挿話:憂鬱な大魔王のお姫様とメイド祭りな勇者な執事8
目が覚めた。
あれ?目が覚めました?いやいや私はまーくんにマッサージしてもらっていたはずで……ま、まさかいつの間にか寝て……?は、はれ、寝間着をちゃんと着てる!?い、いつの間に着替えを……。
「おはよう、ごめんね。初めてなのにちょっと頑張り過ぎちゃったみたい」
ベッドの横から声が聞こえて振り向くとなんでかマー君が正座していた。
いやいや、まーくんは悪くないですよ!私が気持ちよくて寝ちゃっただけですし!その、とても気持ち良かったですし……。
「さくらちゃん……」
ぽ、とまーくんの顔を見てて頬を染めてしまう。うう、だってまーくんの手って大きくてゴツゴツしててそれでいて触り方が繊細で、す、すごかったんですものっ!
で、でもそんなことより私が着替えちゃってることです!下着もはいてますし!どどど、どうしてですかね?
というかあれ?しかも私なんで目隠しを……?
「それは、私が綺麗にしたからです」
部屋の扉が開いて入ってきたのはアリス姉さま!あ、あれ、なんでここに姉さまが?
「うん、俺が呼んだんだよ。流石に俺が着替えさせるのはサクラちゃんが困っちゃうかなって思ってね」
「まったく、お願いしてみればこれなんですから……。変な事されませんでしたか、サクラ。胸とかお尻とか触られたりとか」
「変な事……?いえ、そこは触られてないと思いますよ?手足とお腹と足……ですね。お腹を触られてる辺りでなんだかもうろうとしてましたけど」
「もうろうと……?」
ギロリとお姉さまがまーくんをにらむ。違います、違うんです!寝ちゃってただけですから!ぐっすりでしたよ!ぐっすり!最近ちょっと悩んでた肩の痛みも取れてますし!すごく軽い!
「はぁ……まったく。サクラがこう言うならいいのですが、貴方も加減をしてくださいね?この子は箱入り娘でちょっとの刺激でも強すぎることもあるんですから!」
「は、はい。肝に銘じます!」
しおしおとまーくんが頭を下げている。うう、まーくんは何にも悪くないのに……。
「まぁ、効果は少なからずあったみたいですがね。先ほど見ましたが、おなかのあたりが少しすっきりしていましたし」
「え、も、もう効果が!?」
流石にびっくりです!こんなに効果があるだなんて……。た、たまにならまたお願いしてもいい……ですよね、姉さま?
「はぁ……。ほどほどに、ならね?真人さんも加減をお願いします」
「はい、全力で加減いたします。こう、フェザータッチに優しく丁寧に?」
あれ以上優しくされると私、どうなるのでしょう。こう、まだ余韻でお腹の奥がなんだか熱を持ってる気がしますし……。おといれ、じゃないですよね?何なんでしょう?
姉さまが更に念押しをして自分の部屋へと戻っていった。まーくんはまだ正座中。
「もう、足を崩されていいんですよ?」
「ううん、でも本当にすこしやり過ぎたなって思ってるんだよ……。サクラちゃんってば後半ものすごく足が跳ねててぴちぴちしてたし……」
記憶がない!わ、私どんな状態だったんです!?へ、変な顔とかしてないですよね!?してませんよね!?
「あーうん。大丈夫だよ?とろけて可愛かった?し。うん、可愛かった」
なんでかまーくんは耳まで赤くして目を逸らす。むー、目を見て話してください!見てくれないと寂しいです……。
「はいはいごめんね。大好きだよ、サクラちゃん」
そう言ってまーくんは私の頭をなでなでとしてくれます。これが私のとっても幸せな時間。大好きな人に愛してもらう本当に幸せな時間。けれどもその時間は短くて、短いと一日に二時間ほど。うん、せめて寝るまで一緒に居て欲しいというのが私の気持ちというかわがまま。まーくんにぎゅっと抱きしめてもらったまま寝ちゃいたいなーと思うんです。これくらいならはしたないだなんて思われない、筈。はずです。うん!
でも前までこんなことなかったのに。まーくんが悪いんですよ?と言って思う存分私はまーくんに抱き着きます。そんな私を受け止めて頭を軽くぽんぽんとなでて続けてくれる。えへへ……。
「でもなー。お家に帰らないと心配症な子が心配しちゃうし?というか、アリステラさんの目がちょっとこわいなって?」
ここでも姉さまが……!で、でも諦めません。恋人になって、もーっとまーくんとラブラブしたいんです!
とてもじゃないけれど、二時間じゃ足りないんです!
「はぁ……わかりました。っと、そうです!可愛いタペストリーを作ったのでよかったらまーくんの部屋に飾ってくれませんか?今日来てくれたらプレゼントしようって用意していたんです」
私が取り出したのはタペストリー。色合がとっても綺麗で男の子の部屋にもきっと大丈夫だと思うデザインにしてあります。参考にしたのはお父様と一緒に見たクワガタ……じゃなくて龍がモチーフのアノ番組です。
「これはまさかアギトの……!お、俺のために?ありがとうサクラちゃん!愛してる!」
「私も愛してます!」
えへへ、頑張って作って良かったです。でも、これにはちょっとした仕掛けがあるんです。一生懸命頭を捻ってやっと出来上がったんですから!
ふふーびっくりしてくれたらいいなー。