40話:女勇者とか女騎士と聞くとどうしてもくっころと言わせたくなるのが世界の真理だよね?
目が覚めると大魔王の間だった。あれ?おかしいな?死んで無かったよね?死んで無いぞ?
「くくく、勇者よ。死んで無かったから殺しておいた?」
犯人が自供したよ!!被害者の前で自供しちゃったよこの大魔王!!というかなんで殺してくれちゃったの!目が覚めたら知らない天井でサクラちゃんが手を握ってくれてるのが定番じゃあないのかい!!
「え、何そのテンプレ余は知らん」
口笛吹いて横を向くんじゃないよ!どうせアレだろ!治療費とか浮かすためだろ!ラストエリクサーは使うものなんだよ!?
「にあ殺してでも奪い取る?」
「それは氷な剣じゃなかったっけ?そうじゃなくてね!?」
大きくため息をつく。うん、ダメだよこの大魔王。勇者の命をなんだと思ってるんだこの人でなし!あ、大魔王だ!くそう、くそう……!
「まぁアレだ。そのまま治しても良かったが場を収めるにはアレしかなくての?」
「あー……やっぱり聖剣使ったのまずかった?手元に来たから使った感じだったけど」
聖剣はこの国の秘宝であり、サクラちゃんのお母さんの形見だ。それを俺が振るうと言う事はその資格を得る前にかすめ取っていたと思われてもしようがない。
でも、うん、あれなかったから勝てなかったんだよなー。だからこそあの異空間をぶっ壊して外に抜け出たんだし?
「真人は顔の通り腹黒いのう」
「ふ、ついに大魔王も俺のイケメンフェイスに……うん、自分で言ってて悲しくなったんだよ!悪かったね根暗な顔で!」
真理からもいつも言われてたんだけどね!ほっぺたムニムニつんつんされながらね!ぐすん。
「打算に打算を重ねて勝てる道筋を見つけ出したらああなった?全部が計算通りじゃないんだけどね。というかうん、本当なら一個手前の一撃で決めれたらって思ってたんだよ?」
「だが足りていなかった。まぁ、しかたあるまいて。急造の一品だったしの。アレを全て魔鋼で仕上げていたなら結果は明白であっただろうしな」
くくくと大魔王は笑ってる。うん、そのためにはどれだけのお金がいるのかなって。たぶんタトバじゃ足りないよ!プトティラでもまだ足りない気がするんだよ!?俺の寂しいお給料さんじゃとてもじゃないけど買えやしない。わかってて笑ってるからたちが悪い。本当なら勝てない。この魔王はそう言いたいんだよ。
「だが、結果として聖剣はお前を選んだ。それは余にも予見できなんだ事だったが、サクラはいたく喜んでいたぞ?母の剣をお前が振るった、とな」
「サクラちゃんが、か」
「いや、もしかするとお主をあそこへと導いたのはあいつが――いや、流石に考えすぎだの」
あそこ、つまるところはあの桜の巨木の上。実のところ聖剣はあそこにあったのだ。
あの木があそこまで成長したのも、光を放つほどの魔力を得られたのもそこに聖剣があったから。
あの時、聖剣が答えを求めたとき、俺はそのことを確信したのだ。
うん、木を削っていた時は知らなかったんだよ!びっくりするよね、本当。
「まぁよい。結果勝ったのはお前だ。おめでとう!勇者よ、お前にはサクラと婚約が内定した!だが!!」
バサリとマントをはためかせ、大魔王は叫ぶ――
「姫を妻に向かえたくば!この大魔王たる余を見事倒して見せるがいい!」
「じゃあ、ゲームで?」
「え?」
「ゲームで?」
「え、えぇー」
えーじゃないよ!トリプルエーでもないよ!時間旅行は始まらないよ!なにも!いいじゃないゲームで!ゲームはね、戦いだよ?争いだよ?壮絶なんだよ?うん、ノーコンティニューでクリアしてやるぜ?やったね!!
大魔王にもう一つもやっとボールがアリステラさんに突き立てられたところでゲーム地獄から逃れた。うん、夜中までやったらそうなるよね?たぶんまだ武闘会のあとの披露宴というか飲み会の最中だろうしね!
「で、あいつはどうなったの?真っ二つにしちゃったけど」
「死にました。それは見事に綺麗に切られていましたから」
胸の中をもやもやとした気持ちが流れる。けれども、後悔はしない。反省はするが絶対に後悔だけはしてやれない。それがあいつへの手向けだしね?
「それで、彼の魔石はどういたしますか?」
「ん?魔石?」
「はい、魔王は魔石さえあれば年月をかけて復活できます。力添えがあれば少なからず早く復活することもありますが……」
選択肢としては3つ。砕くか使うか捨てちゃうか、だ。
あそこまでの男の命。砕くのも使うのも捨てるのもどれもなんだかもったいなさすぎる。
だからこう言う。
「うん、返しちゃって?いらないからって。あの土くれの魔石もたくさんあるしね?」
いつか復活して俺を殴りにきたら殴り返せばいい。そんで笑って飯でも食えたらいいなって。きっとあいつとならいい友達になれる気がするから。
「承知いたしました。そう彼の側近にお伝えしましょう。ふふ、お優しいですね?」
「優しいかはわかんないけど、少なからずあいつは国の事を考えてる男だったからね。あいつがいないと国がやばいんだよ?」
生き返ったらうんと働いてもらわないとだしね?せっかく持てた繋がりも台無しさんだからね!
「そしておまけと言っては何ですが、岩石王の中で飼われてた勇者たちはどうしますか?」
「どうするってうーんどうすればいいのかな?死なせてあげるってのは微妙そうだし?」
「そうですね、彼女たちには堕ちた勇者の烙印が施されていました。ですので死んで生き返ったとしてもまともな扱いもされずどこかで慰み者になるか殺され続ける運命が待ち受けているでしょう」
ダメじゃん!というか余計なことしくれてるよあの土くれ!
「じゃ、じゃあ殺さないで方法としましては?」
「一つは地下の勇者の墓で永久封印することです。眠るように封印されますのである意味幸せかもしれません」
確かにそうだろう。けれども彼女たちは苦痛と被虐の記憶のままに眠らされることになる。それはあまりにも残酷じゃあないだろうか?
「二つ目は貴方のモノにしてしまう事です。つまるところは奴隷ですね」
「んぶふ!?ちょ、それはいろんな意味でアウトじゃないかな!?男子高校生さんに女勇者を奴隷にするってっていろんな意味でレベルが高すぎると思うんだけど!」
好きな子と結ばれる前に奴隷契約はしたくないよ!ロベリアちゃんのジトも数段レベルアップしそうだしね!
「そうですか……。ならば話は早いです。早速封印措置を――」
「あ、あーうん。わかった!わかったから!それでいいよ。でもあの子たち腕とか足無いよ?ボロボロさんだけどどうするの?」
「そう……ですね。治す代わりと言っては何ですが、貴方が持つ砕いた中で大きい塊の魔石をくださいませんか?それでもこぶし大はあったかと思いますので」
「はいはい、それでいいのなら上げますよ。でもそのかわりちゃんと治してね?手足が動かないんじゃお手伝いもしてもらえないんだから」
このお城仕事は沢山あるからね!勇者だけど大魔王城で一緒に働いてもらうんだよ?俺も勇者だけど!
堕とし間違えたんだよ……。女勇者は堕ちてたんだよ?