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勇者だけど大魔王城で執事やってます。え、チートってもらえるものなの?  作者: 黒丸オコジョ
第一章:大魔王の姫と勇者な執事?みたいな?
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33話:目の間に飛んできたモノって猫じゃなくても飛びつきたくなるよね?

「勝者!勇者真人!!!」


 ワァ!と会場が沸き立つ。誰も予想だにしなかった彼の大金星だったのですから。。


 私は胸に手を当てて彼の言葉を反芻する。私を妻にしにきた、そう、彼は言ってくれた。そして、その言葉を示すように、彼は不死のドラキュリア様に勝利して見せたのです。そう、普通に考えてあり得ないんです。ただの勇者が太陽を克服し、心臓を持たないドラキュリア様に勝利するなんて事は……。

 思わず頬が熱くなってくる。わ、私いま絶対お父様やお姉さまに見せられない顔になっています。うぅ、耳まで熱い……。


 ほぅ、と息を吐いて。空中に浮かび上がる彼の顔をじっと見る。何かやり遂げたようなすっきりとした表情で糸でぐるぐる巻きになったドラキュリア様に木のお札のようなものを差し込んでいる……?


「あーもしもしひねもす?えと、このおっちゃんそっちに送り返すけどどうすればいいのかなって?あれかな?クール便?でもクールだと冬眠しちゃわないかなって?お札取ったら出れるようにしてるから、奥さんによろしく伝えて欲しいんだよ!速達で?」


 ど、どうやらアフターケアまできちんとしているらしい。あんなにすごい戦いをしたというのに生き一つ切らさず、いつも通りどこか飄々とした雰囲気でつんつんしています。うん、そろそろ回収してあげて欲しいなー……。あ、回収された!よかったぁ……。


「くくく、勇者真人は次なる獲物がご所望のようだ!さぁ、かのロムネヤスカは破れたぞ!あ、奥さん?負けたけどもうちょっと優しく扱ってあげてね?蹴らないで上げて!コホン、それでは次にあのいきり立った勇者に挑む魔王は……でてこいやぁ!」


 お父様が椅子に片足を乗せてノリノリで叫ぶ。お父様、アリスお姉さまの目がそろそろ痛いですが大丈夫なんでしょうか……?


「では次は俺が行くとしよう我こそは荒野の魔王フェリオン・シュヌッフィ!誇り高き狼族の長なり!」


 席から立ちあがったのはフェリオン様。

 今は精悍な男性の姿をされていますが、本来の姿になると、5メートルを超す巨体で不死の人狼へと変貌し、圧倒的な力で魔剣を振るい、幾人もの勇者を屠ってきたつわものだそうです。ピーターさん……!


「よろしい!さぁ行くがよい魔王フェリオンよ!その力存分に勇者に見せつけるのだ!」


 光が溢れ、フェリオン様がコロッセオへと入り込む。休む間もなく、彼は第二戦いへと駒をすすめたのでした。





「お、来た来た。初めまして?勇者の真人です?うん、なんだか勇者って肩書なれないんだよねーあ、まっちゃんでもいいよ?」

「ふん、お前の名前などどうでもよいわ!あ奴は油断したからみじめにやられたのだ!行くぞ!ゆうしゃあああああああああああ!!」


 めきめきバキバキと目の前の魔王は形を変質していく。おー!おっきい狼だ!モフモフだよ!あ、下半身は人かな?人狼さんだよ!ちょっと騙されたんだよ!でもモフモフだ!!モフモフなんだよ!


 「それでは、死合い――開始!」


 大魔王の同時に再びドラが鳴り響いた。うん、鳴ったってことは攻撃していいんだよね?そういうわけでハァピバァスディ!!うん、スイッチ・オン?

 変身が終わった家ほどもある狼人のあんちゃんの目の前で小さいボールがパチンとはじけた。うん、ライガーで実験した匂い玉の改良版その一なんだよ!


「エンッッッッ!!!」


 ……あれ?泡吹いて後ろに倒れちゃった?……もふもふ。おーい、あ、名前知らないよ!狼のおっちゃーん……。もふもふ。し、死んでる……っ!いや、死んで無いけど泡吹いてビクビクしてるよ?もふもふ。やっぱり香水の原液をぶっかけたらダメだったかな?いい匂いと言うか強烈過ぎて眼が痛いしね!ライガーの時もびくびくしてたお酢と木柵酢と唐辛子ボールを改良した奴とかまだこんなにあるんだけど使い切れなかったんだよ!もふもふ。うーん、仕方ないし凍結?あ、凍っちゃった!終わっちゃった……?もふもふできなくなっちゃったんだよ……。うん!クール便で送り返します!現場の大魔王さーんおねがいします?よろ?




 会場は騒然としてた。あまりにもあっけない幕切れ。魔王クラスの。しかも上位の強さを持つ者が一撃で崩れ落ちたのだからそうなっても仕方ないのでしょう。ですがいったい何があったんでしょう?なんだか獣人族の方が震えてます。怒って……あれ?なんか顔色が悪いです?どうしたのでしょう……?


「あー、勝者は勇者真人!というか戦えよ!?うん、勝てれば何でもしていいんだけどさ!こう、もっとバトれよ!?」

『え?だって弱点が見えてるのにそこを突かないのって逆に馬鹿にしてると思わない?見え見えなのに何にも対策してない方が悪いんだよ?つまり俺は悪くない!だよ?』

「ぬぐぐぐ!うん、確かにそだな?で、仇をうちに行くか?獣人の魔王達よ?あ、いやか?匂いが数日取れそうにないから?あーここまで匂い来てるかー……」


 本当に何があったのでしょう?なんだかものすごくフローラル?な香りがしてくるのですが……。


「ならば鳥系の魔人はどうだ?え、まだ糸がありそう?トラウマになってるのか!?おぬしら魔王だぞ?魔王!もっとしっかりせんか!さぁ、出て来いやぁ!!」

「なら俺が行ってやるよ」


 むくりと立ち上がったのは巨漢の男。人への変化も適当で、肌には岩の面影がいくつもあり、その眼は戦う相手を求めているというよりも――


「そしてあいつを喰ってくる。ひひ、勇者はちゃんと喰えると美味いんだぁ」


 下品によだれを垂らし、その魔王はニヤリと笑う。アレは彼を食べる気でいた。ううん、きっと彼が勝ち残れば私すらも……。


「いいだろう。魔王タイタニス、くくく。あの勇者が喰えるものなら喰ってこい!」

「ああ、喰ってやる。あいつは俺の食事を邪魔しやがったからな。ああ、今度はつぶさずに喰ってやるよ」


 お父様それを知っていてなお、その魔王を送り込む。圧倒的な力を持つその魔王を。


 でも、それでも私はそれでもきっと彼を信じているんです。彼がきっと勝ち抜いて私を抱きしめてくれるその時が必ず来ることを……。

刺激臭のするものは直接匂いを嗅ぐのはやめよう!原液はヤバいからね!もふもふ。

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