで放心している。んー、そんな顔してるとイタズラするぞー?


「にゃ!?い、いやらしいことダメです!」


 お肉ってこう、筆でね?で、何?いやらしいこと?


「~~~~~~~っ!」


 真っ赤にしてポカポカと叩いてくる。ふふ、可愛いけど割と痛いな!たぶん俺よりパワーあるよ!


「で、お姫様にご飯を届けに来たところで君が落ちて来たんだけど、知らないかな?」


 どう考えてもこの子がそのお姫様だけど一応、念のために聞いてみる。


「……えと、い、今お風呂、そう、お風呂に入っています。あとで私がお届けしておきますね」


 目を泳がせながら、汗をだらだらとかきながら少女が言う。

 そーなのかー。そうなのかー?


「そう、そうです。私はオウカ様のお、お付きの者で、サクラっていいます」

「ふーん、サクラちゃんっていうんだ」

「はい、その、お父様や姉さまにも良くそう――」

「あだ名なの?」

「い、いえ!名前、名前です!」

「ふぅん、なるほどね。それでサクラちゃん。お姫様に逢ってご挨拶とかしちゃダメかな?」

「い、今は無理です!」


 うん、目の前にいるしね?


「お風呂、そう、お風呂に入られていますので」


 そういう設定だったねー。でもお付きの人が先に入っちゃダメじゃないの?


「………………や、優しいお方?ですので」


 うん、そういう事にしておこうねー。


「それでその、ピーターさん」


 あれ、誰だっけ……あ、俺だ!うん、ナニカな?


「ピーターさんはこれからお食事を持ってきてくれる係さんになったんですか?」

「んー、今日来たばかりだしなぁ。色々と仕事を手伝わないといけないみたいだし、どうだろ?」

「そう、ですか……」


 何故かサクラちゃんはしゅんとしてる。

 あれ?俺さっき君の胸揉んだよ?普通来ないようにっていうんじゃないの?モミデレかな?


「じゃ、じゃあっ。その、私の胸、触ったんですからせ、責任……取ってください」


 責任って、え、結婚!?


「そ、そこまでじゃないですっ。ただ、お食事をピーターさんに持ってきていただけたらな、と……」

「それくらいなら全然かまわないけど。あ、それならついでに勉強教えてくれない?」


 実のところ割と深刻だったりする。読めないんだよね、こっちの世界の文字。案内板があっても何かいてるかさっぱりわからない。お仕事に支障がでそう!というか出る!


「べ、勉強ですか?」

「文字もだけど魔法とか精霊?とかの事も教えてくれると嬉しいかなー」


 押せば行けそうかなー?まぁ、断られるよね。セクハラされるかもしれないよ?俺に?


「え、エッチなのは駄目です。けど教えるのはいいです。魔法とかは結構得意ですから」

「……サクラちゃん、無防備すぎるよ?」

「そう、ですか?私みたいな子って誰も気にしないと思うんですが……」


 自己評価低いよこの子!あれだよ!君ってば今現在俺ランキング一位の美少女だからね!


 ……まぁ目が原因だろうなぁ。魔眼とか厨二さんなら欲しがるものだけど、あっても困るだけ。人と普通に目を合わせて話すことすらできないんだから。

 できないからこんなところで、城からの跳ね橋しかない陸の孤島のこの場所で、結界まで貼られて、独りぼっちで過ごしている。年頃の女の子が寂しくないわけが無い。無いよなぁ……。


「気にするよ。俺がする。だからまたご飯持ってくる。今日は冷めちゃってるけど、次は冷めないうちにね?あの龍のおっちゃんの飯はあったかい方が絶対に美味いから。あと真面目に勉強教えて欲しいなって」


 いかん、照れくさい。あ、三つの月が奇麗だなー。白いのが特に。


「はい、お待ちしていますピーターさん」


 うん、約束ね。指切りげんまんだよ。きっと君を泣かせないようにまた来るよ。

 でも誰だっけ、ピータさんって。………………あ、俺だ!


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