挿話:くっころな勇者さん達と勇者な執事7
むりむりにお餅を欠食児童な残り二人に詰め込んでお茶を出したら泣かれちゃったんだよ。そこまで美味しかったかな?まぁ、あれだよ?ここに勇者としてきたんならどう足掻いても死んでるんだから、二度目の人生は楽しまないと!今から幸せ探して、幸せで幸せで、幸せの絶頂になったら結婚とかして、子供を作って、老いなくても子供たちを見守って、幸せに暮らせばいい。そんなのでいいんだよ?ハッピーエンドなんてそんなもの。
「そういうわけで追加のお汁粉だけど……食べる?」
「く、くそう、みたらしで満足できたはずなのに……」
「あんこが!あんこが私を狂わせるの!」
「ずず……ふぅ」
どうやら夜宴はもう少しだけ続くみたいだ。
ロベリアちゃんも含めてこの子たちは幸せにしてあげたい。うん、でもサクラちゃんの次だからね?サクラちゃんはもーっと幸せにしてあげないと行けなんだから。だって恋人で婚約者で俺が執事なんだからね?うん、属性過多かな?かたかた?
翌日。お腹の肉をくっころ三人娘が気にしていた。気にするくらいならそんなに食べなければよかったのにと言ったら足を踏まれてお腹をつままれ頬をねじられた!痛いよ!?
仕方ないので訓練さんだよ?勇者なら勇者らしく魔人さん達と戦って訓練さんなんだよ!あ、訓練だからころころは無しだけどね?三人の実力を見たいというのもあるけど、三人は手足が戻ったばかり。動かせているようでどこか少しぎこちない所がある。お仕事に支障がでるかもだからここらでガツンとやってもらったらなって?
「そう言ってボクたちのところに連れてこれる胆力に感心するよ、真人。」
「お、ついにライガーに本名で呼ばれたんだよ!」
「お前が教えないからだろ!」
ガオーとライガーに吠えられる。モフモフのしっぽの毛先がピンとなっている。はは、怖くないぞー。
「ふふふ、勇者との実践訓練はこちらとしても有益だから構わんぞ!しかし、姫と婚約して一日で三人……四人か……。やるではないか!」
「んんん?ライおっさん何の事かな?俺たちは健全だよ?健全さんだよ?というか俺サクラちゃん一筋だよ!アイラブサクラちゃんだからね!なんで急に浮気したって事になるのさ!?」
「え、だってあ奴ら四人にお前のにおいがついておるぞ?」
いやいやそれは昨日お餅パーティーさんを開いたからでね?俺の部屋で開いたから匂いがついてるんだよ!あ、四人とも服の匂いを嗅いでジトらないで!と言うか4人とも寝る前は寝間着だったよね!俺クレオさんに寝間着も作ってもらってないよ!いいな?
大きな剣は迷いなく獣族の体をとらえる、しかしそれではまだまだ甘い。アレは人を倒すための動きで、獣を狩るための動きじゃない。林檎ちゃんは中々に美味くおいしく?魔法を交えているけど、剣の使い方にムラがあってムラムラする。うん、スパッツさんはいててもひざ丈のメイド服だから気になるんだよ!なんで三人とも短めなのかな!他のメイドさんロングだよ!?え、動きづらくてかわいくないから?仕方ないかー?
苺ちゃんは後衛で詠唱を唱えつつ、全体を見回している。異世界歴半年足らずの二人とは違って、動きのムラが少なくてちゃんと後衛してる。けど、後ろに詰められると一気に崩されてるからダメダメさんかな?もっと運動しないと!詠唱しながら走り込みさんだよ!俺も付き合うよと言ったらなんでか喜んでた?ううん、やっぱり不思議な子だなー。
「で、お前は吾輩とやる訳か」
「昨日は訓練できなかったし、ライガーはくっころ娘に掛かり切りだしね?ライおっさんがいいかなって。うん、試したいことも色々増えたし調整したいなってのもあるしね!」
強さ的に言えばライおっさんはシルヴよりも強い。けれども本気を出させるくらいやったら訓練じゃないから、こっちも本気を全部出さない程度で全力を尽くす。
<喚ばないのか……>
うん、大魔王の間で応えてくれないジ・アンサーさんはじっとしておいてね!異空間でも召喚できる方法を探してからが出番さんなんだよ!あと訓練だから!出てきたら訓練じゃなくなっちゃうから!あとでお手入れしてあげるから我慢して!
拳を構え、正面にライおっさんを見据える。今回も無手で挑むけれども、一応意味がある。
三人に安心してほしいんだ。君たちを守ってる俺がそれなりには強いんだって、もうあんな目には俺があわせないって。だから、ライおっさんが丁度いい。聞いてみたけど四天王に優劣は無くて大体同じくらいの実力らしいよ!いないのか、四天王最弱さん!誰から倒しても同じだぞ!ふふ、怖い。
「お、おい、本当に何も武器を持たずにやるのかアイツ?」
「ああ、アイツはアレでいいよ。前は札?とか使ってたけどそれでもライオネル様とやりあってたし。んじゃ、またボクが審判を務めよう」
ライガーがジトってる。ふふ、ごめんね!訓練場さんの事はたのんだよ?
ふぅと息を吐き上着を投げ捨てる。今回は札は使わない。今自分ができる全部をぶつけてみる。
「――はじめ!」
「是ちぇりゃあああああああ!!」
開幕、ライおっさんが地盤を砕いた!こちらの機動力をつぶしに来たついでに岩石を飛ばしてくる。うん、危ないよ?ひょいひょいと躱したところで詰めてきたライおっさんの爪が急所を狙って通り過ぎる。けれどもそこには俺はいない。ふふ、残像だ?
「分身、か!」
「さぁ、どうだろうね?」
腹に拳を当て、撃ち貫く。無限流/無手/穿――!
「ぬん!効かぬわ!」
一度撃って見せている技。効かないのは道理。でも、威力を分散させるために跳んだね?
――大地を踏みしめ祝詞を唱える。うん、貫け?
「な、ぬ!?」
大地が軋みを上げ微量ながらに石槍を噴出させた。威力は無い。けれどもこれでいいんだよ?ガードしてくれたし?辺り風が巻き起こり、その風に任せてライおっさんを蹴り上げる!おお、高く上がったな!けれども堕ちた所で猫さんだ。かすり傷一つ付けれずに落ちて来る。
――だから技を放つんだよ?雷を喚び起こし、体に纏う。
「いくぜ、四天王!」
風を紡いで追うように上空高くへと飛び上がる。
「このくらいで吾輩を!――カァ!」
獣神咆哮!獣の雄たけびは衝撃波となり、大地へと打ち下ろされる――だけどそれは陽炎。そこにも俺はいない。
「そこかぁ!」
くるりと体を反転させ、ライおっさんは爪を振るう。
――けれどもそれすらも俺じゃない。飛ばした殺気に過ぎないんだよ!
「ウェぇえええええええええええええええええええええい!!!!」
雷を纏った蹴りは振り向き爪を振るったライおっさんの腹にめがけて蹴り下ろす。ふははは!これこそ大魔王対策その二!ライトニングブラスト?的な?
「ぬぅおああああああああああああ!?!?」
地面に叩きつけられ立瞬間にためられた雷が爆散する。ふ、決まったな……。
「う、ぉ。この、思い切り叩きつけおって……。……は!肩コリが治ってる!?」
くそうくそう!効いてないばかりか肩コリ治しちゃってるよ!土煙の中からちょっとおけけがチリチリしてるくらいでピンピンしてるよこの人!
「はいはい、そこまでそこまで。ライオネル様もだけど、訓練場をいつも壊さないで!?直すのボクらなんだからね!?というか直人は手伝って!」
うん、ごめんね?この後お料理さんだから!ご飯大盛でおかずも追加するから許してね!
けれどもやっぱり上手くいった。
あの日以来、木と土の属性の相性がぐぐんと上がってたから試したかったんだよ。
魔王を倒したからなのか、魔石をゲットした影響なのかはわからないけど、媒介を通さなくてもある程度なら力を貸してくれるみたいだ。うん、ちょっと嬉しいな?炎と金さんはちょこーっとだけ良くなったかな?程度だった。もうちょっとこう、手心をくれたらなー。ダメ?ダメらしい……。悲しいな!
無理無茶な技でも隙を見て必殺技を放つって男の子だなって?