挿話:魔法少女’sはお役に立ちたい!6
美味しいお母様のお菓子とお茶に舌鼓を打った後、久々の私のお部屋で女子会というものを開くことになりました。……真人さんは一宿一飯のお礼にとキッチンへ行ってしまいましたが大丈夫でしょうか……。変な事になっていなければいいのですが。
「うう、食べ過ぎた……晩御飯入るかなぁ……」
「お母様のお菓子って美味しいけれど、結構カロリーがあるモノが多いのよね……。それでも食べちゃったんだけど!!」
ぽんぽんになったお腹を姉さんと真理さんがなでなでしつつ、深く、とっても深くため息を付いています。ううん、食べ過ぎは体に毒なのですよ?
「カトレアちゃんは意外と平気そう?」
「あの子、意外とお腹の中が異次元なのよ」
「それはちょっと聞きづてならないのですよ!?」
私はちゃんと晩御飯の事を考えて控えていただけなのです!と頬を膨らませると、二人に笑われてしまいました。むぅ、本当にそんなに食べてないのですからね!
「メイドさんにお願いして冷たいお茶を貰ってきましたよ」
ガチャリと扉があき、カートを引いてビオラさんとライガさん、シレーネさんがキッチンから戻ってこられました。あれ、お茶だけじゃないのです?
「ついでにつまめるモノもね!久々の甘味!ここで食べ貯めしておかないと!」
「「まだ食べれるの!?」」
ライガさんの言葉にお姉さまと真理が驚きの声をあげます。先ほどのお茶会でも私たちよりも食べていた筈なのに……。
「私はチートの特性上幾らでも食べれますが、ライガ様は獅子族ですから」
「まぁ、ボクは一応魔石持ちだからな。割と燃費が悪いんだよ」
と言いつつお皿の上のマカロンをパクリと口に投げ入れてしまいます。健啖家とは正しくライガさんの事なのでしょう。ふふ、私なんてやっぱりまだまだなのですよ!
「それにしても兄さんったら何で祠何て……」
ごろりとソファに寝転びながら真理が不思議そうに首をかしげます。そういえば今まで倒したり逢って来た魔王様の所でも祠は作らずとも真人さんの手作りのお守りを魔王様たちのお子さんに手渡していました。何か理由があるのでしょうか?
「さぁな、元々の予定にあんなものを作ったり渡したりするなんて計画は無かったから真人の思い付きじゃないか?」
『それこそ、私への信仰……献身であろうな!ああ、愛されておるのう、私!』
『どうでしょう?我がままな神様だったとも聞いていますが――はひ、ほっへをひっはらなひでふははい』
こなろう!とまたヒルコ様が人魂ぬいぐるみ姿の沙夜さんの頬を引っ張っています。この二人、なんだかんだで仲が良いと思うのです。
「ヒルコ様が嬉しそうだし良いんだけど……。はぁ、なんだかゲームで言うパワーレベリングをさせられてるような感じで辛いというか、寂しいのよね。私だって、戦えるようになって来てるのにぃ!」
ジタバタと真理さんが文句を垂れます。でも、確かに私たちのパーティでは強い人が前面に立って戦っていて、私や姉さん、真理さんは後ろで後方支援で補助魔法をかける位しかしていないように思えます。
「とはいえ、ボクと真人で前衛は十分だし。中衛にしてもシレーネが出れば事足りるからなぁ」
「大量に魔物が出てきた時の殲滅系魔法も割と使いどころが難しいですしね……」
「そういえば、カトレアちゃんは割と戦力過多だよね……」
「こう見えて次期魔王候補ですしね、私の妹は」
何と?!と真名が驚いています。まぁ、姉さんがヴァンパイアとしての血が薄く魔石も無いので私に次期魔王という白羽の矢が立ってしまうのは自然の流れなのですが、まだまだまだ先の話。お父様が引退されてからになりますから、お父様が倒されない限り数百年は無いのではないでしょうか?
「カトレアちゃんが魔王になる頃にはおばあちゃんになってる!?」
「大丈夫です。真理さんは勇者なので老化はしないはずなのです」
「なるほど、それは安心――え、何それ怖い。まって、私の胸――」
ペタペタと青ざめた顔で真理さんが胸を触っています。……そういえば、真理さんって私と同じかそれよりも……いえ、女性は胸ではありません。もう一度言います。胸では!!ありません!!
「良い事を云った。ああ、その通りだ。ボクもそう思う。女性の価値は胸で決まるモノじゃない!!」
「ライガ!」
「真理さん!」
ガッシと三人で手を取り合います。ああ、ここに友情が――!
「とはいえ、うちのカトレアはまだ成長期ですけどね」
「「解散」」
「ちょ、姉さん!?」
ライガさんと真理は二人して沈んだ顔で膝を抱えてしまいました。うう、仲間外れはいやなのですぅ!
「ですが、大きすぎてもいいものでもありませんよ?」
「そ、そうですね。肩こりとか結構ひどいですし……」
「「がふぅ!?」」
シレーネさんとビオラさんの言葉に二人はトドメを刺されたかの如く倒れこんでしまいました。だ、大丈夫なのです!?
「ふ、ふふ、胸の大きな人はデメリットとして言うけれど……」
「ぼ、ボクらからしてみれば一度は行ってみたいセリフなんだよね……」
二人は悲し気にそう呟いて涙を流していました……。
「そ、そそ、そういえば、高難易度クエストとして出されていたモノはかなりクリアしましたから、真人さんだけではなく私たちのランクも一気に上がりますし、そろそろ勇者教から打診が来るのではと言っていましたね」
「確かに。魔王クラスなどではなく、実際に魔王を討伐していますからね。まぁ、魔石は納めていませんから報酬は少なかったですけれど」
ビオラさんと姉さんが必死に話を変えようとしています。ですが、確かにあれ程までの実績を上げた勇者ならば勇者教本部に呼ばれて然るべきなのです。尤も、目的はさらにその先。真人さんの奥さん――魔王オウカ――サクラさんの魔石を取り戻すこととなのだそうですけれど。
「……まだ、サクラさんの魔石は無事、何ですよね?」
「契約をしている真人曰く、まだ大丈夫だと言っていたな。尤も、オウカ様は魔王とはいえ大魔王様の娘。その魔石ともなれば中々に砕けるモノではないさ」
ライガさんが肩を竦めてそう言います。
真人さんがそう言うのなら安心していいとは思うのですが、本部へ行ってからのプランはまだ白紙なのだそうで、潜入してから決めるとの真人さんの弁でした。ううん、本当に大丈夫なのでしょうか?
『真人様は昔から大体そんな感じです。私を救っていただいたときも行き当たりばったりだったようですし』
『まぁ、仕方あるまい。真人の奴は行き当たりばったりを何とかする――いや、何とかして来た経験しかないのだからな』
うんうんとぬいぐるみ姿のヒルコ様と沙夜さんが頷きあっています。――元の世界の真人さん、か。
チートも無いのにあれだけすごい人をどうして向こうの世界の人は死なせるような目に合わせたのでしょうか?話を聞いても私にはいまいちピンと来ないのです。
――真人さん一人の不幸で皆が幸せになれると、そう信じられたのかが。
『それが行き過ぎてしまった信仰と言うモノだ。盲目的になれば例え間違っていようとも疑問すら浮かばん』
と言うか私が違うと言ってもアイツらには私の言葉は届かないし!とヒルコ様はプリプリと怒られていました。
……せめてこの世界では真人さんに幸せになって欲しい。どうやらここにいる皆さんの気持ちは同じのようでした。
だから私はお役に立ちたい。ええ、このままではダメなのです!
今日も今日とて遅くなりm( ˘ω˘)スヤァ




