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勇者だけど大魔王城で執事やってます。え、チートってもらえるものなの?  作者: 黒丸オコジョ
第一章:大魔王の姫と勇者な執事?みたいな?
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35話:無理を無理だと諦めたらそこで終わりだから終わらせないように走りぬく死なないよね?

 山のように残された土が回収されていく。あの勇者の子たちってどうなるのかなー。死なせてあげれば四肢はもどるのかな?そうなら、死なせてあげた方が幸せなんだろうけどなぁ……。


『大金星も三つ重ねればこいつの実力だ!次は誰だぁ!この勇者を誰が止める奴!!でてこいやぁ!』


 叫ぶ大魔王の声を聴き流しながら綺麗に澄んで晴れ渡った空を見上げる。


 コロシアムは先ほどの戦いでほぼ半壊している。無駄に暴れてたからね、あの岩のおっさん!けれども、これで場は整ったんだよ?


「さぁ、出て来いよ?最速の風っぴき魔王!それとも簡単に岩石の魔王を倒した俺に恐れを抱いたかな?ぶるぶるる?ここは寒くないよー?」


 うん、次で出てきてもらわないとやばいんだけどね?イライラが天元突破してたから思わずあのおっちゃんに木札を使いすぎちゃったんだよ?それでも勝つけどね?そのために俺は今ここにいるんだから。


「――そこまで言われたからには来ないわけにはいかないな」

「昨日と変わらずすかしてるね?イケメンだから余計に鼻につくんだよ」


 くそう!現れた瞬間に肩をすくめてヤレヤレだよ!くそう!様になってるよ!くそう!


「しかし、君がここまでやるとは予想外だったよ。僕が戦うとあの岩石王と戦うのは骨が折れただろうしね」

「おやおや?楽勝じゃなくとも勝てたのかな?この前は庇うだけだったのに?」

「ああ、勝てたさ。先に言った通りあの時に事を構えて変に意識されるのは困りものだったからね。君が僕の身代わりになってくれてよかったよ」


 いけ好かない。本当にいけ好かない。いい男だが、やはりいけ好かない。


「だからここで真人……お前を倒して彼女は僕がもらう。そして国をいま一度――」

「そんなくらいで変わるくらいならもう変わってるよ?手前の手腕が振るわなかったのをあの子で贖おうとするんじゃないよ?」


 そう、それは自分で解決することなんだよ?何かを犠牲にすれば得られるなんて甘い甘い考えであの子を妻に向かえ来たのなら踵を返して帰れっていいんじゃないかな?帰らない?そうだろうね?そんな甘い甘い考えでここまで来ちゃったんだからね?


「だからこそお前には渡せない。お前だけには渡せない。サクラちゃんの事を何も考えないばかりか国の民のことを置き去りにして自分一人で全部背負いこんだ気になってるお前だけには渡せない」


 ふぅ、と息を吐き怒気を強める。ああ、俺は今ものすごく怒っている。こんなふざけた奴がサクラちゃんの旦那になんてさせない。させやしない。俺があの子の隣に立つんだって決めたんだ。だからその席をふざけた理由で取りに来た手前をぶっ飛ばすんだよ?


「ぶっ飛ばす、か。きっと君は本気で言っているんだろう。だが、勝つのは僕だ。何もない君が僕を倒せやしないんだからね」


 シルヴが手に持つのはロングソード。恐らくはオリハルコンででもできているこの日のためにあつらえた特別製の剣だろう。

 対して俺は軍用の鉄剣。ライおっちゃんに無理行って譲り受けておいた一本をコリコリカリカリかりんとうと改造したものだ。


「そんな武器で僕に勝てるとでも?」

「俺の世界では弘法筆を選ばずって言葉があってね。俺くらいになるとこれで十分なんだよ?」


 本当は同じ剣がいいんだけどね!八割位強がりだよ!いいなぁ、すごい良い剣だよアレ!俺の持ってる剣も作りは良いんだけどね!うん、負けてないよ!……泣いて無いよ!!


「まぁ、良いさ。後悔するのは君なのだからね」

「後悔はしないよ?反省しきりの人生だけどね?だから後ろは振り向かない。前だけ見てお前を踏み越えていく」


『さぁ、盛り上がったところで行くぞ!』


「改めて名乗ろう。我が名は魔王シルヴ・D・テンペスト。すべては我が祖国と民のために貴様を――」

「勇者、真人。愛する人の隣にいるためにお前を――」



「「ぶっ殺す!!」」


『はじめぃいい!!』


 銅鑼が鳴り響いた瞬間、互いのいた地面が爆ぜる。剣線が幾重にも煌き、瞬き、ちりぢりに火花が散る、散る、散る!ああ、速い速い!糞ったれな速さだよ!


「ふん、腕は中々だな!」

「お褒めの言葉どうも?でもまだまだだよ?」

「ぬ!?」


 足を払い、首筋を狩る。が、風が合間に入りこみ、その剣筋を逸らされた。ずるいな!


「これも実力のうちさ!」


 見えない風の刃が襲い掛かるが、それは俺には届かない。


「そんでこいつは俺の実力だよ?」


 水の玉が木札に巻き上げられるように浮かび上がり、魔王へと襲い掛かる。


「なるほど、先ほどの雨か!くく、このためにわざわざ下準備をしていたわけだ!」

「そういうわけだよ?こちとら手札が少ない中で戦うしかないんだからねっ!」


 音速を超えた水圧で網のように放つ。うんウォーターカッターって奴だよ?


「だが、効かぬ!」


 その一喝でその刃は霧散していく。ああ、糞ったれい!わかっちゃいたけど相性がめちゃんこ悪いんだよ!五行で風は木だしね!水とか相性わるいんだよ!でも俺ってば水の相性がいいせいか火に嫌われてるの!


 だからね?人の身で至れる技を降りぬくんだよ?


 ――無限流/刃/御雷(みかづち)


 うねりを上げる剣線は一振り。練り上げられた気を、霊力(魔力)を、ただの一へと纏め上げ、抜き放つ。


「――な、ぬ!?」


 まるで紙切れのようにオリハルコンの剣を両断し、魔王の胴を薙ぐ。



 が、その胴を寸断するには至る前に剣が砕け散る。荒れ狂う力の奔流に剣が耐えきれなかったんだよ!このために色々細工していたのにな!悲しいな!


「ぐ、が!ま、まさか、これほど、とは」


 だが、その一撃はシルヴに膝をつかせるには十分だった。うん、ついてもらわないと困るよ!というかそのまま倒れてくれたら嬉しいな?割とこの剣で倒しきりたかったんだよ?


「だが、まだだ……。まだ終わらぬ!!」


 メキメキと服を破り捨て、巨大な翼を広げ、その美しい流線形をした体をさらけ出す。


 ――銀翼の魔王龍。


 その翼は嵐を纏い、音を置き去りにし、オリハルコンと肩を並べるほどの鎧鱗(がいりん)はいかなる攻撃をも受け付けることは、無い。


『愚雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄雄ぉぉぉッッッッ!!!!』


 魔竜の叫びが異界を揺らす。

 うん、勝てるかなこれ!!


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